原発通信408号                                  2013/03/06

汚染水問題──海に放出するのは間違いない?!

 毎日休みなくたまり続ける汚染水。汲んでも汲んでもというのが実感だろうと思います。タンクをつくっても、そのタンクを置いておくところには限りがあります。ALPSの完成を待って、「きれいな水」(東電幹部)になったからと言って、環境中に放出しても問題ないということで「海に戻す」(東電常務の言葉)時期を狙っていることは間違いないでしょう。

 昨夜のNHKのニュースウォッチ9、NHK単独取材という触れ込みだったので、見てみましたが、キャスターの大越、「日本のエネルギー問題を考えたい」だの、「徐々にであるが状況は改善されている」などと言っていました。やはり、大越の言い方だと思っていたら、別の番組NHK NEWS WEBでは、何ら変わりがないという現実直視という姿勢で報道していました。こうして比べてみてみると、同じ取材ソースでもその報道姿勢が違うと違う番組になるということがよくわかります。大越の物言いは作為としか言いようがありません。

 あの原発だんじり男・田中知(さとる)東京大教授=原子力学会福島原発事故調査委員会委員長=は「カナダで除去装置が稼働しているが、福島事故のように大量の汚染水から除去するには非常に巨大な装置が必要になる。除去は非現実的で、仮に海洋放出するとしても、薄めて基準値以下に濃度を下げるしかない」(下記)と。要は薄めて流してしまえといっているのです。


▶<福島第1原発>東電 処理後汚染水を海に放出計画

毎日新聞 3月5日(火)21時50分配信

【放出に当たり、東電は汚染水から放射性物質を除去するために新型の浄化装置を導入し、今月中にも試運転する計画だ。しかし、海洋放出に、地元漁業関係者は反対一色で、汚染水問題の解決にはほど遠い】

【1日に東京都内で開かれた原子力規制委員会の検討会。たまり続ける汚染水への対応について、東電の担当者が「新浄化装置で処理する。海洋放出をする場合、関係者の理解を得たい」と説明】

【東電は現在、セシウム吸着装置を使い、汚染水から放射性セシウムなどを除去。その後、淡水と濃縮塩水に分離し、淡水は溶融燃料の冷却に再利用し、濃縮塩水をタンクで貯蔵している】

【しかし、これまでに検出された放射性物質63種類のうち、設計上は62種類を除去する能力を持つが、放射性トリチウムは技術的に分離できない。汚染水などのトリチウムの濃度は、1立方センチあたり約1300ベクレル。国の排出基準値の同60ベクレルを超えていて、規制委はアルプスでの処理後も濃縮塩水を敷地内に貯蔵するよう求めた】


▶同じNHK ですが、全くニュアンスが違います。

地上波のほう、「大越キャスターが見た 福島第一原発の今」(ニュースウォッチ9)での大越の楽天的報道-東電寄りの報道姿勢には作為を感じます。それに比べNHK NEWS WEB 24 の報道のほうが現実直視です。

*福島第一原発はいま… NHKが単独取材

NHK NEWS WEB 24 2013.3.6.

*ニュースウォッチ9 大越キャスターが見た 福島第一原発の今

▶密着!福島第一原発 知られざる廃炉への道

NHK・サイエンスZERO 2013.3.3.

【サイエンスZEROは、これまでなかなか伝えられてこなかった現場の過酷な状況に密着。そこで見たのは、複雑怪奇に入り組んだ大量のがれきと、一進一退を繰り返す技術者たちの戦いでした。いわく「史上最も難しい、片づけ作業」。その内実に迫ります】

▶質問なるほドリ:トリチウムってどんな物質?=回答・奥山智己

毎日新聞 2013年03月06日 東京朝刊

【 ◇放射性水素の同位体 「安全」でも情報公開必要

 Q 水素の兄弟のような関係なの?

A その通りです。通常の水素の原子核は陽子(ようし)1個で構成されていますが、トリチウムは陽子1個と中性子2個でできています。質量は水素の3倍。三重(さんじゅう)水素とも呼ばれています】

【A トリチウムの99%はトリチウム水という液体で存在し、空気中の水蒸気や雨水などに含まれています。水と同じような性質で、水から分離するのが非常に困難です】


▶東電の和解対応は不誠実 文科省が改善要請

毎日新聞 2013年03月05日 20時16分

【文科省によると、和解を仲介する政府の「原子力損害賠償紛争解決センター」が12年に受けた電話の問い合わせ1万2364件のうち、33%は東電の対応への不満や要望だった。「文科省の審査会が賠償基準を示した中間指針に具体例の記載のない損害について、賠償に応じてくれない」との苦情が多いという。また、住民がセンターに仲介を申し立てると、その他の内容に争いがないはずの交渉も拒否する例が複数あったという。センターはそのつど東電に是正を求めているという】

