原発通信450号                                  2013/05/10

「『花は咲く』を毛嫌いするような人物は反社会性人格障害や敵性思想傾向を疑われる」(辺見庸さん)

 本通信でも何度か、NHKで流されている「花は咲く」について記したことがあります。あの歌詞のなかに【…私は何を残してきたんだろう】という部分があるのですが、その心情を思うと(自分も含めてです)とてもではありませんが、ノー天気に、笑みを浮かべて、まして皆で合唱するなんてできません。そういう心性を私は持ち合わせていません。

 そう常々感じていたら、昨日の毎日新聞夕刊に作家の辺見庸さんが、あの歌は嫌いだという論を展開されていました。辺見さんは、マスコミがこれでもかという感じで押し付けてくることに危機感を持っていられます。(下記参照)

「ファシズムはむしろ普通の職場、ルーティンワーク(日々の作業)の中にある。誰に指示されたわけでもないのに、自分の考えのない人びとが、どこからか文句が来るのが嫌だと、個人の表現や動きをしばりにかかるんです」と辺見さんは喝破します。

 そう、感情の押し売りといいますか、ほれ、こんなに感動的なことですとか、涙なくしては…とか、ここは空気を読んで皆に合わせなければという風潮が一種の圧力を持って強力に登場していると思います。

 先日も一仕事が終わって、知人とコーヒーを飲みながらの話の中で、「感情労働」とやらが繁盛しているということが話題になりました。「感情労働」とは、自分の感情を制御し、相手の感情に合わせて対応することで、対価を得る労働。看護、介護職や、サービス業――マクドナルドの「バーガーとスマイルひとつ」や、この時代でも最高益を上げているテーマパークなどです。また苦情処理窓口業務などもそうでしょう。心さえもビジネスになってきている昨今です。

 そして、辺見さんは「皆で助け合って頑張ろう、ニッポンチャチャチャでやろうよと」という風潮に警鐘を鳴らしています。

「昔は気持ち悪いものは気持ち悪いと言えたんですよ。ところが今は『花は咲く』を毛嫌いするような人物は反社会性人格障害や敵性思想傾向を疑われ、それとなく所属組織や社会から監視されてしまうようなムードがあるんじゃないの? 政府、当局が押しつける政策や東京スカイツリー、六本木ヒルズ10周年といったお祭り騒ぎを疑う声だって、ほとんど出てこない。それが今のファシズムの特徴です」と辺見さんは言います。

「集合的なセンチメント(感情)に流されず、個人が直感、洞察力をどれだけ鍛えられるかにかかっている。集団としてどうこうではないと思うね」と、辺見さんの結論は、昨日紹介した高村薫さんと同じです。一人ひとりがリテラシーを鍛え、洞察力を持たなければなりません。

 歌ついでに言えば、もうひとつ、1曲、どうしても理解できない曲・歌があるのです。少し前にはやった「千の風」です。あの朗々と歌う若手テナー歌手が人気を博しましたが、そんなことはどうでもいいのですが、あの歌、みんなで楽しく歌う歌なのでしょうか。私にはそうは思えません。あの詩、初めて知った時、なぜキリスト教社会の米国でこの詩が生まれたのかと思ったのです。アニミズムそのものですから。そうしたら、どうも先住民の人たちの詩だということを知り、納得しました。一人静かに口ずさむのはいいのですが、皆で、笑顔で、歌い上げるというムードにはどうしてもなじめません。「花は咲く」も同様です。


▶大飯原発 大量の貝除去で出力低下へ 

NHKTV5月9日 19時2分

【国内で唯一運転している福井県の大飯原子力発電所の3号機で、冷却装置の内部を流れる海水の量が減っていることから、関西電力は、装置の内部に大量の貝などが付着したことが原因とみて、貝などを取り除くために、出力を一時的に20%ほど下げて運転する】

【3号機では発電用のタービンを回す蒸気を冷やして水に戻す「復水器」と呼ばれる冷却装置で、内部を流れる海水の量が去年12月ごろから減り始め、通常の量より20%ほど少なくなっているということです】

▶原子力規制委:東北電の反論「根拠ない」

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【原子力規制委員会の有識者調査団は9日、東北電力東通原発(青森県)の敷地内にある断層群について「活断層ではない」とする東北電の反論を受け入れない方針を決めた】

