原発通信467号                                  2013/06/06



冷戦の終焉と新たな脅威としての「温暖化問題」
(米本昌平さん)

 「冷戦の初期、アメリカのエリートたちは極端な合理主義を信奉し、眼前の事態をそのまま受け入れた上で、これを運用するための様々な理論を案出した」と、現在、科学史の米本昌平さん(総合研究大学院大教授)はいい、それが「最悪時、米ソ両陣営合わせて6万9千発の核弾頭を配備し、睨み合う異様な光景を出現」させたといいます。

 しかし、「1989年11月、ベルリンの壁が崩壊したことによりこれまでの核戦争への恐れは大幅に後退し、冷戦体制の大半が無用の長物」となりました。第二次世界大戦後、長らく続いた「米ソ核対立を前提にして組み立てられた戦後国際政治に突然、『脅威の空隙』」ができた。その空隙を埋めるものの必要性が迫られ、新たな脅威が必要とされ、それは「温暖化問題」だったと米本さんは言います。

 その点で「核」と「温暖化」の脅威は似ていますが、驚異の質が違うと言うのです。

 「冷戦時代、核の脅威が過剰に見積もられた結果、後世に大量の核弾頭と核廃棄物は残されたが、温暖化の脅威を少々大きく見積もったとしても、後世に残るのは、省エネ・公害防止の研究と投資である」とし、米本さんは「なんと幸いな脅威であろう」と言います。

 そしてまた、「実は地震研究が飛躍的に進んだのは、地下核実験監視の目的で、高精度の地震観測網が張り巡らされて以降である」とも。

 米本さんの主旨は、「戦争に主軸をおいた狭義の安全保障」から概念を拡大し、温暖化や巨大地震・津波の脅威に全知性を傾けることが我々の課題だということです。(毎日新聞2013年6月3日夕刊「パラダイムシフト――2100年への思考実験 第1部「核」なき社会 ポスト核抑止の安全保障概念を」)

◆大飯原発、「すべて新基準を満たす」のだそうです

 もうここまで言われると、返す言葉がなくなります。何も問題ない、すべて正常、地震が起きようが津波がや竜巻が来ようが、わが原発はびくともしないと言い張るのですから。

 先日、米オクラホマで発生した竜巻は秒速80メートルですが、それ以上のものが来てもへっちゃらと言うのですから。不可知なるものは彼らにはまったくないということなのでしょう。恐れ入谷の鬼子母神です。


▼原子力マフィア 今日のNo Problem!!

▶関電:「大飯原発は新基準満たす」

毎日新聞 2013年06月05日 22時26分(最終更新 06月06日 00時06分)

【関電は、原発敷地周辺の活断層「熊川断層」を調査した結果、従来より西端が4キロ短かったと説明。東にある二つの活断層からより離れ、三つの活断層は連動しないという主張が裏付けられたとした】

【一方で、規制委の要請に応じて3連動を想定した揺れを計算。6日の規制委の会合で試算結果を示す

ほかに、秒速100メートルの竜巻の来襲にも、原子炉格納容器など重要施設の安全は保てると評価。海底地滑りなど、地震以外で起こる津波の高さを計算した結果、従来想定(2.85メートル)を下回り、浸水の恐れはないなどと結論】

▶成長戦略:素案に「原発活用」 自民、再稼働へ前のめり 規制委早期審査求める

毎日新聞 2013年06月06日 東京朝刊

【5日公表された成長戦略の素案では「安全性が確認された原発の活用」との項目が入った。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」を下支えするため、自民党内ではエネルギーの安定供給を優先する意見が台頭。原発再稼働に前向きな首相の意向や、地域経済の冷え込みを懸念する立地自治体の声も強まり、原発再稼働を目指す党内の動きが加速】

【「原子力規制委員会から次から次に要求が出てくるが、科学的に必要かどうかも議連で議論が必要だ」
自民党本部で5日開かれた電力安定供給推進議員連盟の会合で、会長の細田博之幹事長代行は規制委への不満をにじませた。議連は5月14日発足でメンバーは約90人。島根1区選出の細田氏や、青森3区選出の大島理森前副総裁ら原発立地県のベテラン議員が名を連ね、再稼働を推し進める中核組織】

【「不幸なのはどっち付かずで捨て置かれることだ」(高木毅衆院議員)】

 でも、ちょっと前には、専門家に任せておけと言っていたのでは?

