原発通信 288号2012/09/04発行
![]() 物事には、「自明」というものがあります。 またぞろ、原発を稼働した方が安いだなどという論が出てきています。本日、政府はエネルギー・環境会議を開き、「原発を代替する再生可能エネルギーの普及に約50兆円の投資が必要と試算。電気代を含む家庭の光熱費は22年比でほぼ倍増し、月額3万円を超す」などといいだしました。パブリックコメントをはじめ、多くの