原発通信634号 2014/02/12

「タダより高いものはない」。そして「割を食うのはいつも下っ端」

 昨日2月11日は建国記念日でした。安倍首相は「私たちの愛する国、日本をより美しい、誇りある国にしていく責任を痛感し、決意を新たにする」という首相としての初の談話を発表したとか。
 45年前の1969年の2月11日、東京千代田区の清水谷公園は、色とりどりの旗やヘルメットをかぶった高校生たちによって埋め尽くされていました。全都から2.11建国記念日反対の抗議の声をあげる高校生が集まっていたのです。シュプレヒコールが繰り返されていました。若者たちが声をあげていたのです。あれから45年たった今日…。
  努力すれば叶う。叶わないのは努力が足らないからと新自由主義者・市場原理主義者たちは言います。しかし、努力しても報われないもの、報われないときというものがあることもまた真実です。富める者と貧しい者の間はますます広がり、溝は深くなっている現在です。そうした状況のなかでルサンチマンが大量に発生しているのも事実です。
 自分の存在など意味がないと思わされ、個人が原子の粒のようにアトム化され、顔をもたない透明人間のように「透明化」させられていく。しかし、人間は己の存在意義を否定されたとき、何かの機会があれば反撃したい=存在価値を示したいと考えるものです。
 そんなとき、努力を伴わず、お金をかけることもなく手に入れられるものがあります。自分の出自。例えば日本人として生まれた事実です。どの国に生まれるかは選べないし、たんなる偶然にすぎないのに、それを「なんと素晴らしい、誇りある存在か」とおだてられれば、自己肯定感を獲得できます。ルサンチマンが強ければ強いほど、その肯定感は強固になるものです。
 吹き込むほうも元手はかかりません。教育をつけさせる必要もなく、仕事を保証する必要もなく、ベースアップする必要もなく、住むところを保証する必要もないのです。外部に対抗するものを設定し、それとの差別化をこれでもかと行うだけでいいのです。
 そのように若者をおだてる扇動的な政治家が先の都知事選にもいました。彼のアジテーションに磁石のように吸い寄せられた有権者が、61万人いました。
 ましてや今は、ソチ・オリンピック。そこらじゅうで「ニッポン!ニッポン!」なのですから、舞台は十二分にそろっています。この風景はいつか見た風景……。
 でも、「タダより高いものはない」とも言います。誰にとって? 思い込まされたほうです。割を食うのはいつも下っ端と決まっています。そのお代は、まさに体で払っていただこうと。

 ところで、安倍政権、昨年は“強行”した「主権回復の式典」を、今年は行わないとか(10日菅記者会見)。なんでも「その時々の諸条件を見ながら」ということのようです。そう、諸条件――米国が不快感を示しているからね。

 リアルタイムで見たり聞いたりしていなければ責任ない?

 天気予報を確認するついでに見た今朝(2月12日)の国会中継。NHK経営委員の百田の選挙応援に関して追及しているところでした。「責任あるか」との問いに、晋三「私は見ていない、聞いていない。だから責任ない」と答弁です。「リアルタイムで自分が確認」していなければ、責任追及されようとも関係ないかのごとき答弁です。
 質問者の民主党議員も、それに突っ込みを入れるわけでもなく…。まるで中身は小学校の「学級会」レベル。文字化された新聞記事を読むと“誤解”してしまいそうな情けない「国会」でした。バカバカしいので、天気予報を確認したら、すぐに消しましたが。
 しかしそうやってバカバカしいと目をそらしているうちに、集団的自衛権へ向けて解釈改憲は進み、「戦争できる国」への道をまた一歩前へ進むのです。

 感動依存症じゃなくて、感動強要の同調圧力

 毎日新聞のコラム「香山リカのココロの万華鏡」。精神科医の香山さんが書かれています。
 昨日は、冒頭は今話題の替え玉作曲家の話です。香山さん、この人の曲に感動しコンサートにも行き、最後は立ち上がって拍手を送った一人だそうです。ところがことが発覚してからというもの感動が半減したというのです。「確かにさまざまな名曲をつなぎ合わせて作ったようにも聞こえてくる」と。なぜかと問いかけます。そして、「いつしか私たちは周囲にあふれる感動の物語にマヒしてしまい『もっと感動させて』と、刺激を求めすぎていたのではないか」と分析するのです。その仕掛けとして「物語づくり」があると。幸少ない環境で…、不運のなかで…、逆境にめげず…と物語はつくられると。そして今はソチオリンピックだと。
 「もっと泣きたい、もっと感動したい」という感動依存症だと香山さんは結論づけるのですが、より正確を期せば「感動強要シンドローム」と言うべきだと思います。これに感動しなければ人ではない、これに涙しないほうがオカシイ…と同調圧力が日に日に強まっているのを感じます。

