原発通信696号 2014/05/19

「30年」─「未来と呼ぶのには短すぎるが、ちょっと現実感をもって語られる」年月

 政府は除染等によって生み出された汚染物質の「中間貯蔵施設」を大熊町と双葉町に設置予定ということですが、これまた「搬入後、30年以内に」福島県外に移すという約束で計画決定をはかるようです。
 廃炉まで30~40年…。最終処分場に移送するまでの30年…。何をやるにしても「30年」です。では、その30年に根拠があるのかと言ったら、誰も「ある」とは考えていないでしょう。
 「30年」はもっともらしく見せるための数字=記号でしかありません。
 30年を一つのジェネレーションの単位とする考えがあります。いわゆる世代交代。30年は、「未来と呼ぶのには短すぎるが、ちょっと現実感をもって語られる」年月、時間軸というところでしょうか。はっきりしていることは、「30年」と決めた人30年後には間違いなく、その責任主体から引退するか、この世にはいないということです。一人の人間の人生から見れば「30年」は決して短くはありません。人々が正確に記憶しておくには十分に長すぎます。
 原発問題を追っていくと、よくこのあたりの時間が持ち出されています。10年と言ってしまうと、あまりにもリアリティー過ぎ、また20年だと、できなかったときどうするんだよ…。悠々自適の老後を過ごそうと思っているのに、「責任はお考えですか」などとマスコミなどに追いかけられたらたまらんという時間しか過ぎていない。30年、そういう意味ではちょうどいい=使いやすい時間なのでしょう。程よくリアリティーがあって、人びともそのくらいの時間があれば忘れてくれる…と思いたい。で、その30年が経ったとき何かが起きて、「こんなこと誰が決めたんだよ!」と怒ってみても、ぶつける対象はもうどこにもありません。
「30年」とは、記憶から記録へ移行し、遠ざかっていく、そんな時間軸だとつくづく思います。

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 格差社会の申し子=「無敵の人」

 東京新聞5月18日付の「週刊誌を読む」というコラムがあるのですが、そこで「無敵の人」という言葉が紹介されていました。コラム『アエラ』5月19日号の「『無敵の人』と無差別犯罪」という記事を引用しています。
 「無敵の人」とは、ネットスラングで、「人間関係もうまく構築できず、社会的地位もなく、失うものが何もないがゆえに、罪(犯罪)を犯すことに心理的抵抗のない人間」をそう呼ぶらしいです。「アエラ」によると、「黒子のバスケ」脅迫事件で逮捕された被告の初公判で、被告が上のようなことを意見陳述したとのことです。
 その背景には格差社会の深刻化があります。被告は現在36歳ですが、これまで年収200万円を超えたことがなかった。しかし、警察に追われながらの犯行は「人生で初めて燃えるほどに頑張れた」。そして自分のような犯罪を「人生格差犯罪」と命名した。そして彼は、意見陳述での最後で「こんなクソみたいな人生やってられるか! とっとと死なせろ!」と述べたそうです。
 昨今のさまざまの事件の裏には「失われた20年」の間に深く進行した格差社会が横たわっていることは間違いありません。
  「鉄鎖のほかに失う何物もない」と、かのマルクスはプロレタリア革命を呼びかけ、労働者、被抑圧人民は社会変革へ立ち上がりました。しかし今は、社会変革など到底到達することのない彼岸の夢となってしまったことも事実です。そして1980年代以降、新自由主義者ども市場原理主義者どもの跋扈により格差社会が深刻化していきました。
 そうした格差社会の進行に、労働組合も加担してきました。そのことをどれだけの労働貴族たちは自覚していることでしょう。労働組合の多くが「働くこと(労働)」について、何も考えてこなかった歴史がそこにあります。その歴史は、かつて中曽根康弘が戦後総決算と呼んで、公共事業体労働者や国鉄労働者の闘いに解体攻撃を加えたとき、他の労働組合がなすすべもなかったということから始まっていると私は考えています。

