原発通信363号 2012/12/25

安倍は再稼働への布石/橋下はスネ夫ぶり/「ムラ事故調」はNo problem/東電常務は、汚染水は海に「戻したい」

 正月は総理大臣として迎えると張り切っていた安倍晋三ですが、その望みは日本国民の支持のもと実現です。そして、原発も、なんだかんだと修飾していっていますが、再稼働ありきで動いているようです。予定されている内閣の布陣を見てもそれは感じられます。電力会社、原発関連のエージェント甘利を据え、公明党とは「適当に」言葉合わせをしてというところでしょうか。上関も動き出しそうです。

 一方、大阪の橋下は、思った通りに「第三極」づくりができず、脱原発では、大阪府市エネルギー戦略会議の委員らが反発。それに対して、脱原発など火星に行くようなものだといっていたはずが、「2030年代の原発ゼロに向けて具体案を考えてもらう方針は変わっていない」と釈明。とんだスネ夫君ぶりを発揮しています。(*1

 「原子力ムラ事故調」は、地震では壊れなかった、みんな津波が悪いのよと「調査報告」をまとめるとのこと(*2)。東電の小森常務は、事故は収束していないといい(*3)、原子炉建屋からは相変わらず最大毎時1000万ベクレルの放射性物質の放出が続いています。汚染水はたまる一方。小森常務、その汚染水、あろうことか、「海に戻したい」などと、とんでもないことを言いだす始末です。


▶新内閣:茂木氏は経産相に 石原伸氏は総務相が有力

毎日新聞 2012年12月24日 23時12分(最終更新 12月25日 01時35分

 経産大臣に目されているこの茂木敏充ですが、カネにまつわる話がいろいろある人です。経歴を見ても第1次小泉第2次改造内閣で内閣府特命担当大臣(個人情報保護担当)、内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)、国務大臣として情報通信技術も担当。第2次小泉内閣では、内閣府特命担当大臣(個人情報保護担当)、内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当)。2007年、日朝国交正常化を目指す議員連盟・自民党朝鮮半島問題小委員会の立ち上げに関わり、同議連の幹事長に就任。ホリエモンとの関係、年金問題で民主党の長妻昭の発言を勝手に議事録から削除するなど“怪しさ”ぷんぷんの男です(Wikipedia)。叩けばという感じがしますので、早晩「話題」を提供することになるでしょう。

▶原発:脱「脱原発」転換加速 自民、新増設にも含み

毎日新聞 2012年12月25日 東京朝刊

【26日に新政権を発足させる自民党の安倍晋三総裁は、安全な原発の再稼働を明言。原発新増設を認める可能性も示唆】

【当面は規制委が来年7月に策定する原発の新安全基準が焦点となる。安倍新政権は新安全基準で「使える原発と使えない原発を仕分け」(政調幹部)し、再稼働を進めたい考え】

【安倍総裁は22日、上関原発建設計画を抱える地元の山口県で「(原発の)新設についてどう考えるかは、新しい政府、与党で決めたい」と発言。民主党政権が「原発の新増設は認めない」とした方針を転換する可能性を示唆】

【電事連などは安倍新政権が業界に精通した甘利明氏らを要職に起用することを歓迎】

▶安倍・自民総裁:原発見直し発言 上関推進派「当然だ」 反対派「到底許せぬ」

毎日新聞 2012年12月22日 西部朝刊

【推進派で原電推進議員会長の右田勝・上関町議(71)は「日本のエネルギー事情を考えた場合、民主党のやり方では経済に混乱を招くのは必至。見直しは当然で、30年間、国策に協力してきた立場としては歓迎だ」と評価】

 と、言っているそうです。「日本のエネルギー事情を考えた場合」だそうです。失礼ながら、そんなに国のこと思っている…。長州ですから…、当然…。

【反対派で「上関原発を建てさせない祝島島民の会」代表の清水敏保町議(57)は「福島の事故が収束せず、原因究明もできていない。安心安全な生活環境が再生できていないのに、原発建設の余地を残す発言は到底許せない」と】

▶【原発再稼働】 自民党本部前での抗議行動 警察指導で離れた場所に移動

田中龍作ジャーナル2012年12月21日 21:01

【自民党の政権復帰を早々と見せつけられた。毎週金曜夜、自民党本部正面で行われていた抗議集会が、警察の指導により南へ50mほど移動させられた。21日午後8時前。自民党本部正面のバス停でいつものように抗議の声をあげる準備をしていたメンバーは制服・私服の警察官10数人に取り囲まれた。「あちらに準備しています」からと促され、参院会館の横まで連れて行かれたのである】

 安倍晋三内閣の誕生です。

▶福島第1原発:地震による破損を否定…原子力学会事故調

毎日新聞 2012年12月22日 02時30分(最終更新 12月22日 02時36分)

【日本原子力学会の事故調査委員会が、地震による1号機への影響について、「安全上重要な機器の破損はなかった」とする方向で、来年3月に中間報告をまとめることが分かった。21日にあった学会事故調の会合後、委員長の田中知・東京大教授らが取材に明らかにした】

