原発通信 237号2012/06/18発行
大飯原発再稼働──原発は、その会社の社長が「肝に銘じて」稼働させればいいくらいのものなのでしょうか。毎日新聞16日付によると、野田首相の再稼働決定を前に福井県庁で会談した関電の八木社長の言葉だそうです。何度も繰り返していますが、「決意」の問題でどうにかなるという問題では無いのです。原発という「機械」の構造的な欠陥と、核という制御できないものを扱ってしまったこと、そして地震・津波等自然現象を相手にした問題ということなのです。 福井県の西川知事は「主な電力消費地である関西の生活と産業の安定に資するため」などと、いかにも“人のためを思って”、さも自分たちのためではないというニュアンスで発言をしています。おおい町の時岡町長の発言にしても、「自分たちのため」という本音を言いくるむ方便にすぎません。 ▶渡辺大熊町長、「災害対策は当然取られている」「判断、尊重したい」…? 17日の毎日新聞に大飯原発再稼働をめぐっての原発立地市町村長へのアンケートが掲載されていました(下記)。そこで気になるのが、またしても福島県・大熊町なのです。渡辺大熊町長、再稼働どう思うかと問われ、「妥当」と答えているのです。双葉町、南相馬など原発被災地の首長は揃って「懸念」を示しています。双葉町の井戸川町長は、「全部を失い再建する土地もない私たちの状態を見るべきだ」と言い、富岡町の遠藤町長は「安全を後回しにする政府に不信感と憤りを感じる」といい、楢葉町の松本町長は「福島の教訓が生かされ」ていないと憤るなかで、大熊町の渡辺利綱町長の見解です。 大熊町は福島第一原発1~4号機が立地している町です。当然ですが、放射性物質による汚染が最もひどく、“もう戻れないだろう”とも言われている町です。そのなかにあって、「災害対策は当然取られているだろうし、関西という大きな経済圏を抱え、地元の雇用など課題もある中での判断。尊重したい」との発言、理解できません。大熊町に原発が誘致されてから何十年、この間、何がこの町に起き、何があったのでしょうか。事故後、大熊町は動向が気になっている立地自治体のひとつです。 脱原発をめざす首長会議の世話人でもある茨城・東海村村長の村上氏は、「ずさんな判断」「ご都合主義では原発事故から国民の生活は守れない」ときっぱりです。村上氏が「国民の生活」と、自分のところ=地元の利害だけではなく広くとらえているのに、かたや「地元=自分」のところだけしか考えられない首長。これ以上語る必要はないでしょう。 また、毎日新聞17日付1面では、脱原発を訴えている山田孝男専門編集委員が「学びなき前進」と題し、「学んだことの証しはただ一つで、何かが変わることである」という教育学者・林竹二氏の言葉を引用しています。(電子版には掲載されていません)。 【「絶対安全神話」への逆行が進んでいる。安全と豊かさを足して2で割ることはできない。学ばず、変わらず、恐る恐る原発依存のアクセルを踏み続けることで豊かさを守れるか】【止めても動かしても危険は同じ、ではない。動かせば、手に負えぬ核のゴミがどんどん増える。底知れぬリスクと背中合わせの豊かさと知るべきだ】と。 昨夜のETV特集「核燃料サイクルの50年 無限のエネルギーを夢みた2兆円国策の迷走」です。番組の最後のほうで、まあ、のんきというか、無責任というか、「その時は私たちはもう(この世に)いないから、あとの世代にがんばってもらうとして…(笑い)」という、原子力ムラのいい加減さを象徴する場面の録音が流れていました。そのツケを、これからの世代が何世代にもわたって払っていかなければならないのです。それは、ある意味「戦争責任」などという問題より深刻です。そう、謝罪して済む問題ではないのですから。 東京都議会 原発投票条例案を委員会で否決 【原発の稼働の是非を問う住民投票を東京で行うため、市民グループが制定を求めている条例案は、18日開かれた東京都議会の委員会で採決が行われた結果、否決】 【自民党と公明党は「エネルギーの問題は国が戦略的に決めるべきで、都民だけで判断を下すことはふさわしくない」として、反対する考えを示しました】 【石原知事は「国が責任を持って判断するべきだ」】そうです。