汚染水 外洋流出続く 首相の「完全ブロック」破綻
東京新聞2014年5月17日
 
【東京電力福島第一原発から漏れた汚染水が、沖合の海にまで拡散し続けている可能性の高いことが、原子力規制委員会が公開している海水データの分析から分かった。安倍晋三首相は昨年九月、国際社会に向かって「汚染の影響は専用港内で完全にブロックされている」と強調したが、現実には放射性セシウムはブロックされず、海を汚し続けている。 (山川剛史、清水祐樹)
 かつて海外の核実験により放射性物質が日本にも降り注いだため、国は財団法人海洋生物環境研究所などに委託し海水中の放射性セシウム137濃度などを高精度で分析してきた。原子力規制委員会は一九八四年以降のデータを公開、福島第一の沖合三十キロ付近も調査地点に含まれていた。
 二〇一一年の福島事故で、福島沖の同地点の濃度は直前の値から一挙に最大二十万倍近い一リットル当たり一九〇ベクレル(法定の放出基準は九〇ベクレル)に急上昇した。それでも半年後には一万分の一程度にまで急減した。
 一九四〇年代から世界各地で行われた核実験の影響は、海の強い拡散力で徐々に小さくなり、八六年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故で濃度は一時的に上がったが、二年ほどでかつての低下ペースとなった。このため専門家らは、福島事故でも二年程度で濃度低下が元のペースに戻ると期待していた。
 ところが、現実には二〇一二年夏ごろから下がり具合が鈍くなり、事故前の水準の二倍以上の〇・〇〇二~〇・〇〇七ベクレルで一進一退が続いている。
 福島沖の濃度を調べてきた東京海洋大の神田穣太(じょうた)教授は「低下しないのは、福島第一から外洋への継続的なセシウムの供給があるということ」と指摘する。
 海水が一ベクレル程度まで汚染されていないと、食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える魚は出ないとされる。現在の海水レベルは数百分の一の汚染状況のため、「大きな環境影響が出るレベルではない」(神田教授)。ただし福島第一の専用港内では、一二年初夏ごろから一リットル当たり二〇ベクレル前後のセシウム137が検出され続けている。沖合の濃度推移と非常に似ている。
 神田教授は「溶けた核燃料の状態がよく分からない現状で、沖への汚染がどう変わるか分からない。海への汚染が続いていることを前提に、不測の事態が起きないように監視していく必要がある」と話している】

浄化装置、汚染水処理停止=さらに1系統で、福島第1―東電
時事通信 5月17日(土)14時24分配信
【東京電力は17日、福島第1原発で汚染水の放射性物質を吸着して大幅に減らす装置「ALPS」(アルプス)の1系統で白濁した水が確認され、処理を停止したと発表した。アルプスは3系統あるが、別の1系統もトラブルで長期間処理ができない状態となっており、処理を継続しているのは残り1系統のみとなった。
 東電によると、17日午前、アルプス1系統の処理水が白く濁り、カルシウム濃度が16日の10倍超に上昇していることが判明。17日午前9時に、この系統での処理を停止した。
 カルシウムは汚染水の処理工程で発生するが、濃度が上昇した原因は不明で、東電は「処理の再開時期は未定」と話している】

濃度下げ敷地内に散水 東電、基準値超の堰内雨水
福島民友(2014年5月17日)

【東京電力は16日、福島第1原発の汚染水を保管する、地上タンク群を囲む堰(せき)内の雨水について、東電が定めた堰外への排水基準値を超える放射性物質が検出された場合は、濃度を下げた上で敷地内に散水すると発表した。東電が排水基準を超える水の取り扱い方針を示すのは初めて。散水前の水質分析の過程について、透明性の確保が焦点となる。
 基準値を超えた堰内の水は、新たに整備した放射性物質を取り除く淡水化装置計4基で処理し、濃度を基準値未満まで下げた後、散水する。東電の事前試験でストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり1万2000ベクレル含まれる水を装置で処理したところ、濃度は検出限界値未満まで下がったという。
 一方、散水前の水の分析は現時点で東電が単独で行う方針で、信頼性が確保できるかは不透明だ。県は16日、県庁に東電の社内分社「福島第1廃炉推進カンパニー」の河合雅彦副責任者を呼び、第三者機関を交えるなど水質分析の信頼性を向上させるよう要請したほか、散水する前の情報開示の徹底も求めた】

