原発通信402号                                  2013/02/26

「日米の絆完全復活!」 じゃあ、福島(をはじめ被災地)の人たちの絆は?

 安倍晋三が訪米から帰国、オバマにゴルフクラブをプレゼントし、「日米の絆が完全復活した」などと言っています。TPPもオバマと取り付けたから俺に一任しろと言い、居並ぶ自民党議員は「ほんじゃお任せします」と、これまた何のために国会議員になったのと言いたくなる体たらくを見せています。「日米の絆が完全復活した」だのと大見得を切るのはいいですが、原発事故で家族、地域の絆をズタズタにしてしまったことについては、口をつぐんでいます。

 それと、選挙前までは、「大胆に」などと威勢のいい言葉を連発していた安倍晋三(政権)ですが、最近は「丁寧に」という言葉を多用しています。丁寧に説明し、「よらしむべし、知らしむべからず」でと企んでいる感じです。彼らが今「丁寧に」というときには要注意です。

■TPPに関するアメリカの言い分

 TPPに関しても何も担保されているわけではありません。現に米国内でも日本をTPPに入れることに反対している勢力があります。例えば自動車業界です。日本車が米国に自動車を輸出する際は乗用車で2.5%、トラックは25%の関税が現在かかってます。反対に日本では関税ゼロです(参考:JETRO「日本からの輸出に関する相手国の制度など」)。それでも、日本では米車は売れません。それに対し、米国は軽自動車の優遇税制措置について文句を言ってきているとのことです。「それがあるから、売れないのだ」と。狭い日本、デカければいいなどというアメ車が売れるわけがないだろうと思うのです。そういうマーケッティングは行わないようです。TPPというと農業問題にすぐ目が行ってしまいますが、医療・保険についても注視しておかないと大変です。郵政民営化がその第一歩ともい話だったのですから。

■「憲法改正は96条から」に潜む危険性

 憲法改正について大阪の橋下が安倍晋三同様、96条から手を付けることに賛成と言っています。そもそも何ゆえに改正に当たっては高いハードルを設けているかを考えなければいけません。明大法特任教授のローレンス・レペタさんが、09年の総選挙で民主党を圧勝させたが、3年後の昨年12月の選挙では自民党が大勝。そうさせた「ひとときの熱情」に潜む危険性を指摘し、民主主義の危機を言っています(下記)。なぜハードルが設けられているのかということを問うこともなく、純粋・素朴に「大事なことはみんなで決めよう」などという憲法改正国民投票論者や、民主主義は多数決だなどと、純粋・原理主義的に発想する連中がいます。

■地震空白域=栃木で地震

そんな中、栃木県北部で震度5弱の地震です。3.11前までは空白域だったといいます。3.11後、今までそんなところが震源だなどと聞いたことがないのに…と思っていたら、昨日の地震です。「今まではないから、起きたことがない」と、可能性を「排除」してものを考えることはできないということを教えてくれます。


▶日光で震度5強 東日本大震災が誘発か

日本テレビ系(NNN) 2月25日(月)20時59分配信

【25日午後4時半頃、栃木・日光市で震度5強を観測した地震について、気象庁は、東日本大震災の地殻変動によって誘発された地震である可能性が高いと発表した
 東日本大震災では、東北地方から中部地方にかけて大規模な地殻変動が発生したため、これまで地震活動が活発でなかった所でも地震が発生している】

 夕方、ラジオを聞いていると、「緊急地震速報」の音、その後、何度となく地震がありましたという報が入ります。今回の震源域は、地震など起きていたなったところだといいます。原子力村の連中に言わせれば、そういうところは「考慮しなくてもいいもの」となってしまうのでしょう。でも、起きるものだということを今回のこの地震が教えてくれます。

▶中国の原発事故想定 規制委、対応策を検討 「次々と建設、日本に影響甚大」

産経新聞 2月25日(月)7時55分配信

【中国の原発で過酷事故(シビアアクシデント)が起こった場合、日本にどういう影響があるかなどについて、原子力規制委員会が事故対応の検討を始めたことが24日、規制委関係者への取材で分かった。国内の原子力規制機関が海外の原発事故を想定し対応策を検討していることが判明したのは初めて。規制委は今後、各国の規制機関とも協力、海外の原発事故対応について本格調査に乗り出す】

