原発通信496号                                  2013/07/19

脱原発社会へ一歩を踏み出す人に「有効に」1票を!

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*上記ポスターは「天野祐吉のあんころじい」より引用

◆親ゆづり 祖父(おほぢ)ゆづりの 政治家(まつりごとびと) 世に傲(おご)り 国をほろぼす 民を亡(ほろ)ぼす

  昨日の毎日新聞(2013年07月18日東京夕刊)特集ワイド<この国はどこへ行こうとしているのか>に歌人・岡野弘彦さん(89)が取り上げられていました。この歌は、岡野さんが3.11東日本大震災後に、世襲政治家たちを詠んだものです。
 「改憲とも、護憲とも口にしない。『憲法は不得手で』と困った顔をする。だが、『国防軍』を明記する憲法改正の動きには『乱暴ですね』と鋭く言い放った。『単純に戦前に逆戻りしている感じがします。戦後のこの苦しみは何だったのだろう。戦死者たちの安らぎはどこにあるのでしょう。戦後、日本人は戦死者たちの鎮魂を真剣に考えてこなかったのではないでしょうか』」と岡野さん。
「今の政治家は戦争を知らないから危ないと思う。弾が飛んでいる戦場に体をさらした体験がないでしょう。戦争で一番犠牲になるのは若者です。何よりも国民の犠牲を考える政治であってほしい。そのために隣国、相手の心を敏感に察知して、先に先に手を打っていく外交と政治が大切なのです」。 

◆宮崎駿さん、「改憲なんてもってのほか」

 スタジオジブリが出している冊子「熱風」の最新号が「憲法改正」を特集し、話題になっているとのことです。宮崎さんは言います。(下記)

「考えの足りない人間が憲法なんかいじらないほうがいい。本当に勉強しないで、ちょこちょこっと考えて思いついたことや、耳に心地よいことしか言わない奴の話だけを聞いて方針を決めているんですから。それで国際的な舞台に出してみたら、総スカンを食って慌てて「村山談話を基本的には尊重する」みたいなことを言う、まったく。「基本的に」って何でしょうか。「おまえはそれを全否定してたんじゃないのか?」と思います。きっとアベノミクスも早晩ダメになりますから」

「『戦前の日本は悪くなかった』と言いたいのかもしれないけれど、悪かったんですよ。それは認めなきゃダメです。慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです。領土問題は、半分に分けるか、あるいは「両方で管理しましょう」という提案をする。この問題はどんなに揉めても、国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがありません」

 そして、「憲法は目標であって、条文をよくしたら貧乏人がいなくなるとか、そんなことあり得ない」とも。
 宮崎さんのこの一文のなかで、ジブリの隣に「保育園」をつくった話が出てきます。
「チビたちがぞろぞろ歩いてるのを見ると、正気に戻らざるを得ないんです。この子たちがどうやって生きていくのか」と。
 宮崎さんに倣い、ぜひ国会の隣に保育園をつくってほしいと思いました。今、少子化だということで、保育園を併設する企業もあると言います。そこで、国会です。男女共同参画の時代。子どもを産んで国会議員をという人もいます。
 就学前の子がいる議員は、ここに預けてみるというのも手かと思います。そうした風景を毎日見ていれば、「正気に戻れる」のではないかと想像するのですが、問題もあります。
 あんなところに、どういうところの子が行くのだと。議員の子、官僚の子……、う~ん、それはそれで問題だ。かれらが「正気に戻れる」いい案、ありませんかね。今とりあえず、見当たりません。今日は金曜日、首相官邸前・国会前・経産省前で抗議行動が行われています。私ひとりの力なんて大した力にはならないかもしれませんが、今日も抗議の声を挙げに、これから行ってきます。

(写真はスタジオジブリの小冊子『熱風』2011年8月号表紙。宮崎さんは福島原発事故後、脱原発のプラカードを持って自宅周辺を「一人デモ」行なっていました)

◆斉藤環さん、「私は2013年夏の参院選を“震災忘却選挙”と呼ぶ」

 「東北の復興」などと叫んではいるが、今も続く福島原発からの汚染地下水流出などの報道が原発推進の歯止めにならないとしたら、「私は2013年夏の参院選を“震災忘却選挙”と呼ぶことにもう決めている」(下記)

◆他人をさげすむお手軽なナショナリズムが幅を利かしている──一水会・木村三浩さん

 自民党は「日本を取り戻す」というが、どこから、何を取り戻すのか。お手軽に生きているツケは、いつかきっと払わなければならない、と。
左翼の、自己が正しいと思う、あまりの確信の強さゆえのダメさ。でも新たな希望もと、社会運動家の太田昌国さん。
 グローバル化し、むき出しの市場経済のなかに叩き込まれている多くの人々。ますます非人間的になっていく状況を人間の理性がいつまでも放っておくとは思わない、と。

