原発通信401号                                  2013/02/25

今ごろになって、「ベント前にもう拡散していました」だと!

 日曜日の夜から寒気がして、昨日一日ダウンしてしまいました。本号の内容は、23日から24日までの動きをピックアップしておいたものです。それにしても、福島県原子力安全対策課の担当者、観測データを今頃発表したことを「他業務に忙殺され、結果的にデータ解析が後回しになった」などとよく言えたものです。このデータは山下俊一らの県民管理調査にも活用されていないとは、何のための調査だといいたい。

 安倍晋三は、「日米の同盟は完全に復活した」などと、意気揚々とアメリカから帰ってきました。

▶<福島第1原発>ベント前 放射性物質が10キロ圏に拡散

毎日新聞 2月22日(金)2時31分配信

【東京電力福島第1原発事故で、11年3月12日に1号機格納容器の水蒸気を外部に放出する「ベント」を始める約5時間前から、放射性物質が約10キロ圏に拡散していたことがわかった。福島県の放射線モニタリングポストに蓄積されていた観測データの解析で判明した。放射線量が通常の700倍超に達していた地点もあり、避難前の住民が高線量にさらされていた実態が初めて裏づけられた】

【最初のベントは3月12日午前10時17分に試みられ、4回目の同日午後2時半ごろに「成功した」とされる。しかし、観測データによると、主に双葉町の▽郡山地区▽山田地区▽上羽鳥地区▽新山地区──の4地点でベント前に放射線量が上昇していた。震災前の線量は毎時0.04~0.05マイクロシーベルトだったが、原発の北2.5キロの郡山地区では3月12日午前5時に0.48マイクロシーベルト、同6時に2.94マイクロシーベルトと上昇。さらにベント開始約1時間前の同9時には7.8マイクロシーベルトになった。西5.5キロの山田地区ではベント直前の同10時に32.47マイクロシーベルトと通常の約720倍を記録】

【国の平時の被ばく許容線量は毎時に換算すると0.23マイクロシーベルトで、各地で瞬間的に上回ったことになる】

▶<福島第1原発>ベント前 放射性物質の拡散 データは放置

毎日新聞 2月22日(金)2時32分配信

【東京電力福島第1原発事故による放射性物質の拡散が、これまで考えられていたより早く11年3月12日早朝から始まっていたことが、福島県の観測データで裏付けられた。しかし、県がモニタリングポストの解析を終えたのは、政府や国会の事故調査委員会が最終報告書をまとめた後。現在進行している県民健康管理調査にも、このデータは反映されていない。被災者の健康に直結する「命のデータ」は事実上、放置されてきた】

【この間、政府や国会の原発事故調査委員会が相次ぎ発足し、事故原因の究明にあたった。両委員会は昨年夏、最終報告書をまとめたが、県のデータの存在を把握しないまま解散したことになる。政府事故調の元メンバーで同県川俣町の古川道郎町長は「政府事故調で検証されなかった新事実だ。なぜ解析がこんなに遅れたのか。事故の検証は終わったとは言えない。継続的な検証態勢を整備すべきだ」と憤る】
【一方、このデータは11年6月に始まった県民健康管理調査にも活用されていない】

【県原子力安全対策課の担当者は毎日新聞の取材に「県内全域の放射線調査など他業務に忙殺され、結果的にデータ解析が後回しになった」】

「他業務に忙殺され」解析に時間がかかったなどという通り一遍の答えをそのまま信用するようなお人よしはいません。なぜ、今なのか…。もう多くの人は感づいています。「都合が悪かったから」と。

▶福島第1原発事故 住民被ばく「線量把握を第一に」 原子力規制委検討チーム、データ管理提言へ/福島

毎日新聞 2013年02月23日 地方版

【原子力規制委員会(田中俊一委員長)の検討チームは、「住民の被ばく線量把握が第一で、データを一元的に管理すべきだ」とする提言素案をまとめた。規制委は今後、素案を基に国への提言をまとめる。
 素案では、各市町村で実施している外部被ばく線量の測定について、「活用の仕方が統一されておらず、今後は統一した測定方法での実施が必要」と指摘。継続的な外部被ばく調査では、避難指示が解除された地域では線量計による実測値を活用し、線量の低い地域では住民の負担を軽減するため空間線量率による推計が妥当とした。また、問診票回収率の伸び悩みについては「さまざまな工夫をすべきだ」とした】