【事故調幹事の関村直人・東京大教授は「地震の後、津波が到来する前のデータからプラントの状況を判断した結果、放射性物質の放出につながるような配管の破断などは考えにくい」と話した。事故調の議論でも異論はなかったという】

 ああ、そうですかというくらいで、別に驚くに値するものではありません。あの原発だんじり東大教授と、ウソばっかの東大教授という、札付きの原子力マフィアの一員です。

 そう簡単に間違っていましたなどと言うわけがありません。この原子力学会ですが、ホームページに議事録というものが掲載されているが、なんとその内容たるや、出席者名と、議題などA4で2ページしかないという代物です。こんなものHPで公開したところで意味ないものです。

*日本原子力学会東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会



今も原子炉建屋から最大毎時1000万ベクレルの放射性物質の放出が続いている

▶福島第1原発事故 冷温停止状態宣言から1年 廃炉の道のり遠く

毎日新聞 2012年12月24日 東京朝刊

 記事そのものは、別に目新しいものはありません。ただ、以前と変わらず、放射性物質の放出と、水の「かけ流し」状態は続いており、汚染水はたまり続けているということです。そしてそれに手を焼いている東電、その汚染水を「海に戻したい」(小森東電常務)などととんでもないことを言っているのです。

【炉心溶融した1~3号機では溶けた燃料は今なお熱を出していて、冷却水を流し続ける必要がある。現在の冷却水は3基で毎時約17立方メートル】

【汚染水を浄化して冷却水に再利用する「循環注水冷却システム」を稼働させ、「かけ流し」の状態にピリオドを打とうとした。しかし、雨水や地下水は1日平均380立方メートル流入しており、汚染水は増加の一途】

【東電によると、敷地内の放射性汚染水の総量はタンク貯蔵分も含め、今月17日現在で少なくとも33万1409立方メートル(ドラム缶換算約165万本)。昨年12月時点では約19万2481立方メートル(同96万本)で、「事故収束」したにもかかわらず、汚染水は1年間で2倍弱に膨れあがったことになる】

【「汚染水処理が私にとって一番重要な課題だ」。東電が先月公開した社内テレビ会議で、吉田昌郎(まさお)所長(当時)が昨年4月4日、本店にこう訴えていたが、「汚染水との闘い」は今も決着がついていない】

【3年以内にはタンクを増設して貯蔵容量を70万立方メートルまで拡大する対策を進めるが、「汚染源」の溶融燃料を取り出さない限り、当面はこうした「自転車操業」を続けざるを得ない】

【一方、東電は原子炉建屋からの放射性物質の放出量は最大毎時1000万ベクレルと推定。これによる被ばく線量は年0・03ミリシーベルトで、政府と東電は冷温停止状態の基準(年1ミリシーベルト未満)を満たしているとしている。事故当時に比べ、8000万分の1に低減したことになる】

【原子炉建屋内は依然として線量が高く、立ち入りは困難。圧力容器内部を観察することはできず、燃料の状況は不明だ。しかも、「冷温停止状態」の条件には、放射性物質の流出による海洋汚染は加味されず、実態とはかけ離れている】

【「事故は収束したのか」。福島県双葉町の井戸川克隆町長は今年3月、福島第1原発を視察した際、東電の小森明生常務と高橋毅所長に問いかけた。答えは「収束していない」だったという】


汚染水を海に「戻す」などと言っています

▶福島第1原発事故 冷温停止状態宣言から1年 廃炉の道のり遠く 東京電力・小森明生常務に聞く

毎日新聞 2012年12月24日 東京朝刊

 いや~廃炉って言ったって、どうしていいかわからないし、人材だってどうなるかわかりません。まあ、はっきりしていることは、私らの代では済まないということだけです。ということを言っているだけです。東京電力経営陣の愚痴というところでしょう。

 と、そんなことを言うことぐらいは想定範囲。この記事で見逃せないのは、汚染水のことです。溶けた核燃料の冷却に加え、地下水の流入、雨水と大量の汚染水が毎日出ており、それを溜めておくタンクもいっぱいになりつつあるということが上の記事にあります。

 そんな状況であり、もう手いっぱいというところからか、小森常務、「処理水を海に戻すことも選択肢」などといっているのです。

 「海に戻す」!! なんという発想なのでしょう。借りていたものを戻すかのような言い分。冗談ではありません。普通の神経なら、「申し訳ないが、海に放出させてもらえないだろうか」というところだと思うのです。海に放流すること自体問題ですが、「戻す」といえる神経、どうかしています。

 作業員の確保に関しても、「聞いているから問題ない」などと思えることも信じがたいです。自分たちでやるという作風がまったくもって欠如している集団です。

【処理水をためるタンクがあふれない手立てをしているが、限界もある。アルプスは放射性物質濃度を、海洋への放出限度以下に減らせる能力がある。処理実績を積み重ね、社会的な合意が得られれば、処理水を海に戻すことも選択肢として考えないといけない】