 本当に、何か事が起きたらすぐにその影響下に入ってしまいます。偏西風もあるのだし…。

▶原子力政策:「責任ある再構築」緊急提言 エネルギー懇

毎日新聞 2013年02月25日 19時02分

【首相や茂木氏との会談後、有馬氏は記者団に対し、「(原発停止に伴う電気料金の値上げで)日本の国内総生産(GDP)が下がっているうえ、天然ガスなどの輸入に3兆円もかかっている。原発は、安全性を確保して動かせるものは動かしてほしい」と】

 この有馬は近々死ぬでしょうから構わないかというところでしょう。しかし、私たちはこんな無責任男とは違うというところを見せなければなりません。


▶Dr.中川のがんの時代を暮らす/70 隕石落下は予測不可能

毎日新聞 2013年02月25日 東京朝刊

【このような隕石落下は珍しい現象ではありません】

【「人口密集地に落下していたら」と思うと、ゾッとします。
人工衛星を打ち上げる人類も、隕石の落下を予測することは困難ですし、迎撃も不可能です。そもそも自然災害をゼロにすることは人間の力ではできません。そんな当たり前のことを、天から降ってきた石が教えてくれたのかもしれません】

 そうなのです、「そんな当たり前のこと」が、わがDr.中川は「天から降ってきた石」によってでしかわからなかったということなのです。もっとも、中川に言わせれば、怖いものはこの“日本にはない”そうですから。

▶3・11後のサイエンス:原発と地球の時間=青野由利

毎日新聞 2013年02月26日 東京朝刊

【原発に疑問を抱いたきっかけは、人それぞれだろう。私の場合は20年以上前、旧科学技術庁の官僚が原発のゴミについて述べた一言だった。「(放射能が減衰する)数万年後に最終処分場の上がどうなっているか、誰にもわかりません」。えっ、それでいいの、と驚いたのを覚えている】

【原発を動かすなら、耐震性もゴミも、「地球の時間」で考える必要がある。これを怠り、目先のことだけ考えてきたのが日本の政策ではなかったか】

【それでも、「処分はこの世代の責任」という点で変わりはない】


▶指定廃棄物の処分場選定、やり直し 栃木・矢板と茨城・高萩、取り下げ

毎日新聞 2013年02月26日 東京朝刊

【記者会見した井上信治副環境相は「(各県の)すべての市町村を選択肢として新たに(選定作業を)始める」と述べた】

とはいうものの、

【ただし、井上氏は矢板、高萩両市が再び選ばれる可能性について「前回の選定プロセスも一定の合理性の中で進めてきたので、似通った結果になることは否定できない」と】

 まあ、野田政権のときの横光克彦じゃありませんが、「近くに来たから寄ってみました」風に顔出して、「お願いできないかね」というのは、何が何でもないだろうと思います。でも、この狭い日本、持っていく場所がそうあるわけはないでしょうから…。本当は東電のサイトがいいのだろうと思いますが。

▶福井県:来年度予算 核燃料税収入61億円を計上

毎日新聞 2013年02月25日 大阪夕刊

【福井県は25日、来年度一般会計当初予算案を発表した。原発が停止中でも一定の税収が得られる核燃料税の新方式を全国に先駆けて導入しており、核燃料税収入61億円を計上した。また、昨年7月に関西電力大飯原発3、4号機が再稼働したことに伴い、この日に発表した今年度の補正予算案で関電からの税収約17億円を計上した】

 中毒になると、何かと理屈をつけ、手に入れようとするものです。

▶福島第一原発の溶融燃料取り出しは、原子力ムラへの新たなバラ撒きの始まりではないのか?

誰も通らない裏道2013/02/26

 26日付の日経新聞からです。

【「溶融核燃料 処理手探り 原子力機構、模擬実験に着手 21年度取り出しめざす」という記事がある。リードは以下のとおり】

【東京電力福島第1原子力発電所の事故で、炉心溶融(メルトダウン)し溶け落ちたとみられる核燃料「デブリ」を処理する技術開発が始まった。日本原子力研究開発機構は模擬デブリを試作、安全に取り出す方法の評価に着手した。デブリは強い放射線を放つため、その扱いは廃炉作業で最も困難とされる。2021年度の取り出し開始を目指し、政府も官民の研究開発を後押しする】

【デブリには放射性物質が大量に含まれるので、不用意に扱えば核分裂反応が連鎖する臨界に達する恐れもある。東芝や日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業、原子力機構は、デブリがどんな条件を満たせば臨界に至る可能性があるのか、解析に着手した】