*自民党電力安定供給推進議連 H25.5.23(No49)の会合の様子(動画)

中村裕之国会報告 自民党電力安定供給推進議連 H25.5.23(No49)

▶空間放射線量:マップ公表 解除準備区域で半減

毎日新聞 2013年06月05日 20時21分(最終更新 06月05日 20時54分)

【5日の定例会で、東京電力福島第1原発事故後に航空機で測定した空間放射線量マップを公表した。国が早期の住民帰還を目指している「避難指示解除準備区域」の平均空間線量は今年3月時点で毎時1.1マイクロシーベルトで、データの比較が可能な2011年11月時点と比べると半減】

【マップの対象エリアは福島第1原発周辺の11市町村。原子力規制庁によると、放射性物質による汚染レベルが高く、住民帰還が難しい「帰還困難区域」の平均線量(今年3月時点)は同8.5マイクロシーベルト。年間積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある「居住制限区域」は毎時3.4マイクロシーベルトで、11年11月との比較ではともに4割程度減った。「計画的避難区域」は同1.5マイクロシーベルトで、ほぼ半減した。4区域のいずれも減少したが、一般人の被ばく許容限度(毎時換算で0.23マイクロシーベルト)を依然として上回っている】

【減った原因について規制庁は「事故から2年たつ間に自然に放射線量が減ったことが大きい」としている。住民帰還のためには、さらに大幅に線量を下げることが必要】

▶福島健康調査:検討委員4人が退任 「秘密会」不信高まり

毎日新聞 2013年06月05日 20時14分(最終更新 06月05日 20時16分)

【県民健康管理調査の検討委員会が5日、福島市であり、県は調査目的を「不安の解消」から「将来にわたる県民の健康維持と増進」に改めた】

【調査を主導した座長の山下俊一副学長ら県立医大教授4人が退任】

【新委員は、原発マネーを追及してきた清水修二・福島大教授や、同県浪江町と提携して被ばく調査をしている弘前大の床次(とこなみ)真司教授ら8人】

【この日の検討委では、子供向けの甲状腺検査で、新たに9人が甲状腺がんと診断されたことが報告された。これで患者は計12人、「がんの疑い」は計15人に上った。清水一雄委員(日本医科大教授)は「大規模に検診すれば、このぐらいのがんを発見するのでは。ただ、普段は大規模な検査をしておらず比較できない」と述べ、被ばくの影響について否定的な見方】

▶東電賠償、1万人超が未請求 来秋以降、時効の恐れ

朝日新聞デジタル 6月6日(木)5時5分配信

【避難を指示された約16万人のうち、1万人以上が東京電力に損害賠償を請求しておらず、来年以降に時効が成立して請求権を失う恐れのあることが分かった】

【早い人は14年9月に時効となる計算】

▶使用済み核燃料中間貯蔵施設:美浜町長「慎重」発言 町内受け入れ、従来の姿勢修正/福井

毎日新聞 2013年06月05日 地方版

【美浜町の山口治太郎町長は4日の定例記者会見で、受け入れに前向きだった姿勢を一転させ、「県と関西電力は県外に設置することで合意している。成り行きを見守りたい」と慎重な発言】

【同町議会は04年、中間貯蔵施設の誘致を賛成多数で決議し、山口町長は建設に向けて関電に調査を要請した経緯がある】

▶無人ヘリ:千葉大が開発 GPSで全自動航行、放射線測定に期待

毎日新聞 2013年06月05日 東京夕刊

【コントローラーで操縦しなくても自動で離着陸でき、東京電力福島第1原発事故による被災地の放射線量測定など、人間では困難な場所での調査活動への活用が期待されている】

【ヘリは全長(直径)約1・5メートルで、機材を10キロまで搭載できる】

 そのうち、戦争は科学技術を発展させたという論にならって、原発事故は科学技術を発展させた論が登場し、何やら「いいこと」のように喧伝されるかもしれません。そのことに注意するならば、今日紹介した米本さんのいうとおりでしょう。

