原発通信471号                                  2013/06/12



「核の墓場」が立ち並ぶ――こんな未来社会を招来させないために(吉岡斉さん)

吉岡斉氏

 毎日新聞6月10日付夕刊に、政府事故調委員を務められた九大副学長の吉岡斉さんが寄稿しています。題して「残り続ける『核の墓場』」

 自民党政権になったからといって、国民世論に「脱原発離れ」が起きたわけではない、最近の世論調査でもそれを物語る数字が出ていると、吉田さんは書きます。

 規制委員会が7月に新基準を導入しても再稼働は容易ではなく、周辺自治体の合意をどう取り付けていくことができるのか、ハードルは高い。結局、多くの原発は今後五月雨式に廃炉になっていかざるを得ないだろう。そしてその前には高レベル放射性廃棄物処分施設の立地場所探しが大きく立ちはだかる。

 原子力発電が日本の一次エネルギー総供給量に占めるシェアは、福島事故以前は10%程度にとどまり、事故後は大幅に下がった。再稼働があったとしても5%を超えないだろう。その程度の代替えは簡単である。今後、年率1%で日本のエネルギー消費の自然減が進めば5年で賄える。省エネや再生可能エナルギーに頼らずとも脱原発は可能と、吉岡さんは言います。

 寄稿文が掲載された毎日新聞のシリーズ・タイトルは、「パラダイムシフト──2100年への思考実験」というもの。その「2100年」まであと87年もあります。その時にはいま生きている人のほとんどはもうこの世にはいない。しかし「核の墓場」は2100年においても生き続ける。核物質は無間地獄のように半永久的に放射線を出し続け、今後日本の財政事情が悪化すれば、誰もその処分費を払えなくなる。

 吉岡さんが見る悪夢は、「金の切れ目が処理・処分の切れ目」、日本のいたるところに「核の墓場」が立ち並ぶ風景です。そのような未来を招来させないためにも、私たちは知恵を絞る必要があるというのです。

 そう、そのための第一歩として、私たちはもうこれ以上、放射性廃棄物を出さないようにする。そのためにはすべての原発――核分裂発生装置を破棄することに力を注がなければならないと考えます。


▶大飯:3、4号機は免震棟「仮設」了承…1、2号停止条件

毎日新聞 2013年06月11日 23時35分(最終更新 06月12日 00時54分)

【原子力規制委員会は11日、国内で唯一稼働中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県)が7月上旬施行の規制基準に適合するかを調べる会合を開いた。隣接する1、2号機の運転停止を条件に、施設内の「会議室」を事故処理の前線基地「緊急時対策所」(免震事務棟)として仮設運用する関電の事故対応計画を了承した】

【規制委の更田豊志委員は会合で、「1、2号機の停止が前提なら(1~4号機の)共倒れはなく、仮設運用でも対応できる」と指摘。会合後、記者団に「仮設のままなら、1、2号機の運転再開はあり得ない」と断言】

▶もんじゅ:破砕帯調査公開 活断層否定、根拠薄く/福井

毎日新聞 6月12日(水)14時29分配信

【だが、調査したのは原子炉施設の直下に確認された破砕帯8本のうち1本だけ。破砕帯の活動年代も特定できていない】

【報道公開は、地元の記者クラブが要望して実現した。報道陣はまず、もんじゅの南西側の山頂付近に案内された。7000~9000年前に地震を引き起こしたとされる活断層「白木-丹生(にゅう)断層」(長さ15キロ)の一部が地表に出ているという。敷地内の破砕帯は、この活断層に引きずられて動く可能性が懸念されている。】
【茶色い花崗岩の中に、幅約2メートルで直線的に延びた帯状の白い部分があった。「ここが白木-丹生断層です」。建設前の調査時も地表に現れていたが、2008年まで日本原子力研究開発機構は活断層と認めなかった。「調査はしたが、当時の学問では活断層とは認識できるものではなかった」と担当者は説明】

【破砕帯が活断層でないことを示すためには、最近動いていないことを示す必要がある。そのためには、破砕帯の上に乗っている地層の年代を調べる方法があるが、建設時に地層ははぎ取ってしまった。原子力機構は破砕帯の性状を顕微鏡で調べ、活断層の特徴とは違うなどと主張しているが、「活断層ではないという直接の証拠はない」(担当者)というのが現状】

