原発通信 283号2012/08/28発行
![]() 何が起きたか、何が起きているかを知ること これも仕事で分かったことなのですが、この夏、教員からアンケートを取ったのです。原発、放射線問題、福島第一原発事故について、いかに「知らない」か、情報が届いていないか、あるとしても偏った情報でしかないかということを実感しました。本通信279号で福島の教員の話を紹介しましたが、「何も収束していない」にもかかわらず、「除染が進んでいるので、もう家へ帰れるんでしょう」との話が、福島県内からも聞かれるという現実があります。まして福島県以外ではと考えてしまいます。そんななか、毎日新聞に福島県広野町のお母さんの声が載っています。 【身重の妻を抱える男性が「だれが安全と保証できるのか」と尋ねると、内閣府原子力災害対策本部担当者の答えは「安全だと考えています」。線量計を常に持ち歩く智子さんは思った。「『安全です』ではなかった。自分で守るしかない」。心に決めた数値に下がるまでは戻れない】 そう、今や「安全だと考えています」では信用できないのです。このお母さんが言うように、「安全です」とは言っていないというところに原発・放射線被曝問題があるのです。ならば、「自分で守るしかない」と考えるのは自明です。このアンケートにも、福島をはじめ被災地からの生の声を聞くことにより、「報道されているものと違う」「福島のことは、どうしてメディアでほとんど知らされないのでしょうか」「真実が隠されていると本当に思います」という意見が多数ありました。 いかに情報を集め、それが正しいのかどうか判断していく──メディアリテラシーが、まさに問われているし、得た情報をまわりの人と共有していく・語り合うことの重要性がますます求められているのです。 情報ついでに「こんなのでいいの」と思った毎日新聞記者の感覚を紹介します。広野町のことが書かれた記事の下のあった記事「憂楽帳」からです。 シリアで銃撃されなくなった山本美香さんに触れて書かかれています。。 【では危険地帯に入る判断だが、新聞社の場合、今は本社が決める傾向が強い。通信網の発達で情報が瞬時に入手でき、戦況が大体はわかるからだ。本社の合議で「あえて行くほどのニュース価値はない」という判断が下され、現場の記者がそれに従えば、フリーの記者に比べ安全度は確かに高まる】 今は、「通信網の発達で情報が瞬時に入手でき、戦況が大体はわかるからだ」などと、さらりと書いてしまう神経にぎょっとします。ネット社会で育った世代なのでしょうか。瞬時に何が起こっているか離れていてもその情報は手に入り、わかると。そうなのでしょうか。わからないから山本さんは「現地」へ取材に入ったのではないでしょうか。何か、本工主義丸出しのにおいをそこに感じてしまうのは私だけでしょうか。 先のイラク戦争でも中東からの報告という記事をよく目にしましたが、よく読むと戦場から離れた「カイロ」から書かれ、東京に送信されていたりします。それが事実かどうかわからないのです。あまつさえ、「本社がニュース価値があるかないかを判断し、それに従えばいい」というのです。「大本営発表」までもう少しです。でも、最後に、「行ってみて初めてわかる事実も少なくないのだ」と書いているのでまだ救われるところはあります。 『貧困大国アメリカ』を書いた堤未果さんが『政府は必ず嘘をつく』でも書いていますが、一方の情報だけでは見えてこないものがあるのです。まさにここでも「見たくないものは見ない。見たいものは見える」の世界なのです。 ▶広野町で学校再開、児童生徒8割姿なく 「安全な古里」遠く ▶憂楽帳:じかに見なければ ▶野田首相:民主党代表選 再選を目指し出馬する考え示唆 【2030年の原発比率をめぐる意見聴取会などで「原発0%」の支持が多数を占めていることに関し、「どういう課題があるか、よく議論せずに結論は出せない。最初から決め打ちはしない」と】 【「原発ゼロ」への対応について「意見聴取会や討論型世論調査、パブリックコメントは積極的に関心を持つ方の傾向だ。メディアの世論調査などとは違う傾向がある」と指摘】 麻雀といっしょにされては困ります。「どういう課題があるか」なども検討しないで、ゼロがいいですか、15がいいですか、20がいいですかなどと聞いていたということです。 「意見聴取会や討論型世論調査、パブリックコメントは積極的に関心を持つ方の傾向」であり、客観的でないとでも言いたいのでしょう。メディアそのものが信用されなくなってきているのだということに気が付いていないようです。というより、都合の悪いことは、「違うのだ」と思いたいというだけでしょう。 調査した内閣府の職員ですら、今回の反応について、 【「あまりに膨大な数でした。