原発通信 141号2012/01/25発行
●予算から見ても原子力に偏重している日本と、「シカタガナイ」という「呪文」 本通信139号に掲載した毎日新聞1月22日付「この国と原発 第4部抜け出せない構図 原子力マネー」のグラフを見ていただけたでしょうか。そのなかの「主要国のエネルギー開発費」というグラフがあります。それを見ると日本と米国の総額はそれほど違いがありません。日本、3550億円(2010年度)。米国、4200億円です。しかし、原子力関連に占める割合はと比べると、日本は69%の2481億円、対し、米国は、18%の782億円にすぎません。逆に再生可能エネルギーが占める割合は、米国27%(1153億円)を占めています。 日本は、数値は記事に出ていませんが、2010年で比べると米国の約四分の一です。省エネルギーに割いている割合も同様です。原発大国といわれているフランスでさえ原子力関係に投じている予算は全体の44%です。いかに日本は、原子力に偏重しているかがわかります。ということはそれで飯を食っている人間が多いということです。 一方、それなりに原子力に「見切り」(?)をつけて再生可能エネルギーや省エネにシフトしようとしている米国の姿が見てとれます。 福島第一原発事故前後の原子力関係予算の変化を見てもさすがに「安全・事故対策関係」が11年度予算302億円から12年度は783億円に増えていますが、それは当たり前というもので、交付金や研究費などはほとんど変わっていません。 元経産省官僚の古賀茂明氏は言っています。「原子力を何が何でも造るというのが自民党の政策だった。その政策に公益法人や関連企業、役所と族議員による利権構造がくっつき、一度できると壊せない」と。まさに「シカタガナイ」の世界です。在日オランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレンが、「日本人がシカタガナイから解放された時、日本は変われる」と言ったのは、1996年のことでした。「アカウンタビリティ=説明する責任」という言葉が日本中を席巻していた時代です。 あれから16年近くたっても何ら変われない日本が目の前にあります。アカウンタビリティ、それすらもものにできませんでした。そう、私たち日本人に「呪文」のように響く「シカタガナイ」の言葉と世界です。 ●原発共同体の体質づくりに一役買っている労働組合=電力総連 上記、毎日新聞の特集記事からです。事故後、『原発推進者の無念』なる本を著し、「懺悔」している日本原子力産業協会参事の北村俊郎が言っています。 「終戦直後に結成された戦闘的な日本電機産業労働組合(電産)に懲りた電力会社が、労使協調的な第2組合を育てる努力をしたことが影響している。組合員の待遇を守るために、(さまざまなコストを電気料金に上乗せできる)総括原価方式など現行の枠組みの堅持が必要という点で労組と会社の利害が一致し、原子力推進に関しても会社と同一歩調を取り続け、チェック機能を果たせなかった。」 事故後、「反省」はしているようなので、他の原子力マフィアの連中よりはマシなのかもしれませんが、前号で紹介した「安全衛生リスクアセスメントの重要性」であげていた点を当てはめて考えるとまさにその見本という「人生」を歩んできて、3.11に遭遇したという感じです。自分の行なってきた「仕事の結果」にびっくり仰天してしまったのでしょう。でも、びっくり仰天するだけましです。カエルの顔に何とかという連中がそれこそ掃いて捨てるほどおり、なおかつ「力」をもっているのですから。 ●放射性物質の放出(ばら撒かれ)量、先月から増加 福島第1原発1~3号機の原子炉格納容器から放出された放射性セシウム、1時間当たり計約7000万ベクレル。昨年12月の測定に比べ、約1000万ベクレル増。東電、「作業員の出入りや、がれきの撤去で放射性物質が舞い上がった」と説明。それだけで…? http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120123-00000133-jij-soci 毎日新聞1月24日付によると、東電、汚染水に含まれるセシウムだけではなく、その他コバルトやストロンチウムなど約1000種の放射性物質を除去できる「多核種除去設備」を6月の試運転をめざしているとのこと。それによると、ストロンチウムは3万分の1に減らせるといいます。でも高濃縮されたストロンチウムをどこにためておくのか。 ●東電、先月(12月)分から100ベクレルを超える農産物を賠償 毎日新聞1月24日付。4月より食品に含まれるセシウムの新基準値が施行されるに伴い、先月から施行までに売れなくなった農産物について賠償することにしたといいます。新基準が100ベクレルとなったことを受け、100ベクレルを超えているものについて賠償するというのです。暫定基準値500ベクレルというのは一体何を根拠としていたのか、また100ベクレルというのはどこからと、疑問だらけです。 ●「農家できなくなる」食品のセシウム新基準に怒り 福島民報1月25日 汚染されてしまった地区の人たちは不安と怒り、会津など汚染が少ないと言われているところは、これで「安心してもらえる」という。 