原発通信 276号2012/08/09発行
![]() 永田町の新作ドタバタ喜劇『近い将来』……フクシマは何も変わっていないのに 「近い将来」を「近いうちに」に変えさせただの、「近いうちに」ということにこだわる必要はないだの、みんな決めちゃってから「信を問う」だのと、何から何までめちゃくちゃです。 昨夜ニュースを見ていると、例の三党の代表たちが一堂に会しての「談合」場面が写っていました。その時も、その後の記者会見でも、彼らの目、泳いでいました。こういう時、テレビの力というものを感じます。視点は定まらず、キョロキョロ、不安げな表情、なぜなんだよというような表情が映し出されていました。その彼らの顔を見れば、その後の話など聞く必要がないほどに。野田首相、あれほど「決める政治」だのなんだのと言っていた時の根拠なき自身顔はどこへという感じです。 谷垣にいたっては、困ってしまった優等生顔、石原にいたっては、日ごろ勢いだけの人ですから、勢いがなくなってしまったやんちゃ坊主という顔です。すまし顔の山口公明党代表、試験前の徹夜で一夜漬けをしていたという顔つき。でも、この人らに私たちの将来が握られているかと思うと、なんでこんな連中に投票などしてしまったのだと思わずにはいられません。 つくづく感じるのですが、いい顔した政治家、いなくなりました。部課長どまりというような風情と顔つきです。余りにバカバカしいので、映画の「釣りバカ」をやっていたので、そっちを見ていたら、なんと三国連太郎のいい顔か。映画とはいえ、ちゃんとした社長顔です。 「福島の再生なしに日本の再生ない」などと大見得を切ったことさえ忘れ、それより、俺の「就活」がまた始まるとばかり、写真や履歴書の準備や圧迫面接に負けないような想定問答集作りに励む面々。「入社したらこれができます」と言わなきゃならない時代だそうなので、それにならって、できるかどうかは知ったこっちゃないが、「カラ手形」づくりに精を出します。そして、お盆返上で、会社回りならぬ選挙区回りでしょう。フクシマは何も変わっていないというのに…。 それにつけても、野田は一体何になりたかったのでしょうか。「社会保障を改革した宰相」として名を残す、「真夏の夜の夢」でも見たのでしょうか。 ▶<長崎原爆の日>誓いを新たに 平和祈念式典に5900人 【田上富久市長は平和宣言で、核兵器の非人道性を強調し、核兵器廃絶に向け具体的な行動を取るよう国際社会に呼びかけた。また福島第1原発事故を踏まえ、「放射能に脅かされることのない社会の再構築」を政府に訴え、そのための新しいエネルギー政策を示すよう求めた】 【原発問題に関しては、高レベル放射性廃棄物の処分についても「国際社会が解決に協力すべきだ」と指摘したが、「脱原発」の文言は昨年に続き盛り込まなかった】 広島に続き今日は長崎に原爆が投下された日です。核兵器と原発、底で繋がっているのもかかわらず「原子力の平和利用」との名であたかも違うものであるかのように装うことに成功したかに見えたが、3.11以後、その化けの皮がはがれたというのに、やはり長崎でも原発には踏み込めません。 核・核兵器・原子力・原発、皆同じということは、本日の「寄せられた情報」にある「福島第一:原子力発電所から核兵器第一へ」にも書かれているとおりです。 未曽有の出来事が起きていることが呑み込めていない連中 ▶海水注入「もったいない」=東電本社、廃炉恐れ―吉田所長は反論・福島原発事故 「海水を使って冷却をなぜしないのだ」と、福島第一原発で事故が起き、水がなく冷却できないでいるとのニュースを聞いたとき、真っ先に思いました。今回公開された映像から、「海水など入れたら後で使えなくなっちゃうだろう」と、何千億円もかけたプラントのことのみしか頭にない東電の思考というものが明らかになりました。 しかし、これ、何も東電だけではないのです。事故後、テレ朝の報道ステーションに出ていて、その後、政府事故調の委員になる吉岡斉さん(九州大副学長)も、海水をどんどん入れて冷やさなければならないという意見に対して、ボソッと小声で、「そんなことしたら使えなくなっちゃう」とつぶやいていたのを私は聞き逃しませんでした。吉岡さんにおいても、莫大なお金を投下してつくったということをよく知っているだけに「もったいない」精神が働いたのでしょう。