▶もんじゅ破砕帯、白い筋走る…調査現場を公開

読売新聞 6月11日(火)22時29分配信

【敷地内で行っている破砕帯(断層)調査の現場を報道陣に初めて公開】

【白木―丹生断層が露出した場所や、破砕帯を直接観察するために地表をはぎ取った原子炉施設近くなど4地点を公開。破砕帯が白い筋になっている様子がわかった。規制委は6~7月に専門家チームを派遣し、現地調査を行う予定】

 白い線が見えた、で、何が言いたいの? 読売新聞、産経新聞は…。上の毎日新聞と比べて読むと、まったく何も言っていません。


▶福島第1原発:廃炉作業を公開

毎日新聞 2013年06月11日 20時49分(最終更新 06月11日 21時19分)

【公開されたのは▽原子炉への注水の新たな水源とする復水貯蔵タンク▽漏水した地下貯水槽の汚染水を移送して保管する地上タンク▽4号機で11月から予定する使用済み核燃料取り出し作業で使うため建設中のクレーン──など。同原発では毎日約3000人が復旧作業にあたる】

▶福島第1原発:報道陣に公開 高線量の場所、依然多く 廃炉の作業環境改善も/福島

毎日新聞 2013年06月12日 地方版

【原子炉への注水の新たな水源とする復水貯蔵タンク周辺では、東電社員から「場所によっては数メートル離れただけでも放射線量が数十マイクロシーベルト違うこともある」と注意を促された】

【放射線量は、敷地内でも場所により大きく違う。▽正門2・6マイクロシーベルト▽免震重要棟駐車場22マイクロシーベルト▽2号機タービン建屋東側120マイクロシーベルト──など(いずれも毎時)。記者は午後3時までに積算で67マイクロシーベルトを浴びた】

【復水貯蔵タンク周辺では地面が汚染されているため、遮蔽(しゃへい)鉄板が敷かれている。近くの配管は応急的でむき出しだが、毎時135マイクロシーベルトのその場所でも作業員が作業を続けていた】

▶社説:廃炉工程見直し 「前倒し」は根拠を欠く

毎日新聞 2013年06月12日 東京朝刊

【各号機の現状に応じた工程がまとめられたこと自体は、廃炉作業を前進させるものとして評価したい】

 記事全体のトーンは茂木経産相らの企ては根拠がないということなのですが、各号機ごとにまとめられた点は評価したいと言っていますが、何か評価した点を書かなければとでも思ったのでしょうか。

 「現状に応じた工程」などといっていますが、これも変です。なぜならその「現状」がどうなっているのかわからないのですから。ここで言う「現状」とは何を指しているのでしょうか?


▶にいがた記者日記:どこまで安全?=高木昭午/新潟

毎日新聞 2013年06月12日 地方版

【では新基準で、原発は以前よりどれだけ安全になるのか。これがよく分からない。新基準案には、原発が耐えるべき地震の揺れの強さについて、数値基準がない。数値の算定は規制委と電力会社の裁量だ。また福島第1原発では同じ敷地に原発6基が集中していたために事故対応が難しくなったが、この「集中立地」に対する規定もない。規制委・庁は数値算定基準も集中立地対策も「時間切れ」で議論できなかったという】

▶福井・敦賀原発:廃炉、パレードで訴え 岐阜で300人/岐阜

毎日新聞 2013年06月12日 地方版

【市民団体「さよなら原発・ぎふ」などによるパレードが、岐阜市中心部で行われた。約300人(主催者発表)が午前11時に金公園を出発。JR岐阜駅前を経由する約1・5キロの道のりを横断幕やプラカードを掲げながら歩き、市民らに脱原発を訴えた】


▶科学者の良心を言うのなら、開かれた討議をせよ

 島薗進さんのツイッターから

 宗教学者の島薗さんのツイッターを見ていたら、日本財団会長の笹川陽平が自身のブログで山下俊一らを批判する人々を集団ヒステリーだの、科学的根拠のない批判だのと言っているということを知り、さっそく笹川のブログを見てみました。

 島薗さん、ツイッターで早速反論しています。

(以下引用)

▶「福島原発事故とチェルノブイリ原発事故の比較」―科学者の良心とは―

日本財団会長・笹川陽平ブログ [2013年06月10日(Mon)]

 福島原発事故発生直後、専門家を自認する一部の科学者やそれに連動して放射線の人体への影響を煽るヒステリックな報道が、これでもかこれでもかと連日のように大きく報道して人々を恐怖に落し入れたのには、大きな違和感を禁じ得なかった。