■福島の子 甲状腺がんが50人に

東京新聞18日の2面です。
 東京新聞、よくこの二つの記事を並べて報じたと思います。右には「首相が福島視察 「健康被害ない 美味しんぼ問題で強調」の記事です。

福島の子 甲状腺がんが50人に
東京新聞2014年5月18日
【福島県の全ての子どもを対象に東京電力福島第一原発事故による放射線の影響を調べる甲状腺検査で、対象者の約8割の結果がまとまり、がんの診断が「確定」した人は県が今年2月に公表した数より17人増え50人に、「がんの疑い」とされた人が39人(前回は41人)に上ることが17日、関係者への取材で分かった。
・37万人検査 8割で結果
 検査は県内の震災当時18歳以下の約37万人を対象に県が実施。今年3月までに一巡目の検査が終わり、4月から二巡目が始まっている。
チェルノブイリ原発事故では4~5年後に子どもの甲状腺がん増加が確認された。このため県は一巡目の結果を放射線の影響がない現状把握のための基礎データとし、今後、二巡目以降の検査でがんが増えるかどうかなどを確認、放射線の影響の有無を調べる。
 一巡目では、一次検査として超音波を使って甲状腺のしこりの大きさや形状などを調べ、大きさなどが一定以上であれば二次検査で血液や細胞などを調べた。3月までに約30万人が受診、全対象者の約8割に当たる約29万人分の一次検査の結果がまとまった。
 2070人が二次検査に進み、がんと診断が確定した人は50人、疑いは39人だった。手術で「良性」と判明した一人を加えた計90人は、震災当時6~18歳。このうち34人は、事故が起きた2011年3月11日から4か月間の外部被ばく線量が推計でき、最も高い人は2.0ミリシーベルト以上2.5ミリシーベルト未満で、21人が1ミリシーベルト未満だった。
 国立がん研究センターによると、10代の甲状腺がんは百万人に1~9人程度とされてきた。一方で、環境省は福島県外の子どもの甲状腺検査を実施し、約4400人のうち、一人ががんと診断。
 「福島と同程度の頻度」として、福島での放射線の影響を否定している。
・甲状腺がん
 甲状腺は喉にある小さな臓器で、成長などに関わるホルモンを分泌する。原発事故で出た放射性ヨウ素が呼吸や飲食を通じて体内に取り込まれると甲状腺にたまりやすく、内部被ばくしてがんになる危険性が高まる。特に子どもが影響を受けやすく、1986年のチェルノブイリ原発事故後、周辺では子どもの甲状腺がんが急増した。早期に治療すれば高い生存率が期待できる】

福島、子どもの甲状腺がん50 「県民健康調査」、疑い39人
東京新聞2014年5月19日 17時05分
【東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県の「県民健康調査」の検討委員会が19日、福島市で開かれた。実施主体の福島県立医大が、甲状腺がんと診断が「確定」した子どもは前回(2月)の33人から17人増え50人に、「がんの疑い」は39人(前回は41人)になったと報告した。
 甲状腺検査は、震災発生当時18歳以下の約37万人が対象。約28万7千人の1次検査の結果がまとまり、2070人が2次検査の対象となった。
 1次検査では超音波を使って調べ、2次検査で血液や細胞などを調べる。今年3月までに1巡目の検査が終わった。(共同)】