 ともに、朝日新聞2013.7.17朝刊オピニオンに掲載されていました。(下記)


雨水ですか…。じゃあ、なぜ今まではなかったの?
▶<福島第1原発>3号機の湯気 雨水によるものと説明 東電

毎日新聞 7月18日(木)20時2分配信

【東京電力は18日、福島第1原発3号機で湯気のようなものが出ていることが確認された問題で、原子炉圧力容器の温度が約36~43度ある一方、気温は雨で21度と低かったことなどを理由に、「建屋のすき間から入った雨水が、原子炉外側上部で温められて出た湯気ではないか」と説明した。原子炉内で、連鎖的に核分裂反応が起こる臨界は確認されておらず、湯気に含まれる放射性物質も周辺データとほぼ変わらないという】

 とのことですが、腑に落ちないことがあります。圧力容器の方が温度が高く、外気が低く、雨水が蒸発したと。ならば、冬場の方がもっと温度差があるわけで、3.11後、二度の冬に、福島第一原発周辺には雨、雪が降らなかったとは聞いていません。すると、冬場にもっと「湯気のようなもの」が見えていてもおかしくはないのかという、素朴な疑問です。

▶福島第一原発3号機の「湯気」映像公開、雨水が原因か

TBS系(JNN) 7月18日(木)21時14分配信

▶クローズアップ2013:もんじゅ現地調査終了 核燃サイクル瀬戸際 「活断層」判断は長期化

毎日新聞 2013年07月19日 東京朝刊

【5人の専門家でつくる調査団は、今回参加できなかった宮内崇裕・千葉大教授が現地視察を終えるのを待ち、8月下旬にも評価会合を開き議論する。島崎委員長代理は「すぐに結論が出る状況ではない」と】

【もんじゅの西側約500メートルを南北に走る活断層「白木(しらき)-丹生(にゅう)断層」も観察した。この活断層は、敷地内の破砕帯と連動して動く可能性が指摘されている。地中で傾いているため、もんじゅの地下約850メートルを通っている。島崎委員長代理は「(この活断層が原因となる)地震の揺れに、施設が耐えられるかどうかの評価も課題だ」と】

【規制委が活断層と認定しても、原子力機構は同様に徹底抗戦するとみられ、出口が見えない状態が続く】

▶原子力規制委:もんじゅ「十分議論」…18日も現地視察

毎日新聞 2013年07月17日 23時55分(最終更新 07月18日 01時12分)

【調査団長を務める島崎邦彦・規制委員長代理は、破砕帯を視察後の17日夕「十分な議論が必要だ」と話し、活断層なのかの明言を避けた。調査団は18日も周辺の地形などを視察する】

▶佐賀・玄海原発:再稼働申請 知事が見解「事前了解なじまない」

毎日新聞 2013年07月18日 西部朝刊

【九州電力が国に玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の安全審査を申請した際、佐賀県や九電が安全協定に規定する立地自治体の「事前了解」を不要としたことについて、古川康知事は17日の定例記者会見で「九電から頼まれて『事前了解をやめてくれ』というようなことはない。密室協議には当たらない」と】

【不要とした理由について、国に申請された玄海原発の安全対策が「実施済みや着手済みのことばかりで事前了解になじまない」と説明】

【この問題を巡っては、佐賀県の市民団体が「九電や県のもたれ合いで再稼働のハードルを下げようとしている」と批判】

▶伊方原発:1号機の原子炉圧力容器「経年異常なし」──四電/愛媛

毎日新聞 2013年07月17日 地方版

【四国電力は16日、伊方原発1号機(伊方町)について原子炉圧力容器の経年劣化の指標となる「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」の測定結果に異常はなかったと発表】

【四電によると、圧力容器の鋼材と同じ材質の試験片を容器内から取り出して調べた結果、同温度は予測値の範囲内だった】


本当に卑しいダボハゼ男たち
▶愛媛・伊方原発:専門部会2委員に寄付 関連企業など280万円

毎日新聞 2013年07月18日 東京朝刊

【四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の安全性を検証する同県の専門部会の委員2人が2009~12年度、原子力関連の3企業・団体から計280万円の寄付を受けていたことが17日、分かった。専門部会は伊方原発環境安全管理委員会原子力安全専門部会(部会長=浜本研・愛媛大名誉教授)で、寄付を受けていたのは奈良林直・北海道大教授と宇根崎博信・京都大教授】

