原発通信391号                                  2013/02/07

またまた東電の嘘、発覚

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「朝日新聞のスクープ、『東電、国会事故調に虚偽、現地入り妨げる』の詳しい事実を当時国会事故調協力委員だった伊東良徳弁護士が当事者として怒りの報告をしています」とのメールが今朝入りました。早速見てみると、国会事故調の現地調査の責任者だった田中三彦さんや協力委員だった弁護士伊東良徳さんたちが、1号機に調査に入りたいというと、真っ暗だから危険だと言って入れさせなかった(正確には、断念した)という話なのです。

 そのとき一緒に調査に入っていた伊東さんがご自身のサイトに、その時の顛末を記しているということも教えていただきました()。東電、よっぽど、見られたくない状況だったようです。

 何かあったらとりあえず隠す、これ、原子力村、マフィアの習い性、本能です。彼らの言うこと一切は信用ならないということが、改めて暴露されたということです。 

犯罪阻止より「人命」を優先させたドイツ連銀

 本日付の毎日新聞に「ドイツ連邦銀:偽札見破り術、死刑国には教えず」との記事がありました。

 なんでも、中国やベトナムでは通貨偽造は死刑だそうです。そこで、ドイツ連銀には偽札を見破るノウハウがあるのだが、そのノウハウを提供することによって、偽札偽造犯が死刑になることを避けたいとのことで、教えない方針を決めたというのです()。


「ドイツは基本法(憲法)で死刑を禁じており、犯罪阻止より『人命』を優先させた格好」といい、ドイツ連銀の広報担当者は「私たちの偽札対策伝授で、死者が出ることは絶対に避けたい」と説明しているそうです。

 こういうことができるのも哲学があるからなのでしょう。そういう素地があるからこそ、メルケルは脱原発に踏み切れたのだと思います。それまで原発推進論者だったメルケルが“一夜にして”脱原発に舵を切ったことに対して、ドイツのシュピーゲル誌は「まるでローマ法王が突然、ピルを奨励するようなもの」と言ったそうです。


 ▶東電、国会事故調にウソ 「原発内真っ暗」→調査断念

朝日新聞デジタル 2月7日(木)2時31分配信

【東京電力が昨年2月、福島第一原発1号機の現地調査を決めた国会事故調査委員会に、原子炉が入る建物の内部は明かりが差し、照明も使えるのに、「真っ暗」と虚偽の説明をしていたことがわかった。国会事故調は重要機器の非常用復水器が、東電の主張と違って地震直後に壊れた可能性があるとして確かめるつもりだったが、この説明で調査を断念した

国会事故調は解散しているが、現地調査の責任者だった田中三彦元委員(元原子炉設計技術者)は東電の虚偽説明で調査を妨害されたとして7日にも、衆参両院議長に非常用復水器の調査実施を申し入れる方針】

▶東電、国会事故調に虚偽 福島第一、現地入り妨げる 明るい建屋、「真っ暗」と説明

朝日新聞デジタル版2013年2月7日

【非常用復水器のある4階も、天井が壊れているため、自然光で明るい。東電はこの映像はカバー設置前に撮影したと説明していたが、実はカバー設置4日後の撮影だった=東電撮影の映像から】

【国会事故調は、2011年3月11日の地震発生直後に1号機原子炉建屋の4階で「出水があった」との目撃証言を複数の下請け会社の労働者から得た】

【東電は、昨年2月28日午後7時ごろ、玉井俊光企画部部長(当時)らが衆議院第2別館を訪問。田中元委員らに、ところどころ明かりの差す4階の映像を見せながら、この映像の撮影時は、原子炉建屋に放射性物質の拡散を防ぐカバーをかける前だったので明るさがあると説明。そのうえで「今は真っ暗だ」「照明もついておりません」と話した】