安倍首相:福島県立医大を視察「正しい情報が大切だ」
毎日新聞 2014年05月17日 13時07分(最終更新 05月17日 13時13分)
【 ◇「甲状腺検査」の模擬検査の様子を見学
 安倍晋三首相は17日午前、福島市の福島県立医大を訪れた。東日本大震災での東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べるため全県民を対象に実施している「県民健康管理調査」について説明を受け「正しい情報を出すことが大切だ。政府も情報の出し方を検証し、分かりやすくしたい」と強調した。
 首相の被災地入りは15回目で、福島県訪問は7回目。放射線による健康被害への不安を払拭(ふっしょく)する狙いがあるとみられる。
 県立医大で首相は、「甲状腺検査」の模擬検査の様子を見学。調査に当たる職員らを「力を合わせて健康管理をバックアップしたい」と激励した。(共同)】

楢葉町、6月にも独自の「原子力施設監視委」設置
福島民友ニュース2014年5月19日 
【東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く楢葉町は6月にも、第1原発の廃炉作業が着実に進められているかなどを継続的に独自に検討する「町原子力施設監視委員会(仮称)」を設置する。町が18日までに策定した町地域防災計画に盛り込んだ。
 5月下旬に帰町時期の判断を控える同町では、町内の除染、上下水道や道路など公共インフラの復旧はほぼ終了したが、町民の原発や放射線への不安は根強い。第2原発立地町でもある同町は、同監視委を通じて正確な情報の提供や町民の安全確保につなげたい考えだ】

中間貯蔵施設 政府が対応方針固める
NHKTV5月19日 4時15分
【福島県双葉町と大熊町に建設が計画されている中間貯蔵施設について、政府は、建設用地を地権者から買い取る方針ですが、地元では最終処分場になるのではないかという不安が根強いことから、政府は先月、福島県外での最終処分をどのように法律で定めるか、速やかに方針を示す考えを明らかにしていました。
これについて政府は、中間貯蔵施設の運営をPCB=ポリ塩化ビフェニルの無害化処理を行う国の特殊会社「日本環境安全事業」に担わせ、この会社について定めた法律を改正して、30年以内に福島県外で最終処分することを盛り込む方針を固めました。
また、地元の関心が高い建設用地の補償については、土地や建物だけでなく引っ越し代や避難指示が解除されるまでの家具などの保管費用も補償するほか、墓地についても別の場所への移転など地権者の意向を踏まえて対応する方針を決めました。
政府は今月31日から来月中旬まで十数回にわたって住民説明会を開く予定で、この中で、こうした補償の方針などを説明し建設に向けて地元の理解を求める】

県外最終処分へ8段階 汚染廃棄物、開始時期は示さず
福島民友ニュース2014年5月18日
【県内の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設をめぐり、環境省は17日、福島市で開かれた県の専門家会議で、県外での最終処分までの政府の進め方を8段階に分けて示した。廃棄物の容量を減らす減容化や再生利用、放射性物質の分離などの研究や技術開発から県外に最終処分地を確保するまでの手順を報告した。
 政府は施設への搬入開始後30年以内に県外で最終処分する方針だが、今回の政府手順では段階ごとに開始時期のめどはついていないなど、具体性に欠ける内容】

「ふくしま国際医療科学センター」総事業費220億円で契約
福島民友ニュース2014年5月17日 
【震災と原発事故からの復興に向けた医療の拠点として福島医大が整備する「ふくしま国際医療科学センター」の建設工事について、同大が総事業費約220億円で各業者と契約したことが16日分かった。同センター工事の入札をめぐっては3月、復興需要に伴う資材価格の高騰などが原因で11件中10件が不調に終わったため、事業費を増額して再入札を実施していた。
 工事は、センターを構成する建物4棟の建設工事や電気設備工事など。最初の入札で落札が決まっていた1件を含む11件について9日付で契約した。再入札を行ったため着工時期は当初の計画よりずれ込むが、建物全ての完成は計画通り、2016(平成28)年4月を予定している。
 センターは福島市の同大敷地に整備する。建物のうち最も大きいD棟は地下1階地上8階建て、延べ床面積2万4000平方メートル。病院機能や放射線医学県民健康管理センターが入る】