【関連企業や所属大学によると、奈良林教授は四電が出資する日本原子力発電(東京都)から150万円、四電に燃料を納入する原子燃料工業(同)から50万円を受け取った。宇根崎教授には原子力・放射線の知識普及啓発にあたる関西原子力懇談会(大阪府)から80万円の寄付があった】

【宇根崎教授は取材に対し「言うべきことは当然言う」と】

 奈良林という男は、ダボハゼみたいな男です。くれるものはみんな戴く。この世の中、なんて言われようがカネだよカネ。お前らもらえないからひがんでいるんだろうという感じなのでしょう。
 宇根崎教授の「言うべきことは当然言う」のがその通りだとしたら、餌をあげたほうから見たら、恩知らずということになります。金品の授受というものは元来そういうもの。企業は自分の益にならないような人に「お恵み」をするでしょうか。ありえません。


▶原発安全確保へ新機関検討=事業者の取り組み促進―経産省WG

時事通信 7月17日(水)21時21分配信

【原発事業者が自主的に安全性向上に取り組む仕組みづくりを目指す経済産業省総合資源エネルギー調査会のワーキンググループ(WG)が17日、初会合を開いた。電力会社や原子炉メーカーなどで組織する新機関設置を視野に、具体策を検討。今年度末をめどに提言】

▶柏崎刈羽の新安全策、東電が地元村議会で説明

読売新聞 7月17日(水)14時49分配信

【広瀬社長は冒頭、「(福島第一原発事故の)経験や反省、教訓を踏まえ、できる限り安全な原発にする方策を柏崎刈羽原発に織り込んだ」と】

 新たな安全神話の始まりです(再稼働を言いだした時からですが)。もう後戻りはできません。

 「(福島第一原発事故の)経験や反省、教訓を踏まえ」と言ってしまったのです。この先は、経験・教訓を踏まえてすべてのことが進行しているとしなければならなくなったのです。

▶社説:視点・2013参院選 エネルギー 原発淘汰社会を描け=論説委員・青野由利

毎日新聞 2013年07月18日 東京朝刊

【最近、米国では寿命を残して廃炉を決定する原発が相次いでいる。三十数年ぶりの新設計画の中にも、頓挫する例が出てきた。シェールガス革命に加え、福島の原発事故を受けた安全対策強化などの影響で、原発が割高となったためだ】

【日本でこうした当たり前の市場原理が働いていれば、今ごろ廃炉決定が進んでいるに違いない。地震国日本のリスクを考え合わせれば、原発が淘汰(とうた)されていく社会の将来像こそ、参院選のテーマだったはずだ】

【現実には、自民党の「再稼働推進」と、野党の「原発ゼロ」の賛否に矮小(わいしょう)化され、議論が深まらない。責任の一端は、エネルギー政策の全体像をあいまいにしたまま、目先のことしか語らない政権与党にあるのではないか】

▶発信箱:ジジイの決死隊=青野由利

毎日新聞 2013年07月19日 東京朝刊

【いったん過酷事故が起きれば、多くの人の命と引き換えに、誰かが死を賭す覚悟がいる。それは、「東電撤退問題」や、菅直人元首相の「60歳以上が現地に行けばいい」発言にも表れていた。実際、チェルノブイリ原発事故では事故収拾にあたった作業員や消防士が多数死亡している】

【」それは献身的な自己犠牲ではすまない。「原発は、最悪の場合には誰かに死んでもらう命令を出さなければならないもの」。社会学者の小熊英二さんが「現代思想」3月号で語っている。原発を維持するなら、死ぬ可能性のある技術者集団を作る必要がある。誰がどの法律に基づいて責任をとるのか。小熊さんの問いかけは、過酷事故を経験した日本人にとって、思考実験でなく、現実だ】

【原発を成長戦略に掲げ、再稼働を推進したあげくに、再び事故が起きるかもしれない。その時、国の最高責任者の命令を、誰がどう聞いてくれるのだろう】

▶2013参院選の現場:除染しても帰れぬ 若い世代、長期避難を覚悟 生活再建策、議論を──福島・飯舘

毎日新聞 2013年07月19日 東京朝刊

【飯舘村から福島市に避難中の佐藤健太さん(31)も不安を隠さない。「山林に残る放射性物質が風などに乗って再浮遊するかもしれない。線量が十分下がらないのに『帰れ』と言われても……」】