 ブレずに最後まで貫徹してほしいです。


▶原発プロパガンダ:秋庭原子力委員、NPO理事長時も電力業界から資金 参院委で認める

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【内閣府原子力委員会の秋庭悦子委員(64)が顧問を務めるNPO法人「あすかエネルギーフォーラム」(あすか)が東日本大震災以降、電力業界から多額の支援を受けるなどしていた問題で、秋庭氏は9日の参議院環境委員会の質疑で、自身が理事長を務めた2010年1月以前にも、あすかが電気事業連合会や東京電力などから資金提供を受けていたことを明らかにした。資金提供が秋庭氏の理事長時代から続いていたことが判明し、秋庭氏と電力業界との密接な関係が浮き彫りになった】

▶原子力委員と密接NPO 核ごみ広報下請け独占

東京新聞2013年5月10日 07時11分

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【経済産業省資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO(ニューモ))が、使用済み核燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題をめぐる広報事業で、不明朗な契約を続けていたことが分かった】

【その結果、事業の元請けとなる広告代理店などは、入札や企画競争などで決められ、年度によって変わっていたものの、ワークショップの企画・運営に協力する下請け団体はいつも同じという不明朗な状況が続いていた】

【両NPOの事業報告書などによると、ワークショップの下請けにより毎年数百万円の利益が出て、団体の重要な活動資金源になっているとみられる。両NPOともに原発推進の総本山となってきた原子力委員会の元委員や委員を顧問に迎えている。元気ネットは元委員の松田美夜子氏(71)、あすかは現委員の秋庭悦子氏(64)がそれぞれ顧問を務めている】

【元気ネットの松田氏は「下請けが続いているのは公正な競争に勝った結果。同じレベルの仕事ができる団体があるなら引き継ぎたいが、国が育てようとしていない」と主張。あすかの秋庭氏は「NPO法人にも個別の信念がある。推進派の隠れみのだと指摘されるなら、もっと原発に肯定的な立場を明らかにしていきたい」と話した】

 これを開き直りと言わずしてなんといえばいいのでしょう。


▶福島第1原発:1号機のカバー新設へ

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【東京電力は9日、福島第1原発1号機の原子炉建屋全体を覆うカバーを解体し、新たなカバーを設置すると発表した。カバーに覆われ手つかずだった建屋上部のがれきの撤去を進め、2017年以降に使用済み核燃料プールから燃料を取り出す。東電は、カバーを外した際の周辺の空間放射線量の影響を試算し、「カバーを解体しても、影響はほとんどない」として、今年末にも解体を開始】

 このカバーできてからそう経っていないでしょう。今年は2013年、核燃料取り出しが2017年だそうです。4年間どうするのでしょうか。放射性物質は今での大気中に放出され続けているのですから。

▶福島第1原発事故 事故後の動向、GPSで 被ばく量解明に利用

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【原発周辺から避難する住民の動向を携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能を利用して明らかにしたと、東京大の早野龍五教授(物理学)が9日、発表した。これまでは聞き取り調査など記憶に頼っていた。客観データを利用することで、被ばく線量の解明に役立つという】

【GPSを活用したサービスを提供する「ゼンリンデータコム」が協力。福島県民の約0・7%に当たる約1万4000人分のデータについて、2011年3月10〜17日の位置情報を集計した】

 最近何かと話題になってきている「ビックデータ」というやつです。今までデータがなく不明とされていた点が明らかになればそれに越したことはないのですが、この早野龍吾教授、中川恵一らとつながりがあると言われているので、そのことが気になります。

▶福島第1原発事故 国会事故調資料、公開巡り協議

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【国会事故調が2011年12月から12年7月にかけて、政府や東電関係者約1100人に聞き取り調査をした報告書や、東電や各省庁から集めた資料などが対象。国会図書館は事故調設置法に規定がないことを理由に非公開扱いにしており、超党派の議連「原発ゼロの会」が今年2月、衆参両院議運委員長に公開規定を作るよう求めていた】

 「規定がないから非公開扱いにしていた」と言っています。この法律のことについてはよくわかりませんが、たとえば有害物、有毒物でもそれを取り締まる法律がないと言って使用されているということがあります。その論でいけば、法律がないから非公開というのは“変”と思うのは、法律に無知な私だけ? 法律をつくって非公開というのならわかるような気がするのですが、どうなのでしょうか。ましてや、この件に関しては毒物でも、東電や原子力マフィア以外には「害」は及ぼさないものです。まあ、そこがキモなのですが。

▶除染:磁石で効果、セシウムを6割減 山形大が発表、宮崎大と共同研究/山形

毎日新聞 2013年05月09日 地方版

【放射能汚染土に磁石をかざすことで、磁性を持つ土と一緒に放射性セシウムが半分ほど磁石に引っ付いてくることを、山形大理学部の岩田高広教授の研究チームが発見した。岩田教授が8日に記者会見で発表した。岩田教授は「こんな簡単な方法で放射性セシウムを検出できるとは盲点だった。除染の方法の一つとして活用できるかもしれない」と話している】