都知事選「目先の経済追う 歴史的過ち」 東海村前村長が批判
東京新聞2014年2月11日 朝刊

【本紙の取材に「極めて残念。東京都民は目先の経済だけを追い、歴史的な大きな間違いを犯した」と強い口調で批判した。「都民は東京電力福島第一原発事故を忘れ、平和憲法の精神を壊そうとする安倍政権を支持した。東京が日本を駄目にしていく」とも述べた。
 村上氏は「脱原発をめざす首長会議」の世話人を務める。都知事選では、同じく脱原発を訴えた宇都宮氏を「脱原発の正統派」としながらも、「好き勝手しようとする安倍政権の暴走にブレーキをかけるには、勝てなければ意味がない」と細川、小泉純一郎両氏の元首相連合を支援した。
 宇都宮氏に「脱原発票が分裂した二〇一二年の衆院選のように悲しませないでほしい」と訴えるメッセージを送り、「歴史的な決断」を求めて、細川氏への一本化を要請したことを明かした。
 今後の国のエネルギー政策について、「師匠(である小泉氏)を倒した安倍首相は、もう怖いものなしだろう」と、なし崩し的な原発の再稼働を憂慮する。
 村上氏は東海村の村長を四期務め、昨年引退した。在任中の福島第一原発事故で、脱原発の姿勢を明確に。二〇一二年四月、「脱原発をめざす首長会議」の設立に加わり、地元首長としては異例とも言える廃炉の主張を通した】

原子力規制委:大飯原発「活断層ない」 有識者報告を了承
毎日新聞 2014年02月12日 11時52分
【 原子力規制委員会は12日、関西電力大飯原発(福井県)の重要施設「非常用取水路」を横切る断層「F-6破砕帯」について、活断層ではないとする有識者調査団の報告書を了承した。規制委が断層調査を進める⑥施設のうち、調査団の報告書を了承するのは、原子炉建屋直下に活断層があると判断した日本原子力発電敦賀原発(同)に続いて2例目。活断層なしとしたのは大飯原発が初めて。
 非常用取水路は3、4号機の原子炉冷却に必要な海水を送る施設で、敷地内をほぼ南北に走るF-6破砕帯が横切っている。原発の新規制基準では、活断層の真上に重要施設を設置することを禁じており、F-6破砕帯が活断層か否かが焦点となってきた。報告書は「将来活動する可能性のある断層等には該当しない」との表現で活断層説を否定した。
 大飯原発の断層問題は東日本大震災後の2012年7月、規制委の前身である経済産業省原子力安全・保安院が全原発の断層を再点検して浮上した。関電の提出資料が不十分であることなどから保安院は「活断層の可能性を否定できない」と関電に再調査を指示。業務を引き継いだ規制委は3回にわたって、現地に有識者調査団を派遣し、関電の調査結果の妥当性を検討した。その結果、調査団は昨年9月に「活断層ではない」との見解で一致。規制委は保留していた大飯3、4号機の再稼働に向けた安全審査を再開した】

“ものは言いよう”
 産経新聞です。たまり続ける汚染水問題に、要は大量の水で薄めたり、鍋の水をどんどん沸かして蒸発させてしまうだけのことを「現在の技術で可能」などと仰々しく書くのですから。まさに「ものは言いよう」です。

 そういえば、NHK朝の連ドラ「ごちそうさん」のなかで、ガダルカナルなどからの撤退を「転進」と報道しているのを聞いた室井幸斎が「ものは言いようだよね」というシーンがありました。「ごちそうさん」、今の右傾化激しい自民党放送局と化しているNHKのなかで、結構シリアスなセリフを言わせていますよ。

福島第1原発、トリチウム浄化 決め手なし 放出、貯蔵…年度内に結論
産経新聞 2月12日(水)7時55分配信

【最終的に地上タンクの汚染水は100万トンを超える見通しで、汚染水処理の前進が急がれている
汚染水からトリチウムだけ分離する試みは廃止措置中の新型転換炉「ふげん」(福井県)で前例があるが、1トン当たり約2千万円の費用がかかる。1日30キログラムしか処理できず、32年度末までに生じる100万トン超を処理するのは困難】