それを聞いたとき、「えっ、吉岡さん、何を言っているの」と驚き、一緒にテレビを見ていた連れ合いに、「吉岡が海水入れると壊れちゃうなどバカなことを言っているぞ」と話したこと覚えています。 それほど事態が緊迫しているなどとは「専門家」の「方々」は理解していなかったのです。素人の私ですら「やばい!」と思ったのに、「アンゼン教」の信者たちは、「制御できる」と思っていたということです。しかも、笑い交じりというのですから、神経どうかしています。 【海水注入を準備していた同原発の吉田昌郎所長(当時)に対し、本社側が「材料が腐っちゃったりしてもったいない」などと指摘していたことが8日、東電が公開したテレビ会議の映像で分かった】 【13日夜、東電本社で復旧計画の策定を担当する復旧班の人物から、 これに対し、吉田所長は 【この後も復旧班から ▶小出裕章氏:「原子力安全委員会の人は現場に行くべきだった」 *たね蒔きジャーナルが放送中止になりそうとのことです。 小出:私は本来であれば、原子力安全委員会という組織にいた人たちが現場に行くべきだったと思います。 水野:なるほど! だから現場との温度差がずーっと並行してあるんですね。 小出:そうです。1979年にスリーマイル島の原子量発電所の事故が起きましたが、その時には、現場に原子力規制委員会の人達が行って、そこで対処しました。 水野:行ったんですか!アメリカでは。 小出:はい。 水野:はぁ~!なるほど。今回はずーーーっと、もうテレビ会議で、 小出:斑目さんは、そうです。斑目さんは官邸に居座っているのですね。で、他の安全委員の人がなにをしていたのか、一言も聞こえてこないという、そういう状態です。 ▶東電テレビ会議公開 新潟と東京の知事、全面公開求める 【社内テレビ会議映像の公開方法を巡り、新潟県の泉田裕彦知事は8日の記者会見で「全面公開すべきだ。(一部公開は)疑念を呼ぶ。マイナス以外の何物でもない」と批判した。泉田知事は東電柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の安全管理などを専門家が議論する県技術委員会に対し、福島の事故の検証を要請しており、同委員会の判断によっては、東電に全面公開を求めるとした。 株主の東京都も8日、情報公開の徹底を求める石原慎太郎知事名の申し入れ書を東電に提出した。公開された映像が事故発生から150時間分に限られ、閲覧も報道関係者に限定された点を「十分とは言えない」と指摘】 もんじゅ、どうして復旧したといえるのか 3.2トンもあるものが原子炉内に落下し、何の問題もないなんて「到底」思えません。まして、「トラブル前の状態に復旧した」などと、どうして言えるのでしょうか。役員の給料を1ヵ月1割ほど減らしただの、ダメじゃないかと注意して終わりとは、いい気なもんです。 ▶装置落下の復旧完了=もんじゅ、費用21億円―原子力機構 【「もんじゅ」で2010年、燃料交換用の装置が原子炉内に落下したトラブルで、日本原子力研究開発機構は8日、新たに製作した装置が正常に動くことを確認し、トラブル前の状態に復旧したと県や敦賀市に報告した】 【原子力機構は昨年6月、装置を回収。経済産業省原子力安全・保安院の検査を受け、新たな装置で正常に燃料が交換できることを確認した】 【中継装置の回収や新規製作などに21億円かかったという。原子力機構はトラブルの責任を問い、鈴木篤之理事長ら役員4人は給与の10%を1カ月間返納、もんじゅの近藤悟所長は厳重注意の処分とした】 ▶<もんじゅ>事故前の状態に復旧 炉内中継装置が落下 【保安院が8日、「落下に伴う設備への影響は認められない」「分析は適切に行われている」などとする評価結果を発表したことを受け、復旧完了を宣言】 ▶保安院:「泊と川内に課題」安全評価の審査結果案 【設計上の想定を上回る地震や津波があった場合の対策について、確実に実施するには課題が残るとの見解を示して最終的な評価はしなかった。判断は9月発足の原子力規制委員会に委ねる】 【泊原発では建屋扉の防水性が高い扉への取り換え、川内原発では大容量の電源車の配備などが未完了であり、「課題はあり、対策の実現可能性を確認することが必要」とした】 これぞトンデモナイ話──何があってもカネは自分たちの懐に ▶大飯原発断層調査 不備指摘も… 同じ会社(三菱系)が再調査 志賀・敦賀でも受注か 30年前に自分が「大丈夫」と評価していたものをやり直せといわれて、「いや、間違っていました」などというものでしょうか。