【田中元委員は最終的にこの「今は真っ暗」を理由に調査を断念した】

【ところが、実際は、映像の撮影日はカバーをかけた4日後だった。カバーは太陽光を10~16%通すので、物を搬入する穴があり、天井が爆発で破損している4階に明かりが差していた。さらにカバー内側の天井には強力な水銀灯が取り付けられ、11年10月28日から使用可能になっており真っ暗になり得ないのに真っ暗と虚偽の説明をした】

【東電広報部は説明に誤りがあったと認めたうえで、「何らかの意図を持って虚偽の報告をしたわけではない」と】

▶東京電力はどこまで嘘つきなのか/国会事故調調査妨害事件

「庶民の弁護士 伊東良徳」2013.2.7

 国会事故調の一員として事故調査委に当たった伊東良徳弁護士が「東電はどこまで嘘つきなのか」、「人間として、組織として最低限の信義というものさえ、東京電力にはないのか」と怒りの一文をご自身のサイトに記しています。

 東電は、地震で壊れている箇所を発見されたくなくて、嘘をついていたようです。伊藤弁護士が被曝をも恐れず建屋に入るというと、

「玉井部長は、最初に、昨年10月に入ったときは、建屋のカバーがついていなかったので、4階まで行くと上から明かりが差しているが、今は、建屋カバーがかかっていて、照明がついていないので、建屋は真っ暗だということをご了解して欲しいということを言いました。私たちは、驚いて、建屋カバーは透明なのではないか、1階、2階、3階は光が届かないとしても4階は明るいのではないかということを繰り返し尋ねましたが、玉井部長はその都度、建屋カバーがついたので今は真っ暗だ、このビデオの時は明かりがあった、今は暗いと繰り返しました。」

「玉井部長からは、現場は至る所にがれきがあり、上からも落下物があるかもしれないこと、床面には開口部があり、大物搬入口の吹き抜け部分も鉄柵が吹き飛んでいるし、エレベーター部分も現在は縦穴になっており、それら以外にも開口部が生じているかもしれず、4階から転落すると21m落下すること、ビデオの時の作業員は現場に精通している者で初めて行く者が行くと自力で帰ってこれるかどうかさえわからないこと、精神的にもパニックに陥るかもしれないことなども含めとても危険であることが述べられ、他方、東京電力としては国会事故調がどうしても調査するというなら拒否することはできないが作業員の積算線量を無駄に増やしたくないので同行はしない、原子炉建屋入り口までは案内するがその後は行くなら自力で行って欲しいという趣旨の説明もなされました。」

「こういう東京電力からの説明を受け、国会事故調では、被曝線量の問題ならどうやっても行くつもりだったが、現場が真っ暗だということでは危険が大きいと判断し、1号機原子炉建屋4階の現地調査を断念しました。私は、暗くても行けばいいじゃないかという考えでしたが、田中三彦委員は国会事故調を背負う立場として何か事故があってはいけないという慎重判断に傾いたものと思います」

そして、最後に、

「東京電力がこのような虚偽説明をしてまで国会事故調の現地調査を阻止しようとした(ごく普通に法律家の評価としていえば、玉井部長の行為は、虚偽説明によって国会事故調関係者を騙し、国会事故調の重要な業務である現地調査を断念させたのですから、偽計業務妨害罪に当たると考えられます。もちろん、「そういう意図はなかった」と弁解するのでしょうけど)理由はどこにあるのか、1号機原子炉建屋4階には、当時、よほど東京電力が公表したくないものがあったのだと考えざるを得ません。」と結んでいます。

 ぜひ、一読を!


▶規制委:新安全基準案を了承 津波対策、法的義務付け

毎日新聞 2013年02月06日 11時23分(最終更新 02月06日 12時49分)

【新基準は既存施設にも適用される。規制委は7月以降、新基準に沿って再稼働の可否を判断するが、基準に適合するためには大幅な施設改修が求められ、再稼働時期が大幅に遅れる可能性がある。
 新基準は、東京電力福島第1原発事故を受け、津波や地震などの天災のほか、サイバー攻撃などを含むテロ行為や航空機落下など、外部からの脅威への備えを法的に義務付けるのが特徴だ。具体的には、原子炉格納容器の冷却作業を遠隔操作する「特定安全施設」(第2制御室など)の設置を事業者に義務づける。また、免震機能や放射線の遮蔽(しゃへい)能力の高い「緊急時対策所」などの建設なども求める】