正直に言うと、国民の原発問題への関心の高さを、甘く見すぎていたかもしれない。寄せられた意見が多すぎて、こちらの対応が追いつかないほどです」(内閣府中堅職員)】(週刊現代)といっているように、それだけ「国民の関心」が高いとは、野田首相、認識しないようです。 そのうち、各紙やTVがやる野田内閣支持率をいうのが出たらなんというのでしょう。支持されていないのに(?)「責任もって」「決める政治」を勝手にやるということですか。 ▶特集ワイド:原発ゼロの世界/上 存続派の「まやかし」 【「国民が知りたいのは原子力の比率をどうするか、などではない。再稼働をするかしないか、するならば、どこの原発を動かすのかという点です。2030年に0%、15%、20~25%という政府の選択肢の示し方は、さも15%が中庸であるかのように見せかけ、世論を原発存続へ誘導しようとしたとしか思えない」。そう憤るのは、「原発のコスト」の著書のある大島堅一・立命館大教授(環境経済学)だ。】 【そもそも政府が有力視していた15%は「中庸」と呼べるような案だったのか】 【脱原発を掲げるNPO法人「環境エネルギー政策研究所」の松原弘直・主席研究員は「この15%案は、(6月に改正した原子炉等規制法にある)『40年廃炉ルール』に沿ったものと言われていますが、実は“原発ゼロを緩やかに実現する案”などではありません」と言い切る。「原子力15%とは、既に稼働中の大飯に加え、40年廃炉ルールに抵触しない浜岡や福島第2、福島第1の5、6号機を再稼働させ、さらには建設中の島根原発3号機(松江市)や大間原発(青森県大間町)まで動かし、しかも設備利用率は震災前より高い70%を想定しない限り実現しない数値なのです」。つまり、ほぼ“フル稼働”させねばならないのだ】 【使用済み核燃料を一時保管する全国各地の使用済み燃料プールは、容量約2万トンのうち1万4200トンまで埋まっている状態だ(昨年9月末時点)。青森県六ケ所村の再処理工場にある燃料も貯蔵プール容量の9割を超えている】 【松原さんが言う。「使用済み核燃料の発生を可能な限り止め、核燃料サイクルを即時中止すべきです。15%案では使用済み核燃料はさらに増え続け、廃炉までに要する時間も延びる。つまり、リスクがより長く続くことを意味しているのだから」】 【討論型世論調査やパブリックコメントで「原発ゼロ」への支持が増えた背景には、「安全性の確保」重視の姿勢に加え、こうした数字のうさんくささを国民がかぎつけ始めたからだろう】 【現状は、補助金という形で、国民の税金によって原子力コストの一部を肩代わりしているだけです。それどころか、事故リスクを含めればどの電源よりも高くつく」と大島教授】 【松原さんは「エネルギー選択をするに当たって、最も大切なのは原発事故リスクをどう評価するかだ」と言う。「電気料金や経済への影響についての政府の試算や経済団体の試算は全て、もう原発事故が起きないことを前提にしている。けれども、これは『安全神話』に過ぎません」】 ▶「最終処分場」大隅半島9自治体が反対 【原発事故で放射性物質に汚染された土を捨てる最終処分場の候補地に鹿児島県南大隅町が浮上していることを、先週、お伝えしましたが、地元の9つの自治体の町長らが反対することで合意しました。 「農業、水産、畜産が壊滅的打撃を受ける。反対をさせていただきたい」(嶋田芳博 鹿屋市長) 鹿屋市の嶋田芳博市長によりますと、鹿屋市や南大隅町など、鹿児島県の大隅半島にある9つの自治体の市長と町長全員が、汚染土の持ち込みに反対することで合意したということです】 ▶細野原発事故相:核燃サイクル「技術残して」 対談本で持論 細野「原発再稼働」大臣です。 自分でも言っている(下記)のに、まだ目が覚めていないようです。まして、核燃料サイクル技術が世界に貢献できるなどと思っているのです。それで核軍縮をなどといっているところにトンチンカン、勘違いさがあらわれています。 【使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルに関して「技術は残し、世界に貢献できる道を探るべきだ」と述べ、国が関与して技術を維持すべきだとの考えを示した】 【「再処理技術の確立で(世界の)核不拡散に貢献でき、国連安保理常任理事国に核軍縮を迫れるかもしれない」と指摘】 【「原発のない社会が実現できれば本当にいい。ただ現段階でそれが可能かどうか確信はない」と述べ、早期の「原発ゼロ」には懐疑的見方を示した。】 ただし、次のようなことも言っています。相当に危機的な状況だったということです。 