【デブリを扱う技術はこれまで必要性が想定されていなかったため、原子炉メーカーも手探りで開発を始めた段階。政府は原子力機構やメーカーへの支援を強化する方針で、経済産業省は来年度予算案で原子炉の廃炉に関する技術開発支援に86億円を盛り込んだ。「将来は世界的に廃炉市場が拡大し、産業競争力の底上げにもなる」と話している】(記事ここまで)【一方で京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は、「この燃料は取り出せないだろう」と言っており、とにかく地下水との接触を防ぐためにも、早く原子炉の周りの地下に壁をつくるべきだと主張されている。
私はまったくの素人だが、それでも1号機から3号機まで、3つの原子炉の溶融燃料を2021年度、つまりこれから8年後から取り出せるとは到底思えない
火力発電所を解体する技術を支援をするために政府が税金を投入するという話は聞いたことがない。
つまりこれも原発を運転するがゆえの立派なコストであるが、おそらくこれも原発の発電コストには算入されていないだろう】

【私の予想では、おそらくカネ(税金)を使うだけ使ったあげく、最後には「やっぱり溶融燃料は取り出せませんでした」ということになり、メディアも「仕方がない。難しかった」ということで話をおさめるのではないかと思う】

 このブロガーが言っている通りでしょう。吉岡斉さんも言っていました。福島第一はそのままにしておくしかないだろうと。あとは、小出さんと同様なことを言っていました。

▶原発30キロ圏自治体の首長アンケート

朝日新聞デジタル版2013年2月23日21時4分

【朝日新聞が各原発から半径30キロ圏にある自治体の首長156人にアンケートしたところ、来月18日の期限までに「めどが立った」と答えたのは約5割にとどまった。現政権による原発ゼロ政策の見直しが進む中、危険性と直接向き合う地域の対策の遅れが浮き彫りになった】


▶特集ワイド:「原発ゼロ戦略」を全否定した首相 ところが具体策なし、無責任はどっちだ

毎日新聞 2013年02月21日 東京夕刊

 賛否はともかく、民主党政権がなぜ、「30年代」「稼働ゼロ」という数値目標を掲げたことに対して、安倍政権は「根拠ない」と切り捨てました。

【民主党政権下の内閣官房国家戦略室で企画調整官として原発ゼロ戦略の立案に携わった伊原智人さん(44)が指摘する。何が違うのか。
 「原発の代替エネルギー開発や省エネの促進には期限や明確な目標を設定した方が有効なのです。国や公的資金からの拠出額は知れており、それだけで大変革を起こすのは難しい。携帯電話の急速な普及を思い出してください。民間の投資があってのことです。転換がいつを目指すかさえ分からないなら、積極的投資は望めません」
 つまり「30年代にゼロ」と掲げること自体を戦略実現の「根拠」としているのだ。数値目標が狙いの達成に重要なことは、安倍首相こそが“熟知”しているだろう】
と。

 そして、ここでも使用済み核燃料の問題です。

【安倍首相は使用済み核燃料の後始末をどうするつもりなのか。展望がないなら「無責任」という批判は自らにはね返ってくる】

 とはいうものの、意気揚々の安倍晋三には、届かないのかもしれません。しかし、そういって、斜に構えていれば、なおさら、安倍の意のままになってしまいます。私たちの脱原発という声を高く出し続けていくしかありません。

▶タンク6基から汚染水漏れ=米ワシントン州の核施設

時事通信 2月23日(土)11時30分配信

【米ワシントン州のインズリー知事は22日、ハンフォード核施設の地下にある放射性廃棄物貯蔵タンク6基から汚染水漏れが確認されたことを明らかにした。同施設では15日に1基から汚染水漏れが確認されたが、エネルギー省の調査で新たに5基について判明したという。知事は「直ちに健康被害が及ぶ恐れはない」としている】

 どこも同じです。「直ちに健康被害が及ぶ恐れはない」と。じゃあ、何年後にその恐れは出るのですかと聞きたい。

 福島第一原発サイトには汚染水タンクが林立しています。前号にありますが、【東電は15年9月までにタンクを増設し容量を計70万立方メートルに増やす計画だが、それでも2年半後には足りなくなる見通し】と。