▶原発:運転状況の監視システムが一時停止…原子力規制庁

毎日新聞 2013年02月21日 20時37分(最終更新 02月22日 01時09分)

【原子力規制庁は21日、全国の原発の運転状況を監視している緊急時対策支援システム(ERSS)が一時停止し、各原発の格納容器の温度や圧力などの運転データが約1時間半にわたって表示できなくなるトラブルがあったと発表】

▶原発監視システム:
 一時停止 九電作業ミスが原因 試験データ誤送信

毎日新聞 2013年02月23日 西部朝刊

【事故時に備えて全国の原発の運転状況を監視している緊急時対策支援システム(ERSS)が一時停止した問題で、原子力規制庁は22日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)での通信回線工事の作業ミスが原因と発表】

【九電は22日に福岡市の本社で開いた記者会見で、情報通信本部の岩崎和人部長が「事前に工事シミュレーションをしておくべきだった。今後は回線を切断して工事する」と謝罪】

▶福島第1原発事故 2号機タービン建屋内部で水漏れ/福島

毎日新聞 2013年02月24日 地方版

【福島第1原発2号機タービン建屋内部で水漏れがあったと発表した。水の放射性セシウム濃度は1立方センチ当たり380ベクレルと、同建屋地下にたまっている汚染水(同約5万2000ベクレル)と比べて低いことから、雨水が建屋2階の空調ダクトなどから侵入した可能性があるとしている】

▶福島第1原発:汚染水浄化設備の試運転了承 条件付きで

毎日新聞 2013年02月21日 20時28分(最終更新 02月21日 23時45分)

【原子力規制委員会の有識者検討会は21日、東京電力福島第1原発事故で生じた汚染水から62種類の放射性物質を除去する設備「アルプス」の試運転を条件付きで了承した。浄化作用が向上するが、放射性トリチウムは除去できないとして、東電が模索する処理後の水の海洋放出は認めなかった】

【溶融した1~3号機の炉心の冷却で生じた汚染水約23万立方メートルを貯蔵し、現在も増えている。従来の浄化装置は、セシウムしか除去できないが、アルプスは複数の吸着剤を通すことでストロンチウムやプルトニウムなど62核種の放射性物質を取り除ける】

【このため、検討会は「アルプスを導入した方がリスク(危険性)を低減できる」との見解で一致。除去された放射性物質の保管容器が移送時に落下した際に漏えいしないよう強度を確認する試験を複数回実施することなどを条件に、試運転を認めた。東電がこうした条件に対応した後、規制委が試運転を認めるかを判断する】

【しかし、アルプスを導入しても放射性トリチウムは高濃度のままで、検討会は処理後も水を構内に保管するよう求めた。東電は15年9月までにタンクを増設し容量を計70万立方メートルに増やす計画だが、それでも2年半後には足りなくなる見通し】


▶電力9社、原電支援へ 破綻回避へ1200億円超検討

朝日新聞デジタル 2月22日(金)10時7分配信

【沖縄電力を除く9電力会社は、原発専業の日本原子力発電が資金繰りに行きづまらないよう支援する方針を固めた。1200億~1300億円規模の債務保証や資金支援をする方向で調整している】

【日本原電は4月に借入金1040億円の返済期限が来る。銀行から借り直そうとしているが、一部の銀行は電力業界が保証するよう強く求めている。もし借りかえができなければ、日本原電は借金を返せずに経営破綻(はたん)する】

 原発とは、どこからかの手当てが無ければ成り立たないというリスキーな“事業”だということ。かつ、「支援」=援助するだけのカネが各電力会社にはあるということです。というより、つぎ込んだ金を取り返そうと深みにはまる?

▶日本原電:電力9社、支援に奔走 原燃株購入、電気料金に反映も

毎日新聞 2013年02月23日 東京朝刊

【原電は規制委に対し、活断層評価の反論を試みるなど必死の抵抗を見せている。西日本の大手電力幹部は「7月の参院選が終われば状況も変わるはず」と「時間稼ぎ」を強調した。参院選を経て自民党の長期政権が確立されれば「政府支援を求めやすくなる」(幹部)との算段】


▶福島第1原発:3号機 使用済み燃料プール内の画像公開

毎日新聞 2013年02月21日 22時56分(最終更新 02月21日 22時59分)

「燃料の損傷や燃料貯蔵ラックの変形などは確認されなかった」?