 という現実があるにもかかわらず、政府自民党は、「除染したのに帰還しないのはけしからん。援助も打ち切りだ」と、東電の賠償を減らすために暗躍し始めています。

▶希望新聞:東日本大震災 記者通信 東電現場社員の苦悩──福島

毎日新聞 2013年07月19日 東京朝刊

【ただ、第1原発で働く社員の話を聞くたび、彼らの苦悩にも同情を禁じ得ない。特に大卒社員と異なり、地元の高校を卒業して第1原発に配属された社員は、原則的に第1原発が一生の職場になるという。高卒社員は「私は定年まで収束と廃炉作業に当たるでしょう」と言った。

 国のエネルギー政策を背負う自負は砕かれた。それでもこの社員は「辞めません」と言う。「社員がいなくなったら、廃炉も進まなくなるじゃないですか」】


▶再生可能エネルギー:発電量が16年に原発の倍に──IEA見通し

毎日新聞 2013年07月19日 東京朝刊

【2016年の世界の再生可能エネルギーによる発電量が天然ガス火力発電を抜き、石炭火力に次ぐ第2の電源になるとの見通しを、国際エネルギー機関(IEA)が公表した。原発の2倍にもなるという】

【再生エネの対象として分析した電源は水力、バイオマス、風力、太陽光・熱、地熱、海洋。16年の発電量は6兆1040億キロワット時で、12年の4兆8620億キロワット時に比べて26%増加すると予測。18年には6兆8510億キロワット時に拡大し、全発電量に占める割合も11年の20%から25%まで上昇するとしている】

 IAEAではありません。IEAの発表です。

▶台湾:内務相が来日へ 原発建設狙い防災調査

毎日新聞 2013年07月19日 02時35分(最終更新 07月19日 02時42分)

【李鴻源・内政部長(内務相)が今月22~26日、馬英九総統の指示を受け、原子力災害など都市防災機能強化のため訪日することが分かった】


▶特集ワイド:憲法よ 歌人・岡野弘彦さん

毎日新聞 2013年07月18日 東京夕刊

 <この国はどこへ行こうとしているのか>

 ◇力の限り鎮魂を詠む──歌人・岡野弘彦さん(89)
 ◇国防軍、天皇の元首化…慰霊を忘れ戦前に逆戻りしているよう
<親ゆづり 祖父(おほぢ)ゆづりの 政治家(まつりごとびと) 世に傲(おご)り 国をほろぼす 民を亡(ほろ)ぼす>

【冒頭に紹介した歌は、東日本大震災の後、世襲政治家たちを詠んだものという。戦前、戦中も世襲政治家は多かった。ここでも時代は逆戻りしているようにみえるのだ】

【「今の政治家は戦争を知らないから危ないと思う。弾が飛んでいる戦場に体をさらした体験がないでしょう。戦争で一番犠牲になるのは若者です。何よりも国民の犠牲を考える政治であってほしい。そのために隣国、相手の心を敏感に察知して、先に先に手を打っていく外交と政治が大切なのです」】

【憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴」と規定する。昭和天皇、今の天皇陛下は憲法に基づき、戦没者慰霊や外国訪問など具体的な役割を模索してきた。天皇を「日本国の元首」とする改憲案は、天皇の役割を一変させる可能性をはらむ。「乱暴」という歌人の言葉が、胸を締め付けた】

▶「改憲 もってのほか」 宮崎駿監督 いま声を大に

東京新聞2013年7月19日 07時03分

【「憲法を変えるなどもってのほか」。スタジオジブリ(東京都小金井市)が、毎月発行している無料の小冊子「熱風」の最新号で「憲法改正」を特集し、宮崎駿監督(72)が寄せた記事が話題を呼んでいる】

 その冊子の目次と、PDF版が掲載されているサイトを貼っておきます。

「熱風」の最新号 特集憲法改正
・憲法を変えるなどもってのほか   宮崎 駿
・9条 世界に伝えよう      鈴木敏夫
・戦争は怖い          中川李枝子
・60年の平和の大きさ      高畑 勲

*先日のNHKニュース9で、宮崎駿さんに大越キャスターがインタビューを“試みて”いました。
 大越キャスターは宮崎さんの言っていることの半分も理解していないようでした。しかも、ノー天気に「ファンタジーはつくらないのですか」ときたもんだ。宮崎さん曰く「自分は時代に寄り添って作品を出してきた。しかし、3.11後、時代のほうが私を追い抜いて行ってしまった」と。大越はどれだけ理解できただろうか。