とんでもないにもほどがあります。原発マフィア、何があっても、起きても、自分たちの身内にカネが回るようになっています。 【関西電力大飯原発(福井県おおい町)の敷地内にある断層の再調査を経済産業省原子力安全・保安院が指示した問題で、この調査業務を関西電力が三菱グループ系の地質調査会社「ダイヤコンサルタント」に委託したことが7日までにわかりました。同社は、調査の不備を指摘された同原発内の地質調査を30年前に受注しており、再調査を同社に再委託した関電の姿勢に批判が集まりそうです】 ▶電力各社は値上げならリストラを 経産相が要求 【経産相は「値上げをする時になって(リストラを)やるというのは許されない」と指摘。値上げ幅を抑制するため、リストラ策を早期に実施するなど経営努力を強く求めた】 ▶原発ゼロ:首相の指示巡り神経戦…「非現実的」経済界反発 【特に原発をゼロにした場合の経済への影響を不安視する経済界に対し、枝野幸男経済産業相が「原発ゼロは経済にはむしろプラス」と発言。これに経団連などが激しく反発する構図】 【経済同友会の長谷川閑史代表幹事は8日の会見で「根拠を数字で示すべきだ」と述べ、枝野氏の発言に強い不快感を表明】 盗人猛々しいというか、「根拠を数字で示すべきだ」だと! 冗談じゃない、原発安全だということ、根拠を示せ。また、安いだの、どうだのということもきちんと数字で示してみろといいたい。都合の悪いことは隠したり、自分の財布から出すことなど毛頭考えていないで何言ってるんだと。 仙谷にいたっては、調子よく、中庸の精神で「ゼロはちょっと非現実的」と、15%案がいいんじゃないのと、「気分」で言っています。 ![]() ▶菅氏、官邸前デモ「高く評価」 東電会議映像を批判 【「組織化されていない市民の参加が多い。国民の意思表示として高く評価している」と述べた】 【福島第1原発事故について「よく止まってくれたなという思い。最初の1週間を思い出すと、背筋が寒くなる」と振り返った。「首都圏3千万人が避難を強いられる可能性があり、国家存亡の危機だった。再稼働を求める声もあるが、今回の事故の意味やリスクの大きさを忘れた議論だ」とくぎを刺した】 と、それはいいのですが、野田を何とかしろといいたい。 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶伊方原発の安全評価書類に16カ所誤記/愛媛 【格納容器の上ぶたを外すクレーンの寸法図の表記16カ所に誤記があったと発表した。正誤表を原子力安全・保安院に提出。安全評価自体は正しい数値で実施しており、四電は「審査には影響しない」としている】 その理由、なんとコンピュータソフトの問題だというのです。ということは、それ以外にもありそうだということです。一事が万事です。そして、原発=原子力を扱うものは、ミスはゼロでなければ困るのです。しかし、所詮そんなもの無理、だから、止めるのです。 ▼寄せられた情報 下記の記事は、海外で配信されている福島事故についての報道です。内容は、事故は始まったばかりで、事態は深刻化している。それを日本のマスコミは全く伝えていない。その理由は、戦後の原発=核政策から見なくては見えてこない、というもの。長いですが、全体を掌握するにはよい記事だと思います。最後に紹介されている斉藤貴男の「東京電力の研究」は良いという評判です。(K) ▶福島第一: 原子力発電所から核兵器第一へ 【主要項目】 • アルベルト・アインシュタインの警告と福島第一原発の不吉な運命 • 実験室としての日本 • 福島の大災害は、いまだ初期段階にすぎない • ゆっくりではあるが確実な大量破壊兵器として機能する放射能 • 一体誰が信じられる情報源なのか? • 科学的合理性と、精神病院の不合理な行動との出会い • 放射性廃棄物: 核サイクルの“バックエンド” • 核エネルギーのフロンティアを拡張する • チェルノブイリ、福島と帝国の崩壊 • アインシュタイン対リッコーヴァー | ||