原発通信412号                                  2013/03/12

「1本1本の花を引き抜くことができても春の季節の到来を止めることはできない」

 東日本大震災、それに続く福島第一原発事故から2年という今、9日から11日までの3日間連続行動に参加してきました。一言感想を言わせていただけば、だんだん「悲壮感」が漂い始めてきたということです。私と言えば、そういうことはある意味「想定内」です。でなければ、これまで何の得があるのかと言われながらも、「異議申し立て」などしてきませんでした。許せないもの、そんなことを見逃していいのかという、ただそれだけです。何も「全世界を獲得するため」だの、「新たな権力の樹立を」などということでもありません。それを「小市民的だ」というならば、「そう市民的です」と言わざるを得ません。でも、そうした人の集まりがこの社会です。

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3.11さようなら原発講演会。後藤正文氏(左)と坂本龍一氏(IWJ報道から)

 3.9から3.11の大井町での「つながろうフクシマ!さようなら原発講演会」まで、3日連続行動に参加してきました。

 大井町での講演会は想像以上に人が集まり定刻に行ったら「入れません」と。しかし、そこは、ずうずうしい中年世代です。さっとあいたエレベーターに乗り込み会場へ。何が何だかわからないまま(?)、会場内へ。運よく最後まで聞くことができました。途中退席する人に席を譲っていただけるというラッキーもありました。

 この3日連続行動で発言し続けた落合恵子さん──彼女はこうして仲間がいるところでは安心するが、一歩外へ出ると「まだ(反・脱)原発やっているの?」との声に出会うと。また、後藤正文さんは、「情報を持ってない人、関心のない人にどう伝えるのか考えなきゃいけない」と。若い人たちとの共通する「言語」を持ち合わせていない現実をどう変えるのかという問いは大きいです。後藤さんが言うには、若い世代から見るとデモには抵抗感があると。

 坂本龍一さんが「昔の私たちの世代のデモ(ゲバルト)の影響?」と聞くと、そんなことではなく、要は化粧っ毛がなくダサいということのようです。「平日なのに、あの人たちはいったい何をして(生活して)いる人?」…。う~ん、確かに。素朴な疑問です。いずれにしても、ここに参加していない人々にどう伝えていくのかが問われているといいます。まったくその通りです。

 内橋克人さんも発言しました。最初に米国の詩人のアーサー・ビナードの言葉を紹介。彼曰く、なぜ日本人は「原子炉」というのかと。「炉」という言葉は──暖炉、囲炉裏端をイメージする。しかし、諸外国では「核分裂発生装置」と言っている。言葉を取り戻そう。言われてみれば確かにそうです。

ためしにネットで引いてみました。「原子炉」→「nuclear reactor」=【原子核反応装置】とあります。私たちが「炉」からイメージする囲炉裏端も、ペチカでもありません。核分裂を起こす装置なのです。内橋さんは、私たちは言葉を取り戻し、円安だ、株高だと浮かれていてはいけないと警告を発していました。そして最後に、昨年のオキュパイトウォール街運動の時に言われた「1本1本の花を引き抜くことができても春の季節の到来を止めることはできない」という言葉を紹介されました。希望としたいです。

 澤地久枝さんは、「鎌田慧さんからいろいろ頼まれたが、それはとても20分では話しきれない」としつつ、自分の敗戦体験を語ります。国家とは突然なくなるものであり、国が言うことも変わるものだ、そして世代の責任ということを言っていました。

 福島大の清水修二さんは、原発は空間的に人々を引き裂くだけではなく、人々の心を引き裂くと言います。福島で起きている悲しい「対立」を報告していました。福島から避難=逃亡という心理的対立を生じさせていると。

 大江健三郎さんは、30分前に大井町についたはいいが、会場がどこかを聞くことしないがゆえに、迷子になり「遅刻」。原発には倫理が欠けていること、私たちに問われていることは次世代=未来に対する責任だと話しました。

 最後は、吉岡斉さんです。「自分は穏やかな物言いを」売りにしていると言っていました。ソフトランディング──することによって脱原発をと。「皮肉な言い方が好き」と本人は言われていましたが参加者に通じたでしょうか、心配です。

  落合恵子さんが言われていましたが、9日の集会の呼びかけ人でいちばん若いのが坂本龍一さん61歳です。確かに悲壮感が漂うというものです。3.11をたんに記念日とするのではなく新たな出発点としたいと強調していました。

 「復興応援ソング」=「花は咲く」がNHKで毎日のように流れています。私は、この曲が流れると、のんきに聞いていられなくなるのです。途中のフレーズ、「♪~私は何を残したのだろ~」──きつい問いです。少なくとも私は、とてもにこやかにはこの歌を聴けませんし、歌えません。