ならば、尖閣諸島買い上げ問題はどうなんでしょッ。 【20日開かれる都議会の本会議であらためて採決が行われますが、自民党と公明党など条例の制定に反対する勢力がわずかに過半数を上回っているため、否決される公算が大きいとみられています】 不可解な福島県大熊町長渡辺利綱町長 ▶大飯再稼働決定:福井4市町は肯定的 福島は意見割れ 【埼玉県加須市で集団避難生活を送る福島県双葉町の井戸川克隆町長が「全部を失った私たちの状態を見るべきだ」と苦言を呈したのに対し、大熊町の渡辺利綱町長は「尊重したい」と答えた】(下記表参照) 大飯再稼働決定:「非常に残念、全基廃炉を」福島知事 【佐藤雄平知事は16日、大飯原発再稼働について「何よりも住民の安全・安心の確保を最優先に対応すべきである。(福島第1原発の)事故の検証さえ終わらず、原子力安全規制体制も確立しない中で、国が再稼働を決定したことは、非常に残念だ。一刻も早い事故の収束と県内原発の全基廃炉を引き続き求めていく」と】 この記事の下に「大気中の環境放射線量」の表あり、14日の福島市は1.02μシーベルトと、いまだに1μシーベルトを超えています。 「必要だから安全」本末転倒 前福島知事佐藤栄佐久氏に聞く 【-野田佳彦首相は「福島を襲ったような地震、津波が起きても事故を防げる」と断言した。 「言葉遊びに過ぎない。福島第1原発事故の詳細が分かっていないのに、なぜ断言できるのか。絶対に原発を動かしたいから『絶対に安全だ』と強調する。本末転倒だ。日本の統治機能の低下は深刻で、世界から笑われてしまう」】 そして、 【国民一人一人が自分の頭で考え、意思表示することが大切だ」】とも。 ![]() ![]() (毎日新聞6月17日付) 各社社説 ▶大飯再稼働決定 脱原発の流れ止めるな 【事故から1年3カ月が過ぎても、これからのエネルギー政策をどう進め、その中で原発をどう位置づけるのか、明確なビジョンを示していない。過酷事故対策も先送りしたままだ】 【そうした状況の中で、なし崩し的に原発を再稼働する政府の姿勢をとうてい受け入れることはできない】 【電力不足が言われたことで国民の意識も高まり、企業もさまざまな対策に乗り出した今こそ、社会の変革を加速させるチャンスだ】 ▶大飯原発が再稼働へ 私たちの望む未来は 【原発の安全をはかる物差しが、今この国には存在しないのだ。 経済の繁栄は、原発ではなく持続可能性の上に立つ。技術立国日本こそ、グリーン経済移行の先頭に躍り出るべきなのだ】 ▶大飯再稼働―原発仕分けを忘れるな 【私たちが昨年来、求めてきたのは全原発の「仕分け」だ。 規制委や規制庁がまず取り組むべきは厳格な安全基準の策定だ。それに基づいて、すべての原発を評価し直し、閉じる原発を決めていく。再稼働はそれからだ】 ▶大飯再稼働決定 着実な発電開始に万全を期せ 【電力危機を回避するため、首相が責任を持って再稼働を決断したことを高く評価したい。 政府は、福島第一原発事故の教訓を反映した判断基準を1年以上かけてまとめ、その基準に沿って大飯原発の安全性を確認した。地元の福井県と、おおい町の同意も得られた上での決定だ】 ▶大飯原発 来月再稼働 課題何も解決していない 【知事は「同意」条件として、安全性向上や人材育成、立地地域への支援、日本海側の地震津波調査の強化といった地域対策を要望しただけではない。再稼働への国民、消費地の理解やエネルギー問題で強いリーダーシップを求めたのだ。ぶれる政府に立地地域が振り回され続けてはたまらない。国内の停止原発はまだ48基もある。首相の「現実的判断」だけでは次の再稼働につながるはずもない】 【県原子力安全専門委員会は科学的知識のある学者で構成】 【放射性廃棄物の最終処分問題など、もう放置できない状況にきている】 【地域経済を原発に頼ってきた地元は今後「原発依存体質」からの脱却が求められることになる】 【国の防災指針も県の原子力防災計画もほとんど手つかずのままでは住民の安全は図れない。