http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=9927085&newsMode=article ●河野太郎、「韓国の核燃料再処理を止めよう」とブログに書いています。 【アメリカ政府は、再処理は経済的合理性がない、放射性廃棄物の処理を複雑にするなどと韓国の再処理に反対の姿勢を見せているが、日本があくまでも再処理にこだわっていることが、韓国の立場をより強硬にしている。】 【韓国が再処理を始めるのを止めるためにも、我が国の原子力政策を転換し、再処理から撤退すべきなのだ】(引用)と。 http://www.taro.org/2012/01/post-1151.php 「新原子力規制組織の謎」も興味深いです (河野太郎ブログ「ごまめのはぎしり」) 【最初の資料の最初にこう書いてある。「環境省に、国家行政組織法第三条による独立性の高い外局として、原子力安全庁(仮称)を設置」。 ちょっと読むと、公正取引委員会のような独立性の高い三条委員会をつくるように読めるが、そうではない。単なる環境省の外局なのだ。 そこを突っ込まれて、「三条委員会ではなくて、三条機関です」。こういう誤解をするような書き方をわざとして資料をつくっていることからして、この案はまともではない。組織を混乱させて、役所のグリップを効かせようというのは霞ヶ関の常套手段だ。】(引用)。正しい指摘です。下記に、毎日新聞の記事も貼っておきます。 http://www.taro.org/2012/01/post-1150.php 毎日新聞 <民主>原子力「規制庁」に 「安全庁」から方針転換 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120124-00000094-mai-pol
やっぱり日本の原子力の土台は腐っていた (河野太郎ブログ「ごまめのはぎしり」) 【山本一太特命委員会で、自民党本部に九大、東工大のエネルギー、原子力関係の教授を招いて、原子力関連の人材育成についてのヒアリング。 驚いたのは、学界が果たしてきた原子力ムラのなかでの役割について、二人とも、なんら反省もなく、これからこんな開発をやる、こんな研究をやる、だからそのための人材を育てないと云々と、まるで福島の事故など無かったような能天気なプレゼンテーションだったこと。使命感や倫理感に欠けた人材を供給してきたことに対する反省など全くなし。 こういう人間達に、原子力を任せたくないし、こういう人間達に、原子力に関わる人材育成を任せたくない。】(引用) http://www.taro.org/2011/12/post-1135.php * まったく同感です。自民党内ということで、「安心」して「持論」(本音ともいう)を展開したのでしょう。ヘマをやったという認識すらしていない、唾棄すべく連中です。 ●<震災議事録>緊急本部も未作成か 原子力本部に続き 本当に奴らは何をやっていたのか。危機管理だとか「リスクアセスメント」とかという「難しいこと」をいう以前の問題だということです。まずいことは隠せが習い性ですから。でないと「互助組織」は維持できません。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120124-00000089-mai-pol 九電主催の忘年会に玄海町長と11町議参加やらせメール問題さなか 佐賀 1月25日付赤旗。例年は、すべて九電の餅のようですが、今回は「まずい」と思ったのか、“割り勘”になったそうですが。でも、きっと後で戻ってくるのです。名目を変えて。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-25/2012012501_04_1.html ●核燃サイクル中止要求 民主70人勉強会提言へ 「原子力バックエンド問題勉強会」(会長・馬淵澄夫元国土交通相)が、原発の核燃料サイクル事業の中止を求める報告書案をまとめたそうです。 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012012590070558.html ●核燃サイクル5選択肢 原子力小委「埋設処分」など追加 【現状のプルサーマル発電のほか、使用済み核燃料を再処理せずに地下深く埋設(直接処分)したり、再処理を前提に既存の原発を高速増殖炉に置き換えたりするケースが示されている。安全性や経済性、核不拡散などの観点からさらに検討を進め、今後の路線選択の材料とする。】まだ、「安全性や経済性」などと言っているところが、処置なしというところです。 http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012012502000038.html ●浜岡原発廃炉に署名11万筆 「浜岡原発はいらない浜松の会などが行なっていた署名活動で運転停止以来10万規模の署名が集まったのは初と言います。毎日新聞1月24日付。 | ||