 チェルノブイリで10年間に亘り実践活動を経験した山下教授は、日本が誇る第一級の放射線医学専門家である。東日本大震災後は福島医科大学副学長に就任し、チェルノブイリの現地体験に基づく専門的知見と、WHO(世界保健機関)に奉職され、国際的な放射線医学専門家のネットワークを駆使して被害者救済に無私の活動を開始した。しかし、山下教授に対する嵐のような科学的根拠のない批判、中傷は、異様な集団ヒステリーと化していた。

 しかし、罵詈・雑言の批判の中でも孤独に耐え、科学的知見に基づく信念は微動だにしなかった。
「先生!!頑張って下さいよ。先生の科学者としての良心は、いずれ必ず理解されることになるでしょうから」
「笹川さん、私は大丈夫です。心配しないで下さい。批判中傷には慣れていますから」

 5月28日付読売新聞は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会によると、福島県民の甲状腺の最大被曝線量はチェルノブイリの1/60以下で、現在の調査で見つかっている甲状腺がんの患者数は被曝とは無関係に発生する割合だと報告書に記載されており、「被曝線量は低く、福島はチェルノブイリではない」と報告しているという。

 これは各国の放射線医学の専門家約90人が参加して評価したそうだ。多分、この報告書作成には、超多忙の中、福島に来てくださったほとんどの放射線専門家が参加しているはずである。冷静に判断できるまでには約3年の月日が必要だった。被災者を不安に煽ることに熱心な報道に、残念ながら、我々のような少数意見は非力であった。

 科学者、あるいはその道の専門家とはどのような人なのか。科学的知見もなく、突如専門家のごとくテレビや新聞を賑わせ、人々に恐怖や不安を掻き立てる人のことなのか。科学者は常に社会とのつながりを持ち、科学が人間社会の質的向上のために存在する以上、社会から隔絶された世界だけの研究であってはならないのではないか。

 いみじくも9月11日の放射線科学者の国際会議での結論の一つが「我々は放射線についての専門知識を易しい言葉で人々に伝える技術をもっていなかったことである」との率直な反省は、科学者の良心として、私は高く評価したい。

 良心ある科学者とは、無知蒙昧(むちもうまい)な専門家と称するヒステリックな報道の嵐の中でも世間の評判や批判に耐える強い意志力、そして、優れた科学的知見は当然として、幅広い知識に基づく慈愛あふれる人間性と高い道徳、倫理観を持った人間ではないだろうか。

 今回の不幸な事故により、科学者とは何かを考えさせられ、山下俊一教授と丹羽大貫名誉教授にその答えを教えられた。

(ここまで)

島薗進 ‏@Shimazono さんの反論 ツイッターから


【科学者の倫理性とは?】笹川氏が長を務める財団が40億円を投じてチェルノブイリ医療支援を行った際、それを全面的に担った長瀧氏・山下氏、両氏と歩調をともにする丹羽氏を含む政府側の放射線健康影響専門家らは、2011年3月11日以来、開かれた討議の場をもうけようとしてこなかった

【科学者の倫理性とは?】笹川氏が称賛する日本の放射線健康影響専門家は政府に近く公共政策に多大な影響を与えうる立場にある。しかし彼らは科学と公共政策に関わる領域での討議を避けてきた。これは、科学者の倫理性に大いに関わることだろう。

【科学者の倫理性とは?】仏教タイムス6/6は世界宗教者平和会議(WCRP)福島会議(5/13-14)「原発の倫理性問う」を報道 http://www.bukkyo-times.co.jp/pg125.html  弱い立場の人々を気遣い政府東電側を告発する声とともに「分断」をいかに超えていくかを求める声を伝えてる。



▶ひと:麻生泰さん 九州経済連合会の会長に就任

毎日新聞 2013年06月12日02時14分(最終更新06月12日10時11分)

【1961年の創設以来、地場最大企業、九州電力出身者以外では初の会長】

【祖父は吉田茂元首相で、兄は麻生太郎副総理兼財務相。兄の政界進出で、33歳で麻生セメント社長に就き、学校や病院などを運営する69社、従業員約7000人の麻生グループを率いる。仏企業と提携を決めるなど経営手腕への評価は高い】

 「仏企業と提携を決めるなど経営手腕への評価は高い」と、――フランス原発企業との連携を模索する安倍政権と…何か…、あるでしょうね。

▶福島県南相馬市・小高駅の今

テレビ朝日 報道STATION 2013年6月11日 (火)

【原発事故後、『警戒区域』だったこの地区は、去年4月、『避難指示解除準備区域』となった。住民は、日中は帰れるが、泊まることはできない】

 何が問題なのか、機械的な円グラフ上の指定が問題なのか(当然それはあります。円に収まらないところが実は最も汚染されていたという事実があるのですから)――、お涙ちょうだい的な報道でした。