【規制委は7日から今月末まで骨子案への意見を公募し、4月ごろに改正原子炉等規制法の細目(政省令)としてまとめる。そのうえで再度意見を公募、7月18日までに施行する予定】

【特定安全施設の設置など一部の対策については、「安全上余裕がある」として、3~5年程度の猶予期間を設ける方針。一方、原発の寿命を原則40年とする「40年運転制限制」についても、新基準に含める方向】

新安全基準の骨子案の主な項目

○過酷事故対策
・特定安全施設(第2制御室など)の設置
・作業の前線基地「緊急時対策所」の建設
・フィルター付きベント装置の設置
○既設設備の強化策
・可燃性ケーブル交換など火災対策強化
・冷却装置など重要設備の多様化、多重化
・防水扉などによる原子炉建屋の耐水性強化
○地震・津波対策
・各施設で最大津波の高さ「基準津波」を想定
・活断層の調査対象を「12万~13万年前以降」から「40万年前以降」にさかのぼって拡大
・活断層直上に重要施設を認めないと明記
・防潮堤などの浸水対策の義務化

▶新基準ほぼクリアで伊方原発が再稼働の1番手に
 規制委、骨子案了承

産経新聞 2月7日(木)7時55分配信

【新しい安全基準が施行される7月以降、最も早く再稼働の審査に入る可能性が高いのは四国電力の伊方(いかた)原発(愛媛県)であることが6日、電力各社への取材で分かった。活断層のリスクがないなど新安全基準をほぼ満たしているためで、立地自治体の理解も進んでいる。九州電力の玄海原発(佐賀県)と川内(せんだい)原発(鹿児島県)も次候補に挙がっており、早ければ今秋の再稼働を目指す】

【田中俊一委員長は6日午後の会見で「基準の運用をどうするかなどは早く検討し、だらだらと時間をかけない」と述べ、基準施行後は再稼働の審査を早急に実施する意向を示した】

【伊方原発など「加圧水型軽水炉(PWR)」は格納容器が大きく、ベント装置がなくても当面の安全性が保たれるため、再稼働後に設置を認める猶予期間を設ける見込み。伊方は免震重要棟も完成済みで、敷地が高く津波対策の必要性もない。玄海、川内も同様で敷地内に活断層はなく、地元自治体が再稼働におおむね前向きな姿勢を示している】

【稼働から30年以上経過した原発は福島第1を除き全国に15基あり、老朽原発では投資費用が回収できず、廃炉を選択する電力会社もありそうだ】

▶伊方・川内、秋にも再稼働 老朽原発は廃炉も視野
日本経済新聞2013/2/1 1

 古い原発は、彼らも見限ったということなのでしょうか。 

▶原子力規制委:防潮堤設置など津波対策猶予も 田中委員長が示唆

毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊

【田中委員長は、津波対策について「(施設の)耐震対策と少し分けて考える必要がある」と語った上で、理由を「基準津波は初めて出てきた概念。妥当に設定されているかを、もう少し検討する必要がある」と説明した】

【一方の耐震対策については「地震に対する施設の耐力を評価し直すことになるので、猶予できないと思う」とすぐに義務化を求める方針を明確に示した】


▶規制委:面会ルールで改定案 事業者対応は複数で

毎日新聞 2013年02月06日 11時17分(最終更新 02月06日 12時50分)

【従来、規制の内容に関わらない「儀礼上のあいさつ」は職員1人で対応することを認めてきたが、内容によらず原則として複数の職員で対応するよう見直した】

【この日の定例会で規制庁が示した改定案では、5分以内の「儀礼上のあいさつ」の場合は1人で対応することも認めていたが、島崎邦彦委員長代理が「たびたび(原電と)会っていたことをおかしいと思った職員はいなかったのか。組織として厳しさに欠けていた」と指摘、修正された】