▶福島健康調査:規制委提言「国が責任持ち継続支援を」

毎日新聞 2013年03月06日 13時03分

【原子力規制委員会は6日、東京電力福島第1原発事故を受け、福島県が全県民に実施している県民健康管理調査のあり方について「国が責任を持って継続的な支援を行う必要がある」などとする提言をまとめた。現在の調査は「被ばく線量の把握が一部にとどまっている」と指摘。放射線量が高い地域では、個人線量計で住民一人一人の被ばく線量を継続的に実測し、記録を残すべきだとした】

 当たり前、当然のことを提言しています。つまり、これまでの山下俊一ら福島県、福島県立医大、福島県民健康管理調査の検討委員会の行いを認められないといっているのです。

▶福島第1原発事故 県健康管理調査の検討委、疾病の防止を目的に 県弁護士会・本田会長に聞く/福島

毎日新聞 2013年03月05日 地方版

【県は2月、委員の人選や「不安の解消」を掲げた目的を見直す方針を表明した。検討委を巡っては、約1年半にわたる秘密会の開催や、議事録からの内部被ばくに関する記述の削除などが発覚。さらに県弁護士会が昨年12月、「抜本的改革を求める」として委員の推薦を拒否したことで、県は見直しに追い込まれた】

 以下は、県弁護士会本田会長の言。

◆県は「個人情報保護の観点から専門的に助言してほしい」として推薦を求めてきた。調査のあり方を改める意思が見られない。これでは「弁護士が委員に入ったから大丈夫だ」とアリバイ的に利用されかねない

◆現在は被ばくについて寛容な専門家だけを集めている。しかし健康被害は時間がたたなければ分からず、いろんな学説がある。影響が出る可能性を前提に調査しなければ県民も納得できない。そのためにはマスコミや市民、被ばくについて慎重な見解を持つ専門家ら、もっと広い範囲から委員を募り、見える形で議論を進めるべきだ。決めるのは県民なのだから


▶原子力安全基盤機構の時限爆弾

河野太郎ブログごまめの歯ぎしり2013年02月28日 21:29

【2003年に設立された組織だが、この組織の職員の年齢構成を見るとかなり奇異な感じがする】

【今後の4年間で常勤職員の4分の1近く、非常勤(検査等を担当する者が多い)の半数以上が退職することになる】

【きちんと技術が伝承されるかどうかも不明だし、そもそもなぜこんな年齢構成になっているのか、納得できない点が多い】

▶特集ワイド:安倍政権は猫かぶり 外交発展に手腕──元衆院議長・河野洋平氏に聞く

毎日新聞 2013年03月05日 東京夕刊

【高い支持率の理由は三つ。一つは経済で、株高・円安という数字で見える変化が好感されています。2点目は野党が非力で、期待できないという見方が安倍政権支持を支えています。3点目は安倍首相が「中国、韓国を刺激すべきではない」という米国の忠告を守っていること。安倍氏は不本意かもしれませんが、自分のやりたいことを抑制していることが支持につながっているのでしょう】

【河野氏 今の政策が野党時代に相当磨き上げた政策とは思えず、以前の政策と同じようです。例えば財政出動。公共事業に予算を付ければどのくらいの即効性があるのかは、自民党は何十年もの経験があるのでよく分かる。だから公共事業への対応は手際はいいのですが、効果は限定的ではないでしょうか】

【河野氏 安倍政権は「参院選まで安倍カラーは出しません」と言っています。参院選まで「猫をかぶる」とあからさまに言っているわけですよ。これを聞いた有権者が怒ったり、不安を感じたりしないのが不思議です。怒らない理由は、民主党政権が悪すぎたということ。今の政権は実に不誠実でおかしいけれど「今までよりはまだまし」という感じなのではないでしょうか。ここに日本の政治の危うさ、悲しさがあります】

【河野氏 あれだけの事故を起こし、大勢の人々が古里に帰れない。こんな不条理な事態をそのままにして、原発を再稼働するのはおかしい(中略)放射性廃棄物の問題はまったく解決されていません。たまっていく廃棄物をどうするかという指針も目標もありません】

【──保守主義者でも太平洋戦争を経験した政治家にはアジアに対する関心、思いやりがあったと思うのですが。
 河野氏 同感です。思いやりというよりも率直に「反省」がありました。1977年、マニラで福田赳夫首相(当時)が演説した「福田ドクトリン」が日本外交にとって非常に重要なんです。「日本は二度と軍事大国とはならない」と宣言しました。それまでのアジア外交の基本的な考えの底流にあった「日本とアジア」という意識を、「アジアの中の日本」に転換した。それが今は「日本とアジア」に戻ってしまいました】

【河野氏 (略)最近の若い政治家の発言には歴史をきちんと勉強していないのではと思うようになりました】

【河野氏 何かを変えたいんですね。でも今の憲法によって不自由な生活を強いられている人はいません。憲法は「変えるしかない」という状況になってから改正すればいい。いつでも改正できる状況にしておくことに政治的なエネルギーを費やすのではなく、ほかにもっとやらなければならないことが今の日本にはたくさんあります】