福島原発事故:収束作業2万人 生涯にわたり調査
毎日新聞 2014年05月17日 10時18分(最終更新 05月17日 10時21分)
【東京電力福島第1原発事故後の収束作業に携わった作業員の健康調査の在り方を議論している厚生労働省の有識者検討会は16日、事故発生から2011年12月までの緊急作業に従事した約2万人について、生涯にわたって調査するとの報告書をまとめた。
 厚労省が今後、調査研究を進める機関を選定する。当時、20代だった作業員もいるため、調査は60年以上続く見通し。来年度から、約2000人を対象とした先行調査を本格化させる。
 これまでも厚労省は、被ばく線量や健康診断の結果のデータベース化を進めており、今後の調査でも活用する方針。(共同)】

■Jヴィレッジは事故対応の拠点になっているはず。あと5年で不要になる?

Jヴィレッジ、2019年4月までに再開 再整備計画策定へ
福島民友ニュース2014年5月19日
【東京電力福島第1原発事故の対応拠点となっているJヴィレッジ(楢葉、広野町)について、県は2019(平成31)年4月までに本来のサッカー用トレーニング施設として使用を再開できるよう準備を本格化することが18日、関係者への取材で分かった。21日に地元2町や日本サッカー協会、東電などを交えてJヴィレッジ復興計画プロジェクト委員会を立ち上げ、再整備に向けた計画の策定に入る。
 20年の東京五輪・パラリンピックに関連した合宿誘致に結び付ける狙いがある。東京五輪に出場する男女サッカー日本代表の強化拠点にするという構想もあり、本県復興の姿を国内外に発信し、双葉郡の地域再生を後押ししたい考え。再整備に向け、同委員会で施設の修繕や機能強化の在り方を検討する】

<高浜原発>優先審査へ…規制委、関電の地震想定を了承
毎日新聞 5月16日(金)21時29分配信
【原子力規制委員会は16日の審査会合で、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)で、関電が引き上げた耐震設計の基になる地震の最大の揺れ「基準地震動」を了承した。最大の課題をクリアしたことで、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)に次ぎ、再稼働に向け審査を優先的に進める原発に選ばれる見通しになった。
 規制委は現在、川内原発の審査に人員を集中し、九電の申請の妥当性を評価する「審査書案」の作成を進めている。今後、関電からの申請を受けて、高浜原発の審査書案の作成にも着手する。ただし、早期の再稼働を目指す川内原発とは異なり、高浜原発は地震想定の引き上げに伴う大幅な耐震補強が必要になる。審査が進んでも年内の再稼働は困難な状況だ。
 関電は4月末、高浜原発と大飯原発3、4号機(福井県)で、想定する震源の深さを従来の3.3キロよりも浅い3キロに変更。基準地震動を高浜原発で550ガル(ガルは加速度の単位)から700ガル、大飯原発で759ガルから856ガルに引き上げた。この日の審査会合では高浜原発について異論は出ず、規制委の島崎邦彦委員長代理は「高浜は山を越えた」と述べた。一方、大飯原発は震源からの距離が約2キロと近いため、「慎重を期す」とさらにデータの補強などを求めた。
 審査を優先する原発について規制委の田中俊一委員長は「(審査の)合格の見通しが立った原発ととらえていい」としている。今月2日の定例記者会見では「地震の問題が残っているが、そこまでいけば(優先原発の)2番手3番手が出てくるのではないか」とも述べた。
 会合後、関電の大石富彦執行役員は「大きな一歩」と評価したが、「耐震計算だけで数カ月かかる」と述べ、早期の再稼働が難しいとの認識を示した】