【福島県飯舘村で採取した放射性セシウムを含む土壌60グラムを、磁力の強い「ネオジム磁石」を使って磁性を持つ土12グラムを分離。その成分を分析した結果、土壌60グラムに含まれる放射性セシウム全体の約58%が取り込まれていることが分かった】

【宮崎大の松田達郎教授の研究チームとの共同研究で、日本アイソトープ協会の発行する専門誌「ラジオアイソトープス」に掲載予定】

 日本アイソトープ協会──原子力規制委員会の中村佳代子委員が所属していたところです。会長(代表理事)は原子力ムラの住民である有馬朗人(元東大総長)です。原発、核に関するものでカネになるものは何でもやる?

▶福島第1原発事故 茨城・高萩市、東電へ保留料金払う

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【東京電力福島第1原発事故の損害賠償を巡り、電気料金の支払いを保留していた茨城県高萩市が東電に約1000万円の電気料金を支払ったことが9日、分かった。同市は東電に対し、風評被害対策のテレビCM費用(約537万円)を賠償するよう要求。東電側が拒否したことから、高萩市は電気料金の支払いを保留していた】

 霞が関あたりから何かあったのではないでしょうか。「交付金を今後…」などと。わかりませんが、十分考えられることでしょう。


▶米国:安倍氏に懸念強め 歴史認識「米の利益損なう恐れ」 
 議会報告書で「国家主義者」

毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

【米議会調査局が1日付でまとめた報告書で、安倍晋三首相について「『ストロング・ナショナリスト(強硬な国家主義者)』として知られる」と記述し、歴史認識を巡る言動について「地域の関係を壊し、米国の利益を損なう恐れがある」と指摘していたことが8日、分かった】

【安倍首相について「戦時中の行動について日本が不当に批判を受けていると主張している集団と関係がある」と指摘。さらに「閣僚選定にも(歴史認識を巡る)考えが反映されているとみられ、国家主義者であることを主張している政治家たち何人かを選び、一部は極端な見方を持っている」と分析】

【1995年の村山富市首相(当時)の談話について、「侵略の定義は定まっていない」などと答弁。閣僚らの靖国参拝について「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」などと述べた。報告書はこうした発言について「日本と韓国、さらに他の(アジアの)国々との関係を悪化させるだろう」と指摘】

【菅義偉官房長官は9日の記者会見で「米議会の公式見解ではない」と強調した上で、安倍首相を「国家主義者」とした記述について「誤解に基づく」と指摘】

【米国からの批判が強まれば、安倍政権が歴史認識をめぐって孤立する予想外の展開を招く恐れもある。政府内では「首相に直接苦言できる人がいない」(政府関係者)という懸念の声も漏れ始めている】


▶息苦しさ漂う社会の「空気」 辺見庸さんに聞く

毎日新聞 2013年05月09日 東京夕刊

【◇今の日本は自己規制、ファシズムの国
「花は花は花は咲く」とNHKがよく流すせいで、嫌でも耳にするあの歌のことだ。「俺はあれが気持ち悪い。だってあの歌って(戦時中に隣組制度を啓発するために歌われた)『とんとんとんからりんと隣組』と一緒だよね。そう思って書いた部分を、編集者が『書き換えてほしい』って言う」

【「芸能タレントとテレビキャスターと政治家が我も我もと来て、撮影用に酒なんか飲んだりしてね。人々は涙を流して肩を組み、助け合ってます、復興してます、と。うそだよ。酒におぼれ、パチンコ行って、心がすさんで、何も信用できなくなってる人だって多い。PTSD(心的外傷後ストレス障害)ね。福島だって『花は咲く』どころじゃないんだよ。非人間的実相を歌で美化してごまかしている。被災者は耐え難い状況を耐えられると思わされてる」】

【「(略)80年代までは、そういう貧者が増えれば階級闘争が激しくなると思われていたけど、今は彼らがプロレタリアートとして組織化され立ち上がる予感は全くない。それどころか保守化してファシズムの担い手になっている。例えば橋下徹・大阪市長に拍手をし、近隣諸国との軍拡競争を支持する層の多くは非受益者、貧困者なんです」】

【「集合的なセンチメント(感情)に流されず、個人が直感、洞察力をどれだけ鍛えられるかにかかっている。集団としてどうこうではないと思うね」と辺見さん】

 最後の結論は、昨日紹介した高村薫さんと同じです。リテラシーを鍛え、洞察力を持たなければなりません。