*3月11日の集会の様子をIWJが報道しています。


▶原発事故時:国主導で放射線監視 規制委方針

毎日新聞 2013年03月11日 19時52分(最終更新 03月11日 22時44分)

【原子力規制委員会の有識者会合は11日、原発事故時に放射線量の監視などを国が主導するモニタリングセンターを設置する方針を固めた。事業者からの事故通報を受け、直ちに現地に設置し、放射線量の測定やデータ集約、分析、公表を統括する。規制委はこれを盛り込んだ原子力災害対策指針の再改定案を3月中に示す。
 従来、放射線量のモニタリングは、原発の立地道府県と事業者が主体で実施することになっている。しかし、東京電力福島第1原発事故で福島県が測定データの回収に手間取ったり、消去したりする問題が発覚。東電や国のデータも住民避難などに十分活用できず、国が前面に出て調整を図る方針に転換した】

▶原発事故:ゲノム調査見送り 環境省

毎日新聞 2013年03月11日 18時54分(最終更新 03月11日 19時14分)

【環境省は11日、原発事故による被ばくの影響を調べるため、13年度から始める予定だった福島県民対象のゲノム(全遺伝情報)調査を見送ることを明らかにした。「技術的、倫理的に問題が多い」と専門家から批判されていた】

【ゲノムの解読過程で機械的な誤りが生じるため、専門家からは「親子間に違いがあったとしても放射線の影響なのか、他の要因なのかも区別できない」と妥当性を疑問視する声が続出。さらに、実子ではなかったことが解析で明らかになった場合の倫理的な課題も指摘されていた】

【13年度予算案の概算要求に11億9200万円を計上】

 何のことはない、この金額が魅力だということです。

▶原子力規制委:信頼される組織となるよう約束…委員長訓示

毎日新聞 2013年03月11日 11時33分(最終更新 03月11日 12時46分)

【田中俊一委員長は東京電力福島第1原発事故から2年を迎えた11日、事務局の原子力規制庁の職員約300人に「原発事故の罪がいかに重いか。二度と事故を起こさないよう、信頼される組織となるよう約束したい」と訓示】

「きょうは、事故の反省に立って新設された規制委の原点を確認する日。私たちの取り組みにゴールはない。事故を起こさず、国民の健康を守る重い責任に誇りを持ちたい」──本心だと信じたいのですが、裏切られるというのが世の常。まっとうなことを言う人ほど、裏があるということ、幾度となく見てきました。そういう私はひねくれものでしょうか。でも、権力を持たない私たちにできることは、言ったことは守れと言い続けることです。


▶早期帰還へ環境整備推進=核燃料処理は継続―安倍首相

時事通信 3月11日(月)16時51分配信

【首相は、東京電力福島第1原発事故で避難した周辺住民の帰還について「夏ごろをめどに、いつまでに道路や水道が復旧し、医療・福祉の体制が整い、住めるようになるかなど、早期帰還に向けた道筋を明らかにしていく」と】

【一方、原発の使用済み核燃料処理に関し、首相は高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)や青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場を挙げて「わが国は世界でも高い核燃料サイクル技術を有している」と指摘。その上で「世界各国と連携を図りながら引き続き取り組んでいく」と述べ、継続する考えを示した】

 言ったことは責任を持ってやっていただきたいものです。できるものなら……。

▶安倍首相:中間貯蔵施設、工程表通りに建設

毎日新聞 2013年03月11日 19時34分(最終更新 03月11日 21時35分)

【安倍晋三首相は11日、東日本大震災2年にあたり首相官邸で記者会見し、福島県の除染で出る放射性廃棄物の中間貯蔵施設について「15年1月から汚染土壌を搬入できるように地元の理解を得ていきたい」と述べ、11年10月に政府が公表した工程表に従って建設を進める考えを示した】

 同じことが沖縄普天間、辺野古でもということです。自民党の連中のほうが、懐柔策が上手ということか。結果は同じなのに…。

▶除染技術、国が認証…自治体に選択肢・地域振興

読売新聞 3月12日(火)7時33分配信

 こういう地方分権はいけません。

【民間企業の優れた除染技術を国が認証することで、自治体が効率のいい除染方法を選べるようにするほか、除染で伐採した木材を木質バイオマス発電に活用するなど、地域振興にもつなげることが柱だ。3月中に決定し、2013年度から実施する】

【新たな方針は、1月に設置した「除染・復興加速のためのタスクフォース(作業部会)」が策定作業にあたっている】

【除染技術の認証システムは、国が科学的知見や費用対効果を踏まえて審査するもので、除染に対する知識を持つ職員が少ない市町村でも、目的や放射線量に応じて新たな技術を導入しやすくする狙いがある。一方、企業や研究機関にとっては国の認証システムを利用して、新規参入しやすくすることで、新たな技術の開発を促す】