【毎月、元請け企業に仕事量と確保できる作業員の人数を聞いていて、あと1年で作業員がいなくなることはない】



▶安倍・自民総裁:規制委人事は現体制を維持

毎日新聞 2012年12月24日 東京朝刊

【安倍晋三総裁は23日のフジテレビの番組で、野田内閣が決めた原子力規制委員会の田中俊一委員長と委員4人について「基本的には今の人事でいくことになる」と】

▶斉藤・公明党幹事長代行:原発の新増設「できない状況」

毎日新聞 2012年12月23日 大阪朝刊

【公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は22日、読売テレビの番組で「現実に今、新設できる状況ではない」との認識】

 「現実に今」と言っているだけで、「今はできない」と言っていることと同じです。



▶浪江町、染色体検査へ 18歳以下、福島の自治体で初

毎日新聞 2012年12月23日

【福島県浪江町は来月から、震災時18歳以下の希望者を対象に血液中の染色体検査を行うことを決めた】

【放射線による染色体損傷の有無を確認すれば医療に活用できるため、86年のチェルノブイリ原発事故時の作業員や周辺住民、99年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故時の作業員らに用いられてきた。福島県内の自治体で行うのは初めてという】

【対象は約3700人で保護者の同意が条件。ホールボディーカウンター(WBC)による内部被ばく検査では、ほとんどの人が健康に影響がない水準だった。ただしWBCによる検査が始まったのは昨年6月と遅く、初期被ばくの影響調査も兼ねる】

▶浪江町、染色体検査へ 前川和彦・東大名誉教授(緊急被ばく医療)の話

毎日新聞 2012年12月23日 東京朝刊

【外部被ばくが最高でも約25ミリシーベルト程度で染色体に異常を与え健康被害をもたらすレベルではない】



▶原発事故21カ月 脱原発、訴え続ける 元作業員の母、避難先のふすまに「決意」

毎日新聞 2012年12月23日 東京朝刊

【避難生活を送る水戸市の団地のふすまには、勝俣恒久、清水正孝、班目春樹……と、東電や原子力安全委員会幹部の名前が並ぶ。その最後に「過失責任を負うべき人たち」の文字】

【抗議する母の姿をネットで見た長男から「これ以上東電の悪口言ったら俺にも考えがある」と】

【10月16日、一通のメールが長男から届いた。「カエルの子はカエル? あなたの息子でした」。内容は東電批判。長男は福島県民をないがしろにするような発言をする東電社員に我慢できなくなったのだ。現在は除染作業からも離れ、原発関係の仕事はしていない】

【長男は取り戻せた。だが、だまるつもりはないという。「長男の友達、長女の友達や夫が今も働く。この人たちの親が声を上げないのなら、私が声を上げないといけない」】

 と、脱原発を訴え続けている木田節子さん(58)。

 そんな彼女も、3.11で原発事故が起きるまでは、【1992年に富岡町の友人宅の隣に約2300万円で家を新築した。「北に第1原発、南に第2原発。よく家なんて建てる気になったよね」。新築中の我が家に向かうタクシーの中で、運転手に言われた。「ひがんでいるのかな」。当時は原発が危険なものだとは思ってもいなかった】と言います。

▶大阪府市エネルギー戦略会議:30年代原発ゼロ、橋下・大阪市長「不変」

毎日新聞 2012年12月22日 大阪朝刊

【大阪府市エネルギー戦略会議の委員らが、橋下徹市長の原発政策を巡る発言に反発していた問題で、橋下市長は21日、同会議で「2030年代の原発ゼロに向けて具体案を考えてもらう方針は変わっていない」と釈明】

 口から出まかせ、お調子もんとみるか、君子豹変すると見るか。いずれにしてもいい加減なやつです。火星よりは近くなったのでしょうかね。

▶卒原発は火星旅行と同じ 橋下氏、公示後ツイッター

【衆院選が公示された4日昼、日本未来の党が公約した「卒原発」を念頭に「『10年後に原発ゼロ!』と叫ぶのは、『10年後に火星に行くぞ!』と叫ぶのと同じレベル」とツイッターで批判】

 と言っていたのは、今月12月4日のことです。もうそんなこと言ったなどとは知らん顔です。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201212040187.html

▶Dr.中川のがんの時代を暮らす:/61 メンテナンスの重要性

毎日新聞 2012年12月24日 東京朝刊

 あの中川センセイが、信じられないことを書いています。中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故の件です。

【信じられないことに天井にも上がらず、道路から天井を見上げる「目視」だけで済ませたと報じられています。今回の事故は、インフラを維持し、事故を未然に防ぐには、メンテナンスが重要だという当たり前のことを教えてくれます】

 えっ? 放射線被曝問題については、ダイジョウブ、ダイジョウブ、シンパイないといい、人の事故についてはエラそうに自分のキョウヨーも開陳して説教です。またまた東大話法の典型というより全面展開です。

【道路だけでなく、自動車にも「車検」という形で、定期的なメンテナンスが義務付けられています。しかし、日本人の2人に1人が、がんになるにもかかわらず、「がん検診」の受診率】と、自分の領域にすとんと落とすとこともさすがです。