▶神戸製鋼所:ガス発電、真岡で計画 経済活性化に期待 内陸型、効果未知数/栃木

毎日新聞 2013年02月23日 地方版

【発電所は、同社真岡製造所(真岡市鬼怒ケ丘)とその隣接地計約9万平方メートルに建設する。計画は以前からあったが、東京ガスが15年度に真岡市-茨城県日立市間に都市ガスのパイプラインを完成させることを予定し、ガスの安定調達のめどが立っていることもこの地を選んだ決め手となった】

 神戸製鋼は、「電力調整契約」①通告後《すぐに》使用制限する「瞬時契約」で格安に電気を買っているところです。

▶中国:「都市部でバーベキュー禁止」環境保護省が対策草案

毎日新聞 2013年02月21日 19時40分(最終更新 02月21日 19時53分)

【短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」では、「政府はつまらないことばかり管理する」と反発が広がっている】

 まったくその通りです。しかし、中国では、どの程度バーベキューとやらをしているのでしょうか。というのも、昔、本で、大躍進のときスズメ退治に地域の人がそれこそ文字通り総出ではたきみたいなものを振り回し、スズメが止まれないようにし、そのうちスズメがつかれて落ちたところを捕まえて退治するのだという記述を見つけた時、まさかと思ったのですが、当時の映像をその後見て、やはりほんとだったのだと思ったことがあったからです。中国ですから、私たちの想像をはるかに超える「事態」が起きているのかと思って……。でも、バーベキュー禁止でPM2.5が減るわけはないだろうと思います。


▶橋下氏「憲法96条改正を、民主一部と連携も」

読売新聞 2月25日(月)5時59分配信

【日本維新の会で共同代表を務める橋下徹・大阪市長は24日、読売新聞の単独インタビューに応じ、夏の参院選を通じて自民、公明、みんなの各党に民主党の一部を加えた勢力で、憲法改正の発議要件を緩和する憲法96条の改正を目指す考えを明らかにした 】

▶憲法改正における「ひとときの熱」の回避 明大法特任教授のローレンス・レペタ

 憲法96条改正問題ですが、ちょうど毎日新聞2月25日付に明大法特任教授のローレンス・レペタさんの一文が掲載されていました。

【憲法改正においては議会の圧倒的多数の承認は、民主的な憲法下の国々では一般的要件だ。米憲法は上下各院の三分の二、さらに州議会の四分の三の承認がいる。こうした厳格な基準の賛同者は、言論や宗教の自由などの個人の権利が、自由な社会や民主的政府の基盤であるとして、多数決で改正されるべきでないとする。世論が激変し、その時々の多数派が基本的権利を脅かすのを恐れているのだ。】といいます。【米国の憲法専門家は「目指すべきは、熟考しようとする社会的感覚が、ひとときの熱情に勝る状況を確保することだ」と指摘する】

 また、自民党草案にある「公益及び公の秩序」を害しない場合に限り、憲法の権利行使を認めるという点について、【この言葉の定義を示さず、あいまいで不明瞭だと】いいます。

 そして、日本国憲法制定は、(世界から)孤立した出来事ではなく、世界的に広がりを見せた人権運動とつながっていると指摘します。憲法施行(1947年)は国連総会での世界人権宣言採択の1年前であると。【人権規約などに規定される個人の権利は「公の秩序」や恣意的な制限を受けることはない。今回の改正が実現すれば、日本は世界の立憲主義の民主主義国家の体制と違った道を歩むことになる】と警鐘を鳴らしています。

 レペタさんは、09年の総選挙で民主党を圧勝させたが、昨年12月の選挙では自民党へと、わずか3年で対抗する自民党を大勝させた「ひとときの熱情」を求める潜在性を示したことを危惧しています。

 何を悪乗りしているのか、「大事な事はみんなで決めよう」などと、受けのいい言葉をまき散らし、原発のみならず、憲法改正まで叫んでいる一群(今井一ら)がいます。民主主義とは何かを一から勉強しなおしてもらいたいものです。


▶女子柔道暴力:告発15人が聴取拒否 全柔連に不信

毎日新聞 2013年02月26日 10時39分(最終更新 02月26日 11時16分)

 当たり前、殴ったやつが、なんで殴られたと思います、などと聞くほうがどうかしています。何が問題なのか理解していない連中ということです。

▶TPP:判断時期、首相に一任

毎日新聞 2013年02月25日 20時57分(最終更新 02月25日 21時14分)