「タスクフォース」などと、なじみのない言葉を使われると(少なくとも私は日常会話の中では使ったことがありません)、もっともらしく聞こえますが、みなようわからんから、知っている人に任せてやっていただきましょうと言っていると聞こえるのですが、違うのでしょうか。多くの人はわからない、知らないことを、「これでいいのです」と言われると、「そんなものかなあ」と思い、「お代は云々」と言われ、請求書通りに支払う羽目になるのです。


▶脱原発法案 再提出 20年目標 生活など3党、参院に

東京新聞2013年3月12日 朝刊

 3.10国会前行動で「宣言」していました。

【生活の党、みどりの風、社民党の野党三党は十一日、参院に「脱原発基本法案」を共同提出】

【法案は、脱原発を「できれば二〇二〇年を目標として、遅くとも二五年までに実現されなければならない」と掲げ、発送電分離や原発の新増設の禁止を盛り込んだ。
 三党と無所属の計十八人が発議者と賛成者に名を連ねたほか、民主党の四人、みんなの党の四人も賛同】

*生活の党の発表


▶原発要員計画が破綻 福島第一、半数が偽装請負の疑い

朝日新聞デジタル 3月12日(火)5時54分配信

【政府と東電は昨年7月にまとめた工程表で、年間最大1万2千人の作業員が必要と試算し、2016年までは「不足は生じない見込み」と明記。福島第一で働く際に必要な放射線業務従事者の指定を昨年5月までに受けた2万4300人のうち、高線量を浴びた人を除く2万3300人を「再び従事いただける可能性のより高い母集団」と位置づけ、要員確保は十分可能と説明していた。

 ところが東電が昨年9~10月に作業員④千人を対象にしたアンケートで、「作業指示している会社と給料を支給している会社は同じか」との質問に47%が「違う」と回答。下請けが連なる多重請負構造の中で偽装請負が横行している実態が判明し、経済産業省は2万3300人を「母集団」とみるのは困難と判断して6月までに工程表を見直す方針を固めた。被曝(ひばく)記録より高い線量を浴びた人が多数いることも発覚し、「母集団」の根拠は揺らいでいる】

 こんなこと、これまでの動きをみている方にとっては「想定内」のこと。デタラメさもここに極まる。東電の「見込み」を真に受けるほうがどうかしています。喜劇は二度までは猶予があるそうです。三度目は…。

▶特別リポート:福島原発、廃炉までの「長い戦い」

ロイター 3月11日(月)13時35分配信

【震災から2年、周辺地域の処理作業は、場当たり的だ。作業の大半は関連分野の経験がほとんどない建設業者が請け負っている。原発近くの市町村は、処理作業が計画通りに進んでいないと指摘。作業員が運び出した汚染土や廃棄物は、政府が最終処分場所が決められない中、福島県内の至るところに積み上げられている。社団法人日本経済研究センターの試算では、福島県内の原発近隣地域の汚染除去作業費用だけでも、最大6000億ドルに達する】

【建設後約40年の福島第1原発の閉鎖は、それ自体が類のない挑戦だ。東電と政府が示す廃炉に向けた行程表では、今年後半に7つの貯蔵プールのうち最も破損している④号機プールから使用済み燃料の取り出しに着手する。2021年からは全号機のプールから溶融燃料の取り出しを開始し、30-40年後に廃炉を完了する計画】

 何も目新しいことが書かれているわけではありません。要は、「獲得目標」は「汚染除去作業費用だけでも、最大6000億ドル」ということだけです。除染をしたがその結果を問うことはないのです。「除染はしました、でも線量は下がらない、難しいものです」というだけの話。それを指摘するとそのうち、「しつっこい人ね」と言われるのがオチでしょう。落合恵子さんが三日連続で言っていたこと、集会の外に出れば「まだ(反・脱)原発やっているの?」と言われるという話。それが原子力マフィアの思うツボということです。


▶国と東電相手に集団提訴=原発避難者ら1650人―請求額53億円以上【震災2年】

時事通信 3月11日(月)11時54分配信

【東京電力福島第1原発事故で避難や低線量被ばくを余儀なくされたとして、東日本大震災から2年となった11日、周辺住民が国と東電を相手に、慰謝料と原状回復を求め、福島地裁、同地裁いわき支部、千葉、東京両地裁にそれぞれ集団訴訟を起こした。原告は4地裁・支部で計1650人、請求額は少なくとも53億6000万円以上になる見通し。弁護団によると、原発事故で国を相手とした集団提訴は初めて】