【改正案は、事業者との面会の管理を厳格化するため、面会予定を前日に総務課に提出させることや、面会当日に内容を報告させることも盛り込んだ。面会の予約や実施状況は1週間分をまとめ、概要を2週後をめどにホームページで公表する】

 こんな小手先のことを考えで済むと思っているのでしょうね。「5分以内」ならOK? 5分という時間で十分でしょう。「後は電話なり、メールで」と言えばいいのですから。二人で会えば、よからぬことをしないとでも? 私、そんなお人よしではありません。 二人になったら二人を手なずければいいだけです。どうせ、皆さん、同じ穴のムジナなのですから。こんなことで了解できること自体、人(国民)をバカにしています。一切、接触させないというのが「厳しさ」というものです。

▶福井・敦賀原発:資料問題 参院、規制委委員長に2度目聴取 報告書漏えい釈明

毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊

【2度目の聴取は異例。日本原子力発電敦賀原発(福井県)の断層調査の報告書原案の漏えい問題について、「私の指導の不行き届きも含め、残念で遺憾なこと」と釈明した】

【田中委員長は「失墜した原子力行政の信頼を回復する大きな柱は、透明性の確保だ」と決意を表明し「世界で最も高い安全規制を目指す」と語った】

【一方、原子力規制庁の名雪(なゆき)哲夫・前審議官が原案を原電に手渡した経緯を公開するかどうかを問われたが、「(名雪氏の)独り合点で原案を出した」と弁明し、公開しない意向】

 例によって、個人の仕業ということで幕を引くのでしょう。

▶規制委:もんじゅ立ち入りへ 保安規定違反常態化で

毎日新聞 2013年02月06日 11時49分(最終更新 02月06日 12時16分)

【機器に大量の点検不備が発覚した日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、今月中にも立ち入り検査を実施することを決めた。機器保全計画の見直し状況を確認し、保安規定違反を常態化させた組織的要因を明らかにする。立ち入り検査は規制委発足後初めて】

 安全だとして何もしない連中です。そもそも、そういう連中に、こんな高価な、金食い虫=おもちゃ(ならいいのですが)を与えておくと、ろくなことはないということです。

▶福島第1原発事故 事故調提言会議、人材育成柱に報告書案 規制委権限強化も

毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊

【◇原発事故調に関する有識者会議報告書案──骨子

・欧米の規制当局と人材交流し、職員同士が電話連絡できるようにすべきだ
・震災の記録を作り世界に発信すべきだ
・原子力規制委員会の権限を強化し、過酷事故対策を主導すべきだ
・形が見えるよう除染を進めるべきだ】


▼「何も学ばない、何も忘れない人々」

▶核燃料税:原発停止中も徴収へ 道が新条例案 安全対策に活用

毎日新聞 2013年02月06日 北海道朝刊

【北海道電力泊原発(泊村)の停止が続く中、道は5日の道議会総務委員会で、北電から徴収していた核燃料税を原発停止中も徴収できるよう改める方針を示した。税率も現行の12%から17%に引き上げ、税収の安定確保を図る】

 みんな「福井方式に」に右にならえです。

▶美浜原発:「早期再稼働を」 原子力懇談会、関電幹部ら参加 町側から要望の声、後継機も/福井

毎日新聞 2013年02月06日 地方版

【美浜町原子力懇談会が4日夜、同町の関電原子力事業本部で非公開で開かれた。懇談会は、11人が死傷した美浜原発3号機事故(04年)をきっかけに、主に安全対策を求める場として始まった。しかし今回は、落ち込む地域経済を背景に、町側から早期再稼働やリプレース(後継機へ置き換え)を要望する声が多く出た】