 これからの国の在り方を大きく左右する事案について、さじを投げて、大将に一任だと。こんな風なら、議員(議会)など不要だということになってしまいます。というよりこれもリスクヘッジ(?)か、TPPに反対の自民党議員連中、あとで「私は断固反対だった」という言い逃れをつくるために…。というよりも前に、そもそも違憲状態で選挙で選出された議員は有効なのでしょうか。違憲裁判の判決が来月次々と出るそうです。

▶国会にいら立ち?1票の格差でスピード裁判

読売新聞 2月26日(火)10時7分配信

【過去に例のないスピード審理の背景に、なかなか進まない選挙制度見直しへの裁判所の“いら立ち”があるとの見方もある】とは読売新聞。



第30回〈市民の抗議行動とデモ〉闘いが自分たちの生活を守る

 今回は、ブルガリアの「電気料金革命」(マスコミ用語)が政権を倒したという話です。

 旧東ヨーロッパの現状は、「鉄のカーテン」が崩壊して以降、20年以上が経っていますが、市民の生活は壊滅的ではないかと思います。4、5ヵ国を回っただけですが、目に付くのは街の中心部がポップ調に新しく模様替えされているのと比較して、周辺の住居地区となると、目を覆いたくなるような状況でした。世界資本が美味しいところを食いつくし、市民はその残りカスを食わされているようで、通りのあちこちにゴミが散在し、家屋は手入れもされず崩壊するに任せられていました。

 ここ数年聞かれるのは、冬の寒さに数十人が凍死するというような報道です。東ヨーロッパの冬は零下30度以上にも下がります。どうしてこの寒さを凌ぐのか。

 2013年2月18日月曜日に、ブルガリアの首都ソフィアでは、数千人のデモ参加者が、政府の建物に投石をしたり、ゴミのコンテナをひっくり返して、「退陣せよ!」のシュプレヒコールを挙げます。この抗議行動は、最初は、高くなった電気料金に向けられていましたが、その夕方には、ソフィアをはじめ他の町でも「首相の退陣」を求める抗議行動に発展していきます。

 首相(Bojko Borissow)は、財務大臣の首を切ることで市民の抗議をかわし、事態の鎮静化を図ろうとそうとしますが無駄足に終わっています。火曜日に首相は、3月1日から電気料金を8%値下げし、しかし、退陣しないことを表明します。

 この市民の抗議行動とデモは一週間前から続いていて、1997年以来の激しさだといわれていました。当時は、「空腹革命」と言われ、ネオ共産主義政権に対する抗議で、首相(Jean Widenow)を失脚させています。

 4人家族の家庭で月々の電気料金は、100-200ユーロになっています。最低賃金が140ユーロで、年金となればもっと少ない市民の中には、この電気料金を支払えない人が出てきます。特に高層ビルの場合は、暖房費がことのほか高くつきます。また支払いが遅れれば、警告なしにすぐに電気が止められてしまいます。極寒期の凍死者の数がこれによって理解できます。

 別の観点から見れば、旧共産主義政権の下では電気料金はほとんど無料に近く、それが所謂自由・資本主義社会になったことによって、生活費を圧迫してきます。この時代と社会の転換に馴染めない沢山の人たちが出てきても当然といえます。社会の上っ面は変わっていても、内面はあまり変わっていないからです。

 2005年に新自由主義的な政府が電力の私有化をしたのが、今日の現状を引き出しているといえるでしょう。共産主義時代の国有化から私有化の過程では、経済用語的にいえば自由で公正な競争入札ではなく、これはどこの旧「共産主義」社会でも同じですが、事前に独占資本と企業に国有財産が分割されていきます。要は権力と権益の身内の分配です。

 それによって、ブルガリアの電力供給は、1.Energo-Pro、2.チェコのCEZ、3.オーストリアの EVNの三つの私企業によって、三ブロックに分けて行われるようになりました。しかし、電気料金は国家によって規制されていますが、世界の財政危機はブルガリアの経済も直撃し、失業率は、9.4%から18.8%まで跳ね上がっていました。

 今日の新聞を見たら、首相は退陣したというニュースが掲載されていたように思いますが、まだ詳しくは読んでいません。

 いずれにしても、生活を守り、「電気料金の値上げ」を食い止めさせたのは〈市民の抗議行動とデモ〉であったことは確かです。闘いがないと自分たちの生活は守れない、逆に、闘えば、政権をも倒せるということでしょう。だから、頑張りましょう。

*参考資料「FR」紙2013年2月20付