▶松尾・九電相談役:原発再稼働発言 古川知事「圧力とは受け止めず」/佐賀

毎日新聞 2013年06月05日 地方版

【九州電力の松尾新吾相談役が九州国際重粒子線がん治療センター(鳥栖市)への九電の寄付が滞っていることに「原発が再稼働すれば何てことない」と発言した問題で古川康知事は4日の定例記者会見で【「(九電から)再稼働のプレッシャーをかけるものとは受け止めていない」と】

「寄付をもらったからといって原発再稼働に配慮することはない」と否定し、九電との関係の透明性を強調。「(松尾相談役の)発言が誤解を生んで残念」と言い「(発言によって同センターが)寄付を受けないことはない」】

 こんなこと、当たり前です。家族同様の身内のなかの話です。オヤジがちょっとあほなこと言ったからと言ってプレッシャーになったなどと言ったら、「家族関係」が不全だということになってしまいます。彼らは原子力マフィア―原子力ファミリーの一員なのですから。

▶放射性物質拡散予測:県内影響50キロ超に拡大も SPEEDIによる予測公表 原発事故、県予測と比較/滋賀

毎日新聞 2013年06月05日 地方版

【2011年に県が独自モデルで実施した予測と比較しており、琵琶湖など県内への影響が最大となるケースでは、国の旧防災指針で屋内退避の指標となる100ミリシーベルト以上500ミリシーベルト未満の範囲が、従来の43キロ先から同50キロ以上に広がる形となった】

【その結果、美浜原発の2事例で県予測より影響が広がった。最大となるケースでは、100ミリシーベルト以上の範囲がSPEEDIの最大予測範囲となる50キロを超えて長浜市方面に流れた。また、県予測では見られなかった住民避難が必要とされる500ミリシーベルト以上の地点が、今回は県北部の一部に確認された】

【予測結果は近く、県のホームページで公開】

▶伊方原発3号機 核燃料に異物付着

NHKTV6月5日 23時2分

【伊方原子力発電所3号機で、原子炉にある核燃料2本に異物が付着していたことが分かり、愛媛県は2か月近く報告がなかったとして、四国電力を厳重注意】

【原子炉で使う核燃料157本のうちの2本に3センチ四方などのポリエチレン製粘着テープの切れ端とみられる異物が付着していたことが、4月12日に確認されていました】

【異物は、作業員が身に着ける防護服を密着させるために使うものと同じだということです】

【愛媛県の伊藤豊治原子力安全対策推進監は、「重要設備の中に異物があったことは、非常に問題だ。原因の究明と対策がなされなければ、運転再開に向けて原子炉に核燃料を入れる作業は認めない」】

 このことが誰だけのことかわかりません。しかし、この程度のことでも起きてはいけないようです。それほどビミョーなものだとするなら、ヒューマンエラーも含めリスクが多すぎます。やはりやめることが一番。

▶原発地下水の海への放出 初の説明会

NHKTV6月5日 20時52分

【いわき市などで一般の人たちを対象にした初めての説明会を行い、出席者からは、「トラブルが相次いでいて、信頼できない」などの意見】

 ただし参加した市民の数は15名だそうです。


▶今「原子力」を考える:新聞労連・新研集会
 なぜ「脱原発」敗れ去った 排除の論理を疑問視/福井

毎日新聞 2013年06月05日 地方版

【社会学者の開沼博氏▽北海道大学大学院准教授の中島岳志氏▽映画監督で作家の森達也氏──の3氏が招かれた】

【開沼氏は、脱原発運動は失敗し、現状は原発再稼働を見据えた新しい秩序に向かっているとして、「脱原発は誰にとっての希望だったのか」と】

 福島県大熊町では「原子力最中」柏崎刈羽原発のある地域では「原子力つけめん」があった。

【「原発が文化になっている。ある種のアイデンティティーとし、ブランドとして地域を作ってきた。事故があったからといって、手放せるわけがない」と】

【原発を必要とせざるを得ない人たちと、首相官邸前に集まる人たちの間にずれが生じ、「脱原発」の言葉は福島を語りながら福島のためになっていないと説く】

【福島にスティグマ(負の烙印(らくいん))を与えて問題を大きく見せ、自らの活動を維持しようとするその手法を開沼氏は「排除による包摂」と呼び、「同意を得られないものだった」と批判】【森氏は、甚大な被害の一方で、被災地以外の人たちが震災後も普通に生活している現実に触れ、「日本全体が後ろめたさみたいな意識を抱えた」と表現した。後ろめたさは社会を良い方向に変えることはなく、逆に不安や危機意識から「集団化に向かった」という】