▶避難者帰還へ線量ごとに安全指針…政府が年内に

読売新聞 3月11日(月)4時14分配信

【政府は2014年春にも、避難指示区域のうち年間積算線量が20ミリ・シーベルト以下の「避難指示解除準備区域」への帰還を認める方針だ。避難指示が解除されれば住民は帰還できるが、「1ミリ・シーベルトでないと安全ではなく、帰れないという感覚が被災者に生じている」(政府関係者)のが現状だ】

「帰れないという感覚」の問題にされてしまうのです。好き・嫌いと同じなのです。恋愛に権力・行政が介入できないと同じで、したがって、そこで不利益が生じても、すべては自己責任ということにされてしまう(する)ということです。「結果は個人に」ということなのです。

(編集者註:ちなみにわずか2年前には、日本における人為的な公衆被曝の基準は年間1ミリ・シーベルトだったわけですから、その20倍もの高線量に「不安」を抱くのは、基準を尊重する人間としては当然のことだと思います)


▶大間原発:追加調査へ…断層の有無、1年かけ Jパワー

毎日新聞 2013年03月11日 20時58分(最終更新 03月11日 21時37分)

 何年かかろうと、時間が問題なのではありません。「科学的根拠」が問題なのです。そんなもの『起きてみて初めて分かった』ということが、3.11でわかったわけですが、それを再確認するまでは、明日ではないだろうということを「確信」して言っているだけですから。その費用は、自分が持つわけではないので、気楽なものです。

▶敦賀原発:「活断層」原電が再反論の機会要求

毎日新聞 2013年03月11日 20時07分(最終更新 03月11日 20時40分)

【文書によると、「当社のデータに基づく立証を無視した。科学的議論には程遠く、公正な判断と言えない。審議の進め方も一方的」などと反発。原電が実施中の追加調査が終わる6月末まで結論を出さないように求めた】

 6月までには、形勢挽回するからということでしょう。。科学とは何か──という根本的な問いはどうでもいいのです。いかに「科学の装い」をつくれるかだけなのです。

▶浜岡原発:5号機プール内から異物

毎日新聞 2013年03月11日 21時04分

【燃料棒を収納する燃料集合体の内部に長さ1センチ程度のひも状の異物を確認したと発表】

 こういう話はもう何度も出てきます。要は「完全・無垢なもの」などつくれないということなのです。なら、どうするか──核など使わないということです。

▶福島第1原発:2号機の小窓ふさぐ

毎日新聞 2013年03月11日 20時03分(最終更新 03月11日 22時57分)

【東京電力は11日、福島第1原発2号機の原子炉建屋上部で、開けっ放しになっていた小窓「ブローアウトパネル」(横6メートル、縦4.3メートル)を金属のふたでふさぐ作業を終えたと発表した。閉止によって放射性物質の外部放出がどの程度抑制できるのかを今後調べる】

【2号機からは現在、最大で毎時200万ベクレルの放射性物質が外部に放出されている】

 よくやってくれています。でも、毎時200万ベクレル、1日800万ベクレルもの放射性物質がいまも出続けている。しかもその値になるまでには、もっと大量の物質が漏れつづけていました。

▶関西電力:消費者委、値上げ幅「さらに圧縮」

毎日新聞 2013年03月11日 22時51分(最終更新 03月11日 22時59分)

【内閣府の消費者委員会は11日、役員報酬や一般社員給与など人件費削減や、日本原電に支払っている購入電力料の減額などで、値上げ幅をさらに圧縮する方向で検討するとの考えを示した。今月6日まで開かれた経済産業省の有識者会議は、関電が申請した平均11.88%の値上げ幅を10%台に圧縮することを求めており、関電は更なる経営努力を迫られそうだ】

 そりゃそうでしょう。年間何時間働いているか知りませんが、削って年俸4000万円ですから。

▶放射性物質:食品産地気にする人の4割が意識 消費者庁

毎日新聞 2013年03月11日 22時42分(最終更新 03月11日 23時06分)

【食品を買う時に産地を気にする人のうち、4割が「放射性物質が含まれていない食品を買いたいから」と考えていることが11日、消費者庁が実施した意識調査で分かった】

 前にも書きましたが、「加工品」(例えばお刺身──包丁を入れれば加工品です)には、産地表示の「義務」はありません。しかし、スーパーへ行ってみてください。少なくとも東急ストア、サミットストアなどでは、3.11以後、生産地表示がされています。それだけ皆さん気にかけているということです。私の姉などもそうです。「自分はいいけど、孫には食べさせたくない…」と、常々言っております。