【関電側は八木誠社長が出席。町側は漁協や農協などの代表など計19人が参加した】

【町側の意見には「美浜で(福島のような)事故が起こるとは思っていない」「3・11以来、若狭路の風評被害は深刻」などがあった】

 「美浜で(福島のような)事故が起こるとは思っていない」──どこまでも底抜けに〇〇です。カネに目がくらみ周りが見えないのでしょう。そういえば、福井を舞台にした朝ドラ、「底抜けに~」などと決まりセリフを言う落語家が出ていました。事が起きたら──実際、おととい5日に非常用発電機が故障し燃えていまし──自業自得と言いたいのですが、そんなこと言っている場合ではなくなってしまうのが原発事故です。「何も学ばない、何も忘れない人々」です。

▶美浜原発:非常用発電機が故障し黒煙/福井

毎日新聞 2013年02月06日 地方版

【5日、美浜原発(美浜町)の原子炉補助建屋で、負荷試験中の非常用ディーゼル発電機の出力が低下して黒煙が発生し、手動停止するトラブルがあったと発表した。放射能漏れはないという。 午前9時50分ごろ、フル出力で運転中だった発電機の出力が約6割に下がり、煙感知器が作動した】

▶原子力レスキュー部隊:安全確保へ対応、電事連に県提言/福井

毎日新聞 2013年02月06日 地方版

【同組織は、遠隔操作が可能なロボットなどの資機材を集中管理。原発事故時に、現場の偵察やがれき撤去などを行って事業者を支援する。県は昨年9月、検討準備会を設置し、協議を重ねた。提言書では、事故を起こした事業者と同組織の役割の整理や、ロボットなどの資機材の継続的な改良、資機材を搬送するためのヘリポートの確保などを求めた】

 せいぜいことが起きた時、逃げ出さない人を配置しておいてください。

▶福井県:脱「原発銀座」模索…LNG整備へ研究会

毎日新聞 2013年02月07日 02時30分(最終更新 02月07日 07時37分)

【福井県は原発停止で自治体の収入が減少。地域雇用も悪化するなど原発に依存した地域政策のほころびが広がっている。同県は「原子力は引き続き重要な基幹電源」(西川一誠知事)としながらも、LNG設備誘致などで「原発銀座」からの脱皮を探る考えだ】



▼毎日新聞新連載から

▶虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/4 自民商工族がエネ庁に圧力
毎日新聞 2013年02月06日 東京朝刊
◆虚構の環(サイクル) ◇直接処分、試算膨らませろ

【04年5月14日午前8時、東京・永田町の自民党本部。7階の一室で「エネルギー関係幹部会」が開かれた。自民党政調に置かれたエネルギー関係の委員会に所属する商工族ら衆参16議員が出席。経済産業省資源エネルギー庁の日下一正長官、石毛博行次長、寺坂信昭電力・ガス事業部長、業界団体の電気事業連合会幹部が招かれた】

【D議員「直接処分のコストについて強引に(試算を)作ればいい」】

【発言は「意図的に直接処分のコスト試算を膨らませろ」という意味だ】

【電力業界は立ち位置を変えた。電事連の総合政策委員会(通称社長会)は自民党の会議と同じ日「サイクル確立に向けた流れを確実なものとする」ため全会一致で「推進に関する決議」をした】

 ここにでてくる「寺坂信昭電力・ガス事業部長」、3.11後登場する安全・保安院長です。作業服などと来ていたので、それなりの人かと思ったら、なんと、「私、文系出身です」などと発言した御仁です。そもそも、それまではデパートの統合問題をしていた人でした。(本通信172号

 ▶虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/5 「撤退」唱える共同研究

毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊

◆虚構の環(サイクル) ◇電力業界異論で連載中止

【使用済み核燃料を再処理し、ウランとプルトニウムを取り出して再利用する核燃サイクルを維持するのか、見直すべきか。03~04年、研究者の世界でもせめぎ合いがあった。