避難対策は喫緊の課題で、隣府県との広域連携へ協議組織が必要】 ▶大飯再稼働 「安全神話」繰り返すな 【原発の安全性に対する国民の不安を置き去りにした見切り発車と言わざるを得ない】 【原発は本来危険な施設である】【このことを福島の大惨事で思い知らされたはずだ】 【安全、防災の両面で対策が途上にある段階で、安全性が確保されたと宣言する根拠は全くない】 【電力不足の回避を優先した安易な選択は、「原発ゼロ」の夏を節電で乗り切ろうとしていた多くの国民の意思にも反する】 【「私の責任」という空疎な言葉で押し切った首相の態度は、原子力行政への信頼回復を一層困難にするだろう】 ▶大飯原発再稼働/「福島」を忘れ去るつもりか 【事故への何の反省も示さないまま、この期に及んでなお「安全神話」を振りまく】 【一国のリーダーとして、その重大性をどこまで理解しているのか甚だ疑問だった】 【原発事故は決して福島県だけの問題ではない。事故で放射性物質がまき散らされたら、どこまで広がるか予想もつかない。その教訓を置き去りにした原子力政策はあり得ない】 ▶原発再稼働決定 「福島」の教訓を忘れたか 【最大の問題は、はなから「再稼働ありき」だったことである】 【専門家からは、大飯原発の敷地内の「破砕帯」が近くの活断層と連動して動き、地表がずれる可能性が新たに指摘されてもいる】【事故が起きた場合の対策も十分ではない】 ▶原発再稼働 これが法治国家なのか 【そもそも、(2)の新たな安全規制の仕組みづくりは、民主、自民、公明の3党が基本合意した段階である。再稼働までの政府の手続きが、事故を踏まえた新たな法的根拠を欠いていることは明らかだ】 【大事故が起きたというのに、政府の判断で原発を動かすというのは信じ難い。これで法治国家といえるのだろうか】 【首相の言う「国民的議論」は欠かせないプロセスだが、どんな形で国民の声を聞くつもりなのだろうか】 大飯再稼働決定に調子づき、さらなる脅しをかけ全原発再稼働を企む ▶<大飯再稼働決定>経済界に懸念なお この間の1年以上にわたって何もしてこなかった電力会社・政府の怠慢を、なぜ問題にしないのか。中村愛媛県知事の発言など、住民の生命・財産を守る行政のトップとして無責任極まるものです。 【九州電力の瓜生道明社長は4月の報道各社とのインタビューで、「長期間かけなければ再稼働できないと明白になれば(値上げを)考えなければならない」と懸念】 【中村時広・愛媛県知事は「阿南にアクシデントがあると、一気に7~10%の供給力がなくなる。本当に綱渡りだという認識を持つ必要がある」と警鐘を鳴らした】 ▶<大飯原発>フル稼働は7月24日 夏の電力綱渡り 【資源エネルギー庁によると、大規模な病院、鉄道や空港などは計画停電になっても電力を供給し、人工呼吸器利用者は事前に計画停電区域外に移動してもらう準備を進めているという】 福島をあんな目にあわし、今なおそのままにしておいて、いつから「心優しい資源エネルギー庁」になったのか。野田首相の「人工呼吸器利用者」を持ち出しての発言のおうむ返し以外の何物でもありません。そうしたものを持ち出せば丸め込めると思われている国民、低く見られているもんです。 奈良市長、再稼働を決定した野田政権を批判 ▶大飯原発再稼働 知事は節電推進 奈良市長は政府批判 奈良県と奈良市のことです。この記事、タイトルを見て何だろうと本文を読むと、知事は原発再稼働容認ながらも節電続行で、奈良市の仲川げん市長は【「日本が再び原発と命運を共にする決断をしたことは残念だ。放射能という見えない敵と戦っている原発被災者の苦悩を考えると、国として本当にそれでいいのか」と政府の決定を批判】ということです。 民主党政権が嫌いということで「政府批判」という部分だけを見出しにし、中身を言っていないところが産経新聞です。 ▶原発立地自治体 つらさは消費者も共に 【収入源を失うことで、暮らし向きを心配するのは当然だ。しかし、使用済み核燃料の後始末一つとっても、原発の未来は危ない。原発マネーは永続しないだろう。それより、有望な自然エネルギーの生産拠点や今後、絶対に必要な廃炉ビジネスの研究拠点などに生まれ変われるよう、ともに政府に働きかけたい】 志賀原発で事故を想定した避難訓練をめぐる各自治体の反応 先日、原子力防災訓練が行われたそうです。