【集団化は「『誰が悪い』『こいつが悪い』という二元論的な構造」を強める。森氏は「3・11以降、東京電力をある意味で悪者化することで、善悪二元化が進み、結局は何も解明できないままに終わってしまう」と警鐘】【中島氏は、首相官邸前のデモに参加し、暴力的な言葉を聞いて違和感を感じたという。暴力的な言葉では、対話は拒絶される。脱原発を進めるためには、東電の人たちの心とつながらなければならないと主張し、森氏と同様に敵と味方、正義と悪という単純な二元化を批判した。「自分とは違うと思った他者とのコミュニケーションをどう図るのかというあり方自体が問われている」と】

【2氏の論を受け、開沼氏も脱原発運動が抱える排除の論理を疑問視】

 開沼氏、中島氏ともに、超優等生の答案です。
 昔からご当地名物・土産などというものはありました。だから何?

 スティグマ(負の烙印)を与えて問題を大きく見せ、自らの活動を維持しようとするその手法を開沼氏は『排除による包摂』と呼びます。しかし、こうした「手法」はいつでもありました。ならば同様に、「安全」をことさら大きく見せ、何もせずに3.11後を起こした原子力村・マフィアのことはどう語るのでしょうか。

 中島氏も、きっとこういうところとはこれまでの人生では無縁だったのでしょう。免疫がなかったともいえるのかもしれません。しかし、民衆の怒りというものはいつも丁寧にやさしく、穏やかに秩序だったものとは限らないということをも知って分析しなければ学者とは言えないでしょう。

 中学校のホームルームレベルの話を持ち出されてもと思うのですが……。ここでも、つながりをことさら(カネで)分断してきた彼ら推進派の行状について語らなければなりません。

 権力問題を抜きに語っても何の意味もないと言ってしまうのは言いすぎか。正しいことを正しく言っても何も始まらないということです。以前から思っていることなのですが、いずれ、改めて彼らについては論評をしなければならないと思います。

▶「核不使用声明に日本も署名を」

NHKTV6月5日 17時2分

【日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会は、都内で開いた総会で、日本政府が、ことし4月、核兵器をいかなる状況でも使用すべきでないとする共同声明に署名しなかったことを非難する決議を採択】


▼ツイッターから

孫崎 享 ‏@magosaki_ukeru

TPP:恫喝の党、自民。至る所で政権党に逆らう気かと脅す。毎日新聞6月2日地方版「自民党TPP対策委員長の西川公也衆院議員が31日に来県、県農協政治連盟が反TPPの舟山康江氏推薦決定に”いま自民党を敵にして農業が大丈夫だと思っているのか”と、県農政連の対応に怒りをあらわにした」

原発:6日日経「原発再稼働 申請ラッシュ、伊方(四国)、九州(川内、玄海)、泊(北海道)、高浜、大飯(関西)、柏崎(東電)、浜岡(中電)、」こんなこと許していいのか。国民は一人人に何が出来るか真剣に考える時に来ている。少なくとも”参議院選挙で自民に投票しない”!

島薗進 ‏@Shimazono

14【新・問い直される県民健康管理調査①】清水修二委員「外部被ばくは低いとしてよいのかもしれないが、双相地区では最高25mSv。内部被ばく との関係は? また、資料では「100mSv以下では明らかな健康への影響は確認されていない」と、安全であるかのような表現がされているが

15【新・問い直される県民健康管理調査①】「そういうコ ンセンサスはない」。県「内部と外部をたすということはその通り。また、「100mSv以下は安全」と言いたいということではない。「100mSv以下では考えにくい」ということ」。どこが違う?「考えにくい」と「安全だ」とは同じでは?