「再稼働ノー」特養の叫び 高齢者180人 逃げられない
東京新聞2014年5月17日
 
【茨城県東海村にある特別養護老人ホームが「原発事故が起こっても、入所者を避難させない」との同意を、家族から取り付けている。首都圏唯一の原発、日本原子力発電(原電)の東海第二原発のお膝元。東日本大震災を経験し、「高齢の入所者全員を、無事に避難させることは不可能」と思い知ったからだ。特養ホームを運営する女性経営者は、再稼働を止めるのが本筋だと、たった一人で「反対」の声を上げ始めた。 (林容史)
 「東海第二原発再稼働断固反対! 利用者・スタッフ避難できません!」。東海村にある特養ホームの玄関口に、大きな張り紙がある。
 高齢者百八十人が入所する「常陸東海園」。東海第二原発からわずか三キロ。周りには、系列の保育園やDV被害の母子の生活支援施設もある。
 原電が、国に提出する東海第二の適合審査の申請内容をホームページで公表するなど、再稼働に向けて大きな動きをみせた四月下旬。常陸東海園などを運営する社会福祉法人「淑徳(しゅくとく)会」の伏屋淑子(ふせやすみこ)理事長(78)が、施設の玄関口やJR東海駅前の所有地に、再稼働反対を訴える張り紙を掲示し始めた。
 「今、できることを百パーセントやらなくては」。伏屋さんは決意を口にする。
 三年前の東日本大震災で、特養ホームのスプリンクラーは壊れ、一棟が水浸しになった。停電でエレベーターが動かず、歩けない入所者を職員が一人一人抱えて階段を移動した。停電と断水が続く中で、何とか三日間を乗り切った。
 入所者は百四歳の三人を最高に、九十歳以上が三分の一を占める。寝たきりの人は、乗用車なら一人しか乗せられない。自分で食事ができず、体力的にどこまで逃げられるか分からない人もいる。
 「東海第二原発で福島と同じような事故が起きれば、全員の避難は不可能。しかし、逃げる順番を決めることはできない」
 今年三月。万が一の原発事故の際に入所者を迎えに来るよう、各家族に連絡すると「来られない」という答えもあった。
 逃げられないなら、どうしたらいいのか-。追い詰められた伏屋さんは、安全な場所に避難できなくてもやむを得ないと納得してもらった上で、入所を継続させる方法を取った。「退避しません」との同意書を家族から取ったのだ。
 しかし、おかしいのは再稼働を進めようとする国や原電の方ではないのか。「逃げられないなら、再稼働を許してはいけない」。伏屋さんは一人で声を上げ始めた。
 「原発の一番近くで三十七年、福祉の仕事をしてきた。私一人の声でも十分、大きいはずだ」と伏屋さん。「行政は、逃げられない人がいることを前提に、原発再稼働の是非を考えてほしい。私たちは、命を預けている」。突き付ける問いは重い】

脱原発:原告団連携へ連絡会 10月にも設立
毎日新聞 2014年05月19日 東京朝刊
【原発の運転差し止めや廃炉を求める全国の訴訟の原告団が、横の連携を強化して脱原発運動を盛り上げようと、「脱原発原告団全国連絡会(仮称)」を設立する。北海道や茨城県、福井県などの原告団代表者が30日に札幌市で準備会をスタートさせ、10月にも東京で設立総会を開く予定だ。
 「泊原発の廃炉をめざす会(北海道)」によると、全国20カ所以上で脱原発訴訟が行われており、弁護団の連絡会は2011年に結成された。だが原告団の組織はなく、廃炉をめざす会共同代表の小野有五・北海道大名誉教授が、4月に集会で設立を提案した。
 日本原子力発電東海第2原発(茨城県)や九州電力玄海原発(佐賀県)の原告団代表者らが中心となって、各地の原告団に参加を呼びかけている。関西電力大飯原発(福井県)の原告団などが、参加の意向を示している】