「2か所」で済んでいるはずはない

福島第一原発、雪からセシウム検出 タンクの床ひび割れ
朝日新聞デジタル版2014年2月11日21時14分
【東京電力は11日、福島第一原発で汚染水をためたタンクが置かれたコンクリート床2カ所にひびが入っていたと発表した。周囲には雪が積もっており、溶けてひびから地下に染み込んだ可能性があるという。東電が雪溶け水を調べたところ、セシウムやストロンチウムが検出された。
 ひびがあったのは、昨年8月に高濃度の汚染水300トンの漏れが見つかったタンク群の近く。長さ12メートルと8メートルのひびが入っているのを、パトロールで見つけた。雪が溶けた水からはセシウムが1リットルあたり最大58ベクレル、ストロンチウムが同2100ベクレル検出された。東電によると、寒さでコンクリートにひびが入った可能性があるという】

草刈りと雑巾がけに「国家資格」?

 田母神閣下に言わせれば、無駄なことだということでしょう。むしろ体にいいのだから「放射線健康増進推進士」と名称を改めるべきだと──言わないかな~。

除染・廃炉に国家資格、質向上図る…自民方針
読売新聞 2月12日(水)8時54分配信
【自民党は政府に対し、放射性物質の除染作業や原子力発電所の廃炉作業に関する新たな国家資格「放射線取扱業務士」の創設を求める方針を固めた。
 資格の創設を柱とした法案を、今国会に議員立法で提出する。東京電力福島第一原発周辺の除染を巡り、不適切な作業が広がっているとの見方があることから、国民の除染への不信や不安を払拭する狙いがある。
 現在、原発関連の国家資格には、原子力規制委員会が所管する「核燃料取扱主任者」(核燃料物質の取り扱いの保安・監督)と「原子炉主任技術者」(原子炉の運転の保安・監督)があるが、原発事故後に浮上した除染作業や廃炉に関する国家資格はない。除染については、厚生労働省令で請負業者に対し、除染に使う機器の取り扱い方法や構造などについて4・5~5・5時間の講習(学科と実技)を作業員に行うよう義務づけているだけだ。
 自民党の原案では、新設する放射線取扱業務士は、〈1〉除染業務〈2〉放射線量測定業務〈3〉原子炉運転・保守業務の3分野に分かれる。それぞれ1~3級の資格を設ける方向だ。試験科目や内容は、法案の成立後、厚労省令で定める。除染作業の知識、放射線の正しい測定法や人体に与える影響、関係法令などを幅広く問うものとなりそうだ。
 原案では、請負業者の放射線取扱業務士を雇用する割合などに応じて、公共工事の受注の機会が増えるよう国に配慮を求める規定も設けた。請負業者に対し資格を持つ作業員の雇用を促し、現場の作業員の指導に当たらせることで、作業のレベルアップを目指す。
 除染を巡っては、厚労省が2013年1~6月、福島県内で作業を請け負う388業者を対象に労働基準法などの違反の有無を調査。その結果、264業者で、作業員の被曝(ひばく)線量測定の不備などが計684件見つかり、是正指導した。環境省が、除染の排水処理が適切でないなどとして改善指示したケースもある。
 ◆除染=住民が生活する中で受ける放射線を減らすために、建物や植物などに付いた放射性物質を取り除いたり土で覆ったりする作業。東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性物質のうち、放射能が半分になるまでの期間(半減期)が30年と比較的長い「セシウム137」が主な対象】

中間貯蔵施設、楢葉を除外…大熊・双葉に集約へ
読売新聞 2月12日(水)9時8分配信

【東京電力福島第一原発事故や除染で出た汚染土などを最長30年保管する中間貯蔵施設について、環境省は、福島県大熊町、双葉町、楢葉町の3町が建設候補地となっている現在の計画を見直し、楢葉を除く2町に貯蔵施設を集約させる方向で検討に入った。
 福島県の佐藤雄平知事は12日にも石原環境相に面会し、2町に集約することを要請する】
【大熊、双葉の2町は大半が帰還困難区域(年間被曝(ひばく)線量50ミリ・シーベルト超)となっている。これに対し、楢葉町は、放射線量が比較的低い避難指示解除準備区域(同20ミリ・シーベルト以下)で、早期帰還が期待されており、高濃度汚染ごみの受け入れを拒否している】
【ただ、2町の敷地面積は変えないことを条件とした】