▶斉藤環氏の決意。「今回の参院選は『震災忘却選挙』だ」

毎日新聞2013.7.18夕刊「文化」面

 斉藤環さんは、地下水からこれまでの100倍近い過去最悪のベータ線が検出されていることに関して憤りを露わにしています。

 そして、原発事故直後の東電の対応ぶりを忘れられないと言います。

 漏出経路を探るためにトレーサーとして乳白色の色素を用いたこと。トレーサーといえば専門的に響くが、要はバスクリンだろうと。そして、放射性物質飛散防止に使ったのは紙おむつに使う高分子ポリマーのシート(これを爆発で吹っ飛んだプラントのまわりに投げ込んである写真を当時見たことを覚えています)。他にも古新聞、おがくずを投入していると聞いた時の絶望感とともに忘れることはできないと言います。

 その危機管理能力の「欠落」は何事だろうかと問い、斉藤さんは「(彼らは)本気で『原発事故はあり得ない』と信じていたとしか思えない」と断じます。

 私は「安全神話にとらわれた連中」と言いつつも、どこかで「採算とかあるから、危ないと思っていても口には出せないのでは……」と思うことがありました。ただ、どうしても合点がいかない時が多々あります。やはり、斉藤さんが言うように東電の連中は「本気で『原発事故はあり得ない』と信じていた」のかもしれません。そうとでも理解しないと、こちらの頭がおかしくなってしまいます。

 斉藤さんは、現在起きている高濃度の汚染地下水の追跡方法について、自分は門外であるがと断りつつ、提言します。

 テクネチウム99mやインジウム111(これらは福島原発事故で放出されている核種に含まれていないため)など医療現場で検査に使われる半減期の非常に短い放射性同位元素(アイソトープ)を使うのはどうだろうかと。もちろん、この手法は環境に配慮して禁止されていると聞くが、そんなこと言っていられるときか、人体投与が可能で、半減期の短い核種を使うことに何のためらいがあるのかと。

 各党とも公約で「東北の復興」などと叫んではいる。しかし原発の現状についての報道が原発推進の歯止めにならないとしたら、2013年夏の参院選は、「震災忘却選挙」だったということになる、と言います。

▶他人をさげすんで自らを慰撫する、夜郎自大なお手軽なナショナリズム 一水会 木村三浩さん

朝日新聞2013.7.17朝刊オピニオン

 冷戦終結後、左翼も右翼も「理想」を語らなくなってきた。自民党ははじめとする政治家や官僚の「アメリカと仲良くすることが日本の国益につながる」という言説がまかり通っている。大国の陰に隠れてモノ言う国が他国から尊敬されるはずがない。アメリカの下請けとして引きずられていくことになる。

 安倍首相は先日の都議選のとき、TPP反対派の人たち、そのなかには日の丸を掲げている人もいたのに、「左翼の人たち。恥ずかしい人たち」と批判。自分に反対する人は皆「左翼」とレッテル貼り。お手軽な政治手法。

 自民党は「日本を取り戻す」というが、どこから、何を取り戻すのか。お手軽に生きているツケは、いつかきっと払わなければならない、と。

▶自己が正しいと思うあまりの確信の強さゆえ、自己批判できない左翼 社会運動家 太田昌国さん

朝日新聞2013.7.17朝刊オピニオン

 新自由主義経済とグローバル化が生み出した世の中は、5世紀かけて形成された強靭なシステムの上に築かれたもの。熾烈な競争社会に放り込まれている若者たちをはじめ、多くの人たちが心も肉体的にも追い込まれている。本来なら公平さを求める左翼運動が巻き起こってもいいのだが、左翼は消滅したも同然。自分たちの若いころは社会主義が希望であり、世界が変わっていくということを体験してきた。しかし、ソ連邦の崩壊で見えた現実。そして日本の左翼運動は分裂、内ゲバと。踏みとどまろうとするならば、自己批判と新たな試行錯誤を必要としたが、自分は正しいという確信の、あまりの強さ──使命感の裏返しであるのだが──によって、自己批判できない。

 社会全体が抵抗力を失っている。メディアの批判的な言論もすっかり衰退。社会はここまで、むざむざと壊れるものなのかと、呆然とする。

 しかし、ますます非人間的になっていく状況を人間の理性がいつまでも放っておくとは思わない。こういう時代だからこそ左翼は再登場しなければならない。

 でもそんな芽はどこにも見えないじゃないかというが、どうすれば「権力を取らずに社会を変えられるか」という問題意識は生まれている。反権力ではなく、非権力・無権力の立場から新しい言葉、新しいスタイル、新しい社会運動の模索が始まっていると太田さんは言います。そう信じたいと思います。