【プール内の燃料ラックの上にはがれきが堆積していた。落ちた部品は、ほかのがれきの撤去に合わせて回収するという。
 また1号機原子炉建屋の地下で20日、圧力抑制室がある「トーラス室」内部を撮影した画像も公開。トーラス室内には水がたまり、水面が白っぽく写っていたほか、底には茶色っぽい砂のような堆積物が沈んでいた】

 がれきに覆われ、砂のような堆積物が沈殿? それでも変形などは確認されなかった? 


▶中間貯蔵施設の建設「丁寧に説明」

NHKTV2月22日 13時57分

石原環境相、丁寧に話せばわかるとでも。

▶原子力発電小浜市環境安全対策協議会:
 安全協定見直し、委員から異論/福井

毎日新聞 2013年02月23日 地方版

【発電所の増設に伴う安全対策に関し、周辺市町に認められた事業者への対応が、従来と同じ「意見を述べることができる」とされたことに対し、委員から「理解できない。立地と同じ権限を持つ必要がある」との意見が出た】


▶記者の目:安倍政権の原発政策=阿部周一(東京科学環境部)

毎日新聞 2013年02月22日 東京朝刊 

【◇再処理ネック、袋小路必至
 年明け、科学欄に小さなコラムを書いた。「2030年代の原発ゼロ」を掲げた野田前政権のエネルギー・環境戦略が、国内版と海外版で微妙に違うという内容だ。「英語版に目を通すと『even enable zero』とある。翻訳すれば『原発ゼロさえ可能とする』。注目は、日本語版にない『even(~さえ)』が挿入されている点だ。微妙な差だが、『ゼロを可能とする』と言い切るのとは印象が違う」】
本通信371号既報

【戦略作りに携わった関係者に経緯を聞くと、この一語は米国に配慮して「ゼロ」のインパクトを弱める工夫だった】

【昨年3月、核安全保障サミット出席のため訪韓したオバマ米大統領は「我々がテロリストに渡らぬよう試みているプルトニウムをため続けることは絶対してはならない」と演説した。日本へのメッセージとも取れた。国民受けのいい「原発ゼロ」と、米国が安心する「余剰プルトニウムゼロ」。矛盾を両立させるため、日本は「even」を挿入せざるを得なかったのだ】

【さて、安倍政権の原発政策は「できる限り依存度を低減する」(1月30日、首相国会答弁)と原発の新増設にも含みを持たせ、再処理事業は継続する方針だ。一見、ジレンマは解消に向かうように見える。だが現実は甘くない】

【一つは再処理の行方だ。日本の核分裂性プルトニウム保有量は国内外に約30トン。長崎型原爆数千発分に相当する。青森県六ケ所村の日本原燃再処理工場が完成し本格稼働すれば、プルトニウムは年約5トンずつ増えていく】

【米民間団体「核脅威イニシアチブ」が昨年公表した調査では、日本はプルトニウムの大量保有が響き、核物質管理の安全度が兵器に転用可能な核物質を持つ32か国中23位。プルトニウムを余らせない前提で日本に再処理を認めた日米原子力協定の改定期限も18年に迫る。袋小路の日本に「プルトニウムをどうするつもりか、米国から突き付けられるのは間違いない」(政府関係者)】

【日本が取りうる選択肢は三つだ。(1)プルサーマルを大幅に増やす(2)再処理量を減らす(3)再処理をやめる──。(1)は前述の通り実現が難しそうだ。となれば(2)か(3)だが、再処理に回るはずの使用済み核燃料が行き場を失い、既に満杯に近い全国の保管場所からあふれる。満杯になれば、それ以上原発は動かせない。

 ではどうするか。私は(3)の立場だ。既にあるプルトニウムはプルサーマルで使い、それ以上の再処理はやめる。あふれる使用済み核燃料はとりあえず金属容器に保管し、将来は地中に埋められるよう法改正を急ぐべきだ】

【不思議なのは、ここまで進退窮まった状態を政治家たちが知らぬ顔でいることだ。先の衆院選での論争や今国会の審議を聞いていても、この問題はほとんど取り上げられない。目を背けているうちに、誰かが何とかしてくれるとでも思っているのだろうか】

【再処理工場は早ければ今年10月に完成する。再処理を進めるもやめるも国民の合意がないと困難だ】

 使用済み核燃料はじめ核のごみ処理問題が最大のネックです。これを次世代につけとして回す無責任は許されません。今ある以上に増やさず、いくらかでも少なく、そして安全にというしかありません。