対岸の青森・大間原発建設、函館市が差し止め提訴へ
朝日新聞デジタル 2月12日(水)7時59分配信

【北海道函館市が、青森県大間町で大間原発を建設中のJパワー(電源開発)と国を相手取り、同原発の建設差し止めを求める訴訟を3月にも東京地裁に起こす。工藤寿樹市長が12日に正式発表する予定だ。自治体が原告になる原発差し止め訴訟は全国初になる】【函館市は津軽海峡をはさんで大間原発の対岸に位置する。最も近い所で原発から約23キロで、原発事故に備えた避難の準備などが必要な防災対策の重点区域(UPZ=30キロ圏)に市域の一部が含まれる】

作業員「本音書けない」 東電アンケート 元請け経由回収
東京新聞2014年2月12日 07時11分
【元請け企業を通じて回収していることが分かった。作業員たちの話では、下請け企業の中には、作業員の回答を提出前にチェックしたり、回答の内容を指示したりするところもある。作業員からは「こんなやり方では実態は分からず、改善につながらない」】と。
 元請けに不利なことを書いて、それで仕事が来なくなったら…と、考えるのは経営者として当然でしょう。発注者―下請けという関係は自由にモノが言えるほどの“正しい”関係ではないということぐらい、よっぽどのノー天気な人以外ならわかります。

ブログから

アベノミックスをここまで批判した与謝野馨は第二の小泉だ

「天木直人のブログ 日本の動きを伝えたい」2014年02月12日より

 (略)

こう言ったあとで与謝野氏は次のように語ったという。

 「それよりも、現下の経済政策の肝は、拡大する一方の格差とどう向き合うかにある。世界的潮流となっているこのことこそが中産階層の衰退を伴いナショナリズム台頭の温床になっている。若者が右傾化している、ともいう。そういう時こそ、そうじゃないだろうという政治勢力が国会になければいけない」と。

 いまさら与謝野氏が何を言っているんだ。

 いまさら御用メディアの編集委員が何を言っているのだ。

 そう一蹴するのは簡単だ。

 それはあの小泉元首相の脱原発発言に対する批判と同じものがある。

 しかし、彼らさえもそう言わざるを得ないほど安倍政権の政策は間違っているということではないのか。

 共産党や左翼がそう言い続けてきたのとはわけが違う。

 権力側の中からそういう声が出てこざる得ないほど安倍政権は行き詰まっているということだ。

 日本が抱える問題はそれほど深刻であるということだ。

 安倍政権は長くないと御用メディアも安倍政権を見限り始めたのだ。

 そう言えば倉重氏は与謝野馨前衆院議員をこう紹介している。

 「第一次安倍政権の幕引き官房長官も務めた人物だ」と。

 この言葉がすべてを物語っているような気がする(了)

売国奴はお前の方だと反撃できれば村山元首相もたいしたものだ

同 2014年02月11日より

(略)

 しかし、もしここで、間違った歴史認識を盲信して日本を国際批判にさらすお前たち右翼こそ、日本の国益を害する売国奴だと反撃できるなら私は村山元首相を見直す。おりから小泉元首相が脱原発を掲げて打倒安倍自民党を叫んで立ち上がった。それを見て、小泉元首相をさんざん批判してきた私は小泉元首相を評価した。小泉氏にしても村山氏にしても、もはや失うものは何もないはずだ。今度はあんたがガッツを見せる番だ。そう村山元首相にはハッパをかけたい。売国奴から売国奴呼ばわりされてさぞかし右翼の連中は腰を抜かして怒り狂うだろう。それを見てみたい。


史実を認めない新聞が、事実誤認を言う可笑しさ

小沢氏、皇室と韓国の関係で事実誤認
産経新聞 2月11日(火)19時40分配信
【小沢氏は「紀元節(建国記念の日)は神武天皇のご即位なさった日だ」と述べた。その流れで「桓武天皇のお后は朝鮮半島の百済の王女様とのことだ」との認識を示した。
 「今の天皇陛下がお話しになったことがある」と根拠に挙げ、「半島との縁は誰も否定できないほど」などと述べた。
 天皇陛下は平成13年12月、翌年の2002年サッカー・ワールドカップ日韓共催に関連し「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると続日本紀に記されている」と述べられた。
 小沢氏は「生母」を「后」、「王の子孫」を「王女」と2カ所言い間違えている。百済は桓武天皇誕生の70年以上も前に滅亡しており
天皇陛下は平安時代に編纂(へんさん)された「続日本紀」を引用されたにすぎない】

【都知事選】地区別得票数
前回
猪瀬 直樹 4,338,936  65.27%
宇都宮健児   968,960  14.58%   今回982,594 (+13,634)
細川護熙                956,063
「反脱原発票」前回96万8960 今回 193万8657  前回の2倍

東京新聞2014.2.11付