 こういう方をリベラルとでもいうのでしょうか。それとも良心的保守派とでも。正鵠です。


▶原発新安全基準:知事、骨子を評価 「安全性の担保になる」/鹿児島

毎日新聞 2013年03月05日 地方版

【原子力規制委員会が示した原発の新安全基準(骨子)について、伊藤祐一郎知事は4日「(再稼働に必要な条件として従来挙げてきた)安全性の担保がなされようとしている、と考えている」と評価した】

 早く動かしたいという下心が見えてきたということでしょう。

 逆に言えば、今後「原発新安全基準」をどう見るかで各首長の原発に対するスタンスが「見える化」できるということです。まあ、それを待つまでもないことですが。

▶鹿児島・南大隅町長に収賄の疑い 背景に高レベル放射性廃棄物の最終処分 ―蠢く原子力ムラ

ブログ「Hunter」2013年3月 1日 09:35 

 かごしま反原発連合有志よ

【背景にあるのは、「原子力発電環境整備機構」(ニューモ)が進める「核のごみ」=高レベル放射性廃棄物の最終処分地問題。町長の収賄疑惑で原子力ムラの暗躍】とのことです。


▶TPP:交渉参加での日米事前協議 自動車「例外」検討

毎日新聞 2013年03月05日 21時00分

【米国が輸入車にかけている関税の撤廃までの期間を、5~10年の猶予期間を設けた米国と韓国との自由貿易協定(FTA)より長く設定する方向で両国政府が最終調整していることが5日、分かった。日本は輸入車の安全審査を簡素化する措置の適用範囲も現行の2.5倍に拡大する。日本車に米国内でのシェアを奪われることを警戒する米自動車業界が日本のTPP参加に反対していることに配慮。日本は自動車分野で譲歩をすることで、コメなど農産品分野での関税維持を目指す方針】

【事前協議で米側は自動車業界の意向を踏まえ、現在、乗用車に2・5%、トラックに25%掛けている関税を当面維持したい意向を日本に伝達。2月下旬の日米首脳会談後の共同声明でも、日本のTPP交渉参加に関連し、両国政府が自動車分野について「残された懸案事項に対処する」と明記】

▶TPP:自動車「例外」 農産物認めさせる狙いも不透明

毎日新聞 2013年03月05日 21時37分(最終更新 03月05日 23時28分)

【米側の最大関心事の自動車分野で譲歩する代わりに、日本が「聖域」とするコメなど重要農産品で関税撤廃の「例外」を認めてもらうシナリオだが、政府の思惑通りに進むかは不透明】

【「国内農業も大事だが、米国の自動車関税がいつまでも撤廃されないなら、何のためのTPP参加か」(大手自動車メーカー幹部)。日本の譲歩に対し、日本の自動車業界は失望感を隠せない】

「何のためのTPP参加か」と大手自動車メーカー幹部が嘆いているようですが、間抜けもここまで行くとおめでたいです。TPPは、「アメリカのアメリカによるアメリカのための商取引ルール」だということぐらい、初めからわかっていることです。


▶オスプレイ、岩国基地へ=本土低空飛行訓練初実施―四国、紀伊半島で・米海兵隊

時事通信 3月6日(水)6時5分配信

【米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイ3機が6日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から海兵隊岩国基地(山口県岩国市)に向かう。同基地を拠点に8日までの3日間、低空飛行訓練を四国―紀伊半島に設定された「オレンジルート」で行う。日本本土での低空飛行訓練は初めて】

▶地震:沖永良部島で震度4=午前5時32分

毎日新聞 2013年03月06日 06時15分

北は千島列島から、南は西南諸島までの弧、活動期です。

▶中国全人代:温首相、引退前に無念にじむ…活動報告

毎日新聞 2013年03月05日 20時12分(最終更新 03月05日 20時39分)

【「権力が過度に集中し、制約を受けていないという状況に対し、制度面から是正する」。壇上の温氏が強い口調で政治体制改革の決意を示しても、拍手はなかった】

【貧富の格差拡大や官僚の腐敗など「経済・社会の発展に多くの矛盾と問題が存在していることを我々ははっきりと認識している」と述べ、改革が道半ばであることを率直に認めた】

【汚職などの規律違反で処分された官僚は昨年は約16万人】

 この国も、いったい何を考え、どこへ行こうとしているのでしょうか。社会主義国のなかでの市場経済──訳が分かりません。昔、「社会帝国主義」であるとして、中国がソ連を批判しましたが、今は自分たちがそう呼ばれる資格は十二分にあります。赤い帝国主義+党官僚主義──だいぶ昔、中国指導部を指し、「オリエンタルスターリニズム」といった人がいましたが、それより段々質が悪くなってきた感があります。