クローズアップ2014:「ふるさと喪失」訴訟拡大 原発避難者、原告6800人 国・東電、法的責任争う姿勢
毎日新聞 2014年05月19日 東京朝刊

【東京電力福島第1原発事故の避難者が国と東電に慰謝料などの損害賠償を求める集団訴訟が全国に広がっている。2012年12月の福島地裁いわき支部への提訴を皮切りに、計17地裁・支部に計20訴訟が起こされており、原告総数は6800人を超えた。国内最大規模に発展した集団訴訟の焦点は、「ふるさと喪失」という原発事故特有の被害について法的責任を問えるかどうかだ。【栗田慎一】
【今回の避難者集団訴訟の特徴は、避難先での移住を見据えた住宅取得を含む財物賠償の増額に加え、「ふるさと喪失」の慰謝料を請求の柱に据えていることだ。特に福島、東京、千葉、神奈川など早い時期に提訴した訴訟に共通する。小川さんが原告に加わった福島地裁いわき支部訴訟の弁護団の広田次男弁護士は「ふるさと喪失」について、「地域で人々が築き上げてきた自然やコミュニティー、固有の文化・伝統などかけがえない財産が破壊されたこと」と定義し、「今までの公害・じん肺訴訟にはなかった被害」と訴える。
 国や東電は原発事故の過失責任を否定している。「ふるさと喪失」について、被告側は答弁書で争う姿勢を見せたが、その理由はまだ明らかにしていない。
 ◇賠償制度、不十分
 避難者訴訟の広がりに呼応する形で、原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は昨年12月、「故郷喪失慰謝料」を新設した。帰還だけでなく移住も選択肢になる賠償の方針転換だった。しかし、対象は帰還困難区域からの避難者のみ。原告弁護団は「帰還困難区域外でも除染がなかなか進まず放射線量の高止まりが続く現状を無視している。新たな慰謝料も現行の月10万円の避難慰謝料をまとめて払うという仕組みに変えただけだ」と批判する。
 訴訟の広がりの背景について、公害訴訟や原発事故避難者訴訟に詳しい吉村良一・立命館大法科大学院教授(環境法)は「原賠審が被害の実態をとらえきれていないことに加え、原発ADR(原子力損害賠償紛争解決センター)の和解案に東電への強制力がないなど、国の被災者救済システムがうまく機能していないことへの失望がある」とみる。
 また、避難者から聞き取り調査を続ける除本理史(よけもとまさふみ)・大阪市立大教授(環境経済学)は「避難者たちが戻りたいと言うのは、住んでいた場所に固有で代替性のない要素があるから」と指摘。「それらは地域社会、農地、職場など人によってさまざま。土地や家屋も代々受け継がれてきた守るべきものという意味があり、経済的価値だけでは推し量れない」と提訴に理解を示す】

■ブログ紹介

▶【 時の中で凍りついたまま、核廃棄物だらけにされた町 】〈1〉アメリカCBSニュースhttp://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/7685701.html

▶【福島報告】美味しんぼ問題が隠蔽した、より深刻な問題
福島報告 (2014年05月17日)
http://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/7685412.html#more

▶チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた 2万5564人のアンケート調査で判明
DAYSから視る日々2014年05月14日http://daysjapanblog.seesaa.net/article/396967390.html


 ■暴走する総理、安倍晋三 初歩的な知識に欠き、安保法制懇は学識なしと喝破
 慶大名誉教授の小林氏、安倍書証を初歩的な知識がないとバッサリです。安倍晋三のことを書いたものの中に、安倍晋三は自分の著書のなかで高校時代(成蹊高校)の社会科の教師を「論破した」との自慢話は書かれているとありました。それは自分がそう思っているだけの話で、時代的にも、また安倍晋三の気質から見てもたぶん、その後、まともに社会科(歴史)を学ぶということをしてこなかったのでしょう。歴史、そして教科でいえば政治経済(当時は3学年で履修)をきちんと学ばないまま、「地盤・看板・鞄」の三バンにプラス(一族の)私怨・私恨で国会議員になってしまい、総理大臣になってしまった不幸(国民にとって)があるのでしょう。
 でもそれを選んだ国民(正確には山口県衆議院選挙区第4区下関市、長門市の選挙民)がいるということです。