原発建設をめぐって、「いま大金を貰えるなら100年後、50年後に生まれてくる子供が全部カタワモンでも仕方ない」というトンデモ発言をし、いまお金をもらった方が得と言い放った当時の高木孝一敦賀市長に拍手喝采した志賀町、志賀原発関連記事です。 ▶原子力防災訓練:志賀原発事故想定 30キロ圏外へ、全国初訓練 知事、訓練の成果強調/石川 【原子力防災訓練が9日午前、富山県と共同で約2500人が参加して行われた。北陸電力志賀原発2号機(志賀町)が地震で全電源を失い、放射性物質を外部に放出する事故を想定した。原発から半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)内で暮らす8市町の住民約800人が船やバスで圏外の金沢市や輪島市に避難した】 ▶原発防災訓練:アンケート 志賀町住民は「無駄」最多 全体では肯定的評価/石川 【全体では訓練の意義を認め、継続を望む回答が34%で最も多かったが、志賀町の住民は「重大事故が起きたら、何をしても無駄」と訓練自体に否定的な回答が31%で最多となった】 【「原発に近いほど福島第1原発の事故の衝撃が大きく、諦めの気持ちが強いのだろう」】と。 ▶志賀原発:核燃料税17%に 引き上げ条例案提出 県、再稼働「関連せず」/石川 石川県、【北陸電力志賀原発(志賀町)に課税する核燃料税の税率を現行の12%から17%に引き上げて増税する条例改正案を提出】 鹿児島県知事選に続き、山口県知事選に脱原発を掲げる飯田哲也氏出馬 ▶山口県知事選:脱原発掲げる飯田哲也氏が立候補表明 【NPO法人「環境エネルギー政策研究所」所長で、脱原発を掲げる飯田哲也(てつなり)氏(53)が17日、山口県知事選(7月12日告示、29日投開票)への立候補をツイッターなどを通じて正式に表明した。22日に山口市で記者会見し、政策を発表する】 先日も報告しましたが、飯田氏、出馬です。 ▶脱原発首長会議:首相宛て抗議文提出へ 大飯再稼働決定で 【原発に依存しない地域づくりを目指す「脱原発をめざす首長会議」の世話人らが17日、東京都内で会見し、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の3、4号機再稼働を政府が正式決定したことに対する抗議文を、18日に野田佳彦首相宛てに提出すると】 こんなずさんなのに、「国民生活を守る」だと! ▶米の放射線実測図、政府が放置 原発事故避難に生かさず 以前から指摘されていたことですが、「放置していた」のではなく、「隠していた」ということです。 【同システム(=SPEEDIのこと、引用者)の予測値と決定的に違うのは、米エネルギー省のデータが放射能の拡散方向を示す実測値だったことだ】 【東京電力福島第一原子力発電所の事故直後の昨年3月17~19日、米エネルギー省が米軍機で空から放射線測定(モニタリング)を行って詳細な「汚染地図」を提供したのに、日本政府はこのデータを公表せず、住民の避難に活用していなかったことがわかった。放射性物質が大量に放出される中、北西方向に帯状に広がる高濃度地域が一目でわかるデータが死蔵され、大勢の住民が汚染地域を避難先や避難経路に選んだ】 参加者18名のイベントのほうが重要?! 今朝のNHKTVニュースで、「お茶畑の中心で愛を叫ぶ」というニュースを「全国版」で流していました。参加者18名のイベントだったそうです。長年連れ添った連れ合いに「愛しているよ!」と叫ぶのをとやかく言うつもりはありません。しかしです、参加者18名のイベントと、6.15首相官邸前に集まった1万の抗議の声と…、考えてしまいます。これが今の日本のマスコミ状況です。 付け加えるならば、先日(17日)のテレビ朝日「学べるニュース緊急生放送 池上彰が~」という番組で原発問題、東電の電気料金値上げを取り上げていました(途中から見たのですが)、まあ、ひどい内容です。原発を動かさないと電力不足になるとし、料金については、「総括原価方式」を間違って解説するなど、トンデモの内容でした。さもわかっているようなフリして「解説」しているところ、池上彰、「犯罪的」です。 | ||