 ときどきこの手の報道がされるのですが、問題点がそらされてしまうと思うのは私だけでしょうか。


▶安倍首相が「左翼の人達」に演説妨害されたワケ

「日々担々」資料ブログ 2013.06.12 ( Wed )  07:00:13 

【事の発端は、先週末に行われた渋谷ハチ公前の街頭演説だ】

【高い支持率をキープする人気者見たさに多くの人が押し寄せたが、その群衆のなかにアンチ安倍の一団がいてやいのやいのと文句を飛ばしたのである。その夜、安倍首相はFacebookでこの時の様子を以下のように綴った】
【聴衆の中に左翼の人達が入って来ていて、マイクと太鼓で憎しみ込めて(笑)がなって一生懸命演説妨害してましたが、 かえってみんなファイトが湧いて盛り上がりました。ありがとう。 前の方にいた子供に「うるさい」と一喝されてました。立派。彼らは恥ずかしい大人の代表たちでした】
【こんな調子で煽(あお)ったことで、ネット上の愛国心溢れる人たちからは「これだから朝鮮人は」とか「左翼は日本から出ていけ」なんて声が噴出したが、翌朝この投稿はサクッと消える。公式Twitterには投稿が残っていたが、昼ぐらいにこちらも削除されてしまう。ところが11日未明に、この投稿が再アップされたのだ】

【もうすっかり忘れているかもしれないが、民主党政権時代、野田佳彦首相がTPP交渉参加を匂わせたら、自民党は「国賊だ」と顏を真っ赤にして怒って、こんなポスターを日本中に貼った。
 「ウソつかない。TPP断固反対 ブレない」
 ところが、政権をとったら「そんなことありましたっけ」みたいな顏して、安倍さんはサクッとTPP交渉に参加を表明した】
【例えば、2000年6月と8月、安倍さんの後援会事務所や自宅敷地内の倉庫兼車庫に火炎瓶が投げ込まれるという事件があった】
【安倍さんは、「北朝鮮の陰謀だ」なんて周囲に言っていたという。】
【ところが3年後、パクられたのは工作員ではなく、北九州を本拠地に置く工藤会の組員たちだった。しかも、彼らがゲロッた「動機」がマズかった】
【安倍事務所の秘書から、下関市市長選に出馬した古賀敬章氏について、「在日朝鮮人」とか「北朝鮮の金正日の手先」などという誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)した怪文書をバラまくという仕事を請け負った彼らは、それをきっちりやり遂げた。
 業界で言うところの「裏選対」というやつだが、この報酬が待てど暮らせど安倍事務所から支払われない。ヤクザをダマすとはいい度胸しているじゃないかということで犯行に走った、というのだ】


▼柔道、野球にもあらわれた、何よりだめな日本

「由(よ)らしむべし知らしむべからず」そして「何も学ばない」。大衆蔑視と傲慢さ、それにエリート主義が重なる。原子力マフィアもそう、スポーツ界も、そして何よりいちばんそれが強いのは政治の世界。

▶全柔連:延命に躍起の現体制派

毎日新聞 2013年06月11日 22時06分(最終更新 06月11日 22時33分)

【また国もスポーツ界も今は、9月に命運が決まる20年東京の五輪招致に夢中だ。マイナスイメージを発信する柔道界は触れたくない存在として放置されていく。
 全柔連幹部によると、やがて上村会長は周囲に「俺、辞めるなんて言ったか」と翻意をほのめかす趣旨の発言をするようになったという。辞任のめどとしていた理事会前日の10日には、上村会長と親交の深い国際柔道連盟のマリアス・ビゼール会長が突然、東京を訪れ、「続投」を呼び掛けたのは不自然に過ぎた】

 日本社会の構造を象徴するような問題です。

▶<プロ野球>統一球変更 製造元にも口止め 現場やファン軽視

毎日新聞 6月12日(水)9時36分配信

【これまでNPBは、選手サイドから「ボールが変わったのでは」と指摘を受けても、一貫して否定し続け、製造元のミズノ社にも「変わっていない」と否定させていた。】

【選手会からの追及がなければ「公表するつもりはなかった」(下田邦夫・NPB事務局長)という】

 投手の側からは「労働条件の変更」との指摘もあるとか。ヒット、ホームランを打たれたら減俸契約、自由契約にもなる彼らですから死活問題です。