【昨年3月14日に同原発2号機が注水不能になった際、吉田昌郎所長(当時)から直接電話で「これは駄目かもしれない」と言われたことを明かし、「私も菅(直人前)首相も言葉を失った」と】 ▶3・11後のサイエンス:3人寄ればテープ回せ=青野由利 本通信278号でも触れましたが、NRCは、核廃棄物最終処理問題がきっかけで、原発の認可手続きを停止しました。福島第一原発事故、とりわけ4号炉の危機的状況がそうさせたのです。原子炉のそばに使用済み核燃料が行き場なく置かれていることを全世界の人々が知ってしまったことに危機感を持っているようです。 そのアメリカではどのような議論が行われたかを記録として残す努力がされ、三人集まるとテープに録音することになっているといいます。一昨日明らかになったように、「あれは挨拶だ」だの、「内輪の話だったので記録を取っていなかった」だのという日本と比べると雲泥の差です。 そういうところに、「阿吽の呼吸の日本」文化と、たぶんか、多価値観の人間の集合体としての米国社会の差違が出てくるのでしょう。 【米国の原子力規制委員会(NRC)に7月、新委員長が就任した。女性地質学者、アリソン・マクファーレンさん(48)だ。核廃棄物の専門家でもあり、最近まで使用済み核燃料の管理・処分を見直す米政府の「ブルーリボン委員会」の委員を務めた】 【「規制委員会のような組織はコミュニケーションをよくしないと市民の信頼は得られない」。そう言って彼女が例に挙げたのはNRCの文書のわかりにくさだ。「略語だらけで難解。原発のそばに住むおばあさんが、理解しようと骨を折っているところが頭に浮かぶ」と述べ、組織の内外で透明性を高めることが大事と強調している】 【NRCでは委員が3人集まると誰かが録音テープを回すのがルールになっているという話だ。79年に起きたスリーマイル島原発事故の時に、すでに行われていたというから、30年越しのルールらしい。報道機関の求めに応じて内部の会議を公開できるのも、記録があってこそだ】 だからこそ、【NRCの情報公開の姿勢である。今年2月、福島第1原発事故直後に行われた内部の会議や電話のやり取りなどの録音記録をすべて公開した。資料は全部で3200ページ以上。日本からの情報不足にいらだつ様子や、支援の申し出を断られた様子に加え、4号機のプールの水の有無をめぐるNRC内の混乱などが、白日の下に】明らかになったのです。 ▶民主党:赤松元農相が政策提言を配布 代表選をにらみ 【9月の代表選をにらんだ政策提言を発表し、党所属議員に配布した。「原発ゼロ」を掲げるとともに、消費増税について「マニフェストに明記しておらず、党運営や国民との信義則という点で極めて大きな問題があった」と野田政権を批判。野田佳彦首相の対立候補の擁立を探る動きとみられる】 マヌーバー(策略)でないことを。 ▶浜岡原発:静岡県知事が賛意 再稼働是非の住民投票 【川勝知事は同日の定例記者会見で、「16万人の署名は大きい。住民投票の実現に向け努力したい」と条例制定に賛意を示した】 浜岡原発を抱える県の知事としては当然の選択でしょう。 ▶放射性セシウム:八戸市沖のマダラ 新基準値超え出荷停止 今度は八戸沖です。 ▶原子力:安全対策を相互評価 条約特別会合開幕 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶九電にシナリオ作成依頼=プルサーマル討論会で、佐賀県認める 【玄海原発3号機(佐賀県玄海町)へのプルサーマル発電導入に向けた2005年の県主催討論会での「やらせ」問題について、担当部署だった県原子力安全対策室の元副室長を招致した。県が九電に、討論会の進行シナリオ案の作成を依頼したとされる点に関し、元副室長は「日常的なやりとりの中で、依頼と受け取られることがあったと思う」と述べ事実上、認めた】 つまり、こんなこと「日常のやり取りでした」と認めたということです。 ▶全国民注目!原発ポチたちの「やらせマニュアル」をスクープ入手 【管内に島根原発と建設中の上関原発を抱える中国電力は、原発の必要性を分かりやすく解説した資料と、社員に対してパブリックコメントに意見を提出するよう、暗に求める文書を作成していたのだ】といいます。 まあ、彼らですから、「20~25シナリオ」だというのはわかります。そして、本稿の記者が「まだやっているのか原発ポチたち」と驚いているのが、 〈各所において日頃からお付き合のある社外のオピニオンリーダーのうち、電力に理解のある方々を対象に、(中略)選択肢の内容および当社の考えを説明してください〉 と、彼らが言う「オピニオンリーダー」である、大学教授や地元政治家らの原子力マフィアたちを再オルグして、意見を言うよう「工作」しろと指示を飛ばしていることです。 | ||