 「どうする日本の原子力」と題した連載が03年8月、業界誌「原子力eye」9月号に載った。書いたのは山地憲治東大教授(現名誉教授)や電力各社の寄付で作る「電力中央研究所」に所属する鈴木達治郎上席研究員ら「原子力未来研究会」のメンバー。記事は「巨額のコスト」を理由に「青森県六ケ所村の再処理工場は経営的に破綻している。核燃サイクル確立という国策の堅持は閉塞感を強め、原子力の未来を危機に陥れる。国策を変えるべきだ」と主張していた。
 10月号では「出口なき前進ではなく撤退を」と訴える予定で、既に原稿もできあがっていた。ところが8月15日、山地教授は出版元の編集主幹から「どうにもなりません」と連載中止の連絡を受けた。編集主幹の上司が取材に答えた。「電力業界から『(購読や広告出稿によって)この雑誌に金を出しているのに何だ。この記事はおかしいじゃないか』と批判が出た。頭にきたが仕方がなかった」
 山地、鈴木の両氏に、佐藤太英(もとひで)電中研理事長、電力各社の役員が理事に名前を連ねるシンクタンク「日本エネルギー経済研究所」の内藤正久理事長(現顧問)、田中知(さとる)(前日本原子力学会会長)、八田達夫(現学習院大特別客員教授)の両東大教授らが加わり、03年12月に極秘の研究会が発足した。04年1月に合宿をした後に各自研究を進め、同5月には報告書をまとめた。
 「核燃サイクルを維持すると、コスト高で電気料金が上がり産業界が反発」「再処理工場を一定期間動かした後にストップすると(六ケ所村など)自治体が反発」「工場を稼働させず直接処分を可能にすると、青森県が使用済み核燃料の受け入れを拒否し、電力が原発から撤退する」など、大別して3パターンの予想をした。どの政策にも一長一短があるという当たり前とも言える分析だった。
 ところが報告書の内容を知った東京電力幹部は「『六ケ所をやめる』というパターンが含まれているのはまずい」と公表しないよう求めた。経緯を知る関係者は「電中研もエネ研も電力の金なしでは成り立たない。だからあきらめた」と語る。研究会は解散し、報告書は闇に葬られた】

 先月、政府事故調委員を務めた吉岡斉さんからお話を聞く機会があったと何度か書いていますが、その際に吉岡さんが言われていました。

「推進的な人も呼んで、率直に意見を交わすやり方(チャタムハウス方式:責任者・世話人の名前しか出さない)でどういう意見が出て、どうだったかという報告書を出す場をつくると、原子力に推進的な人も、やはり今の原子力は問題が多いというようなことを多くの人が言いだすわけです」と。


▶英原発新設計画から撤退へ

毎日新聞2013年2月5日付総合・経済 ファイル

 時事電として、「英エネルギー大手セントリカは4日、フランス電力公社(EDF)と共同で進めていた英国内の原子力発電所新設計画から撤退する方針を発表した」とのことです。福島の事故後、コストがかさみ稼働時期も見通せないためと。中国企業との提携を模索しているとのこと。【英国では昨年、ドイツの電力2社が本国での原発事業からの撤退に伴って新設計画を撤回。新たに日立製作所が参入を表明したものの、EDFの計画を含め事業の停滞が目立っている】と。

▶ドイツ連邦銀:偽札見破り術、死刑国には教えず

毎日新聞 2013年02月06日 19時24分

【ドイツ連邦銀行(中央銀行)は、通貨偽造罪に死刑が適用される可能性がある中国やベトナムの銀行当局に対し、偽札を見破るノウハウなどを教えない方針を明らかにした。これらの国々で通貨偽造対策が進み、摘発された人物が死刑となって命を落とす事態を避けるためだ。ドイツは基本法(憲法)で死刑を禁じており、犯罪阻止より「人命」を優先させた格好】

【DPA通信によると、ドイツ連銀の広報担当者は「私たちの偽札対策伝授で、死者が出ることは絶対に避けたい」と説明】

「犯罪阻止より『人命』を優先」とのことのようです。これも哲学があるというのでしょう。翻ってわが国です。今日の「何も学ばない、何も忘れない人々」で紹介したように、「人命よりお金を優先」する国です。それを「現実的」とするお国柄です。市民社会の成熟度などということでも…。脱原発も、死刑廃止も……。