慶大名誉教授・小林節氏「安保法制懇は学識なし」(上)
日刊ゲンダイ2014年5月19日
【安倍首相の私的諮問機関ですよね。有識者ということですが、どこに学識があるのか疑問です。憲法学の分野では駒大の名誉教授が1人入っておられるが、異端の人です。もちろん、異端だから悪いわけじゃないが、少なくとも、こういう議論をする時には、その学問分野の標準的見解を代表する学者が入ってしかるべきでしょう。
――座長代理の北岡伸一国際大学長はどうですか? 政治学ですが。
 テレビでも議論しましたが、噛み合わない。彼は約200ある世界の憲法の中で、スイスの憲法を取り上げて、国家と国民が協力する憲法を正当化していますが、そんな憲法はスイスだけです。そもそも、国家と国民が協力する憲法というのは無理がある。国民が国家に協力しているかどうかを判断、管理するのは権力側ですからね。国民を「協力しろ」と追い込む憲法になってしまう。こんなもんは憲法じゃない。北岡先生は立派な経歴だが、学者とは思えませんね。自分がお付き合いしたい権力者が気に入るような結論を導こうとしている御用学者にしか見えません。
――他の199の憲法は権力者を縛るためにあるんですね。
 人間は神じゃないから間違いを犯す。金を返さないやつがいるから民法があり、嫌なやつを殺す人間がいるから刑法がある。絶対王政では王様は神様だったから、間違いを犯さないことになっていた。しかし、近代市民革命以降、王の地位には普通の人間が就くようになった。普通の人間であれば、間違いを犯すので、憲法が生まれたのです。この歴史的事実を無視して、立憲主義を否定するのは卑しい行為です。
■立憲主義の歴史を全く知らない安倍首相
――安倍首相は私が最高責任者だ、と言い放ちましたね。
 あまりにもひどいので笑っちゃいましたよ。安倍首相は立憲主義について「王権が絶対権力を持っていた時代の考え方」と言いましたが、これも間違いです。そういう時代には立憲主義という概念がなかったのです。絶対主義のひどさを経験して、市民革命が起こり、二度とこういうことが繰り返されないように憲法が生まれた。安倍首相はあまりに初歩的な知識を欠いています。
――問題はそこまで無理をしてなぜ、集団的自衛権を認めさせたいのか。つまり、理屈じゃないんですよね。ただ自衛隊を海外に出したいのか。そんなふうに見えますが、どうでしょうか。
 積極的平和主義とか言ってNATOにも協力すると言っているでしょう。かつての米国や英国のように、世界の警察になりたいのか。世界中の紛争地に日の丸を立てて、突っ込んでいきたいんじゃないですか。大国と互角に渡り合いたくて。そこで死ぬのは普通の国民です。そう思うと心底、怖くなってきます。
▽こばやし・せつ 1949年生まれ、65歳。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。慶大教授を経て現名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数】

安倍首相はアジアで最も危険な人物=ヘッジファンド首脳
ロイター2014年 05月 17日 08:45 JST
【著名投資家でヘッジファンドのキニコス・アソシエーツを率いるジム・チャノス氏は16日、安倍晋三首相は日本を再武装させようとしているとして、アジアで最も危険な人物だと述べた】

集団的自衛権:創価学会「改憲経るべきだ」
毎日新聞 2014年05月17日 19時47分(最終更新 05月17日 22時58分)

公明、解釈改憲に反対 武力行使 際限なくなる
東京新聞2014年5月18日 朝刊
 創価学会広報室のコメント全文は次の通り。

私どもの集団的自衛権に関する基本的な考え方は、これまで積み上げられてきた憲法第九条についての政府見解を支持しております。したがって、集団的自衛権を限定的にせよ行使するという場合には、本来、憲法改正手続きを経るべきであると思っております。集団的自衛権の問題に関しては、今後の協議を見守っておりますが、国民を交えた、慎重の上にも慎重を期した議論によって、歴史の評価に耐えうる賢明な結論を出されることを望みます。

▶国連集団安全保障:石破氏が将来的に参加検討の可能性
毎日新聞 2014年05月17日 11時33分(最終更新 05月17日 11時38分)

■赤旗で加藤元幹事長、安倍首相批判

解釈改憲誤り 自衛隊が地球の裏側まで
赤旗2014年05月18日号
自民元幹事長 加藤紘一さんが批判
憲法は権力縛るもの 安倍改憲は根本が間違い タレント・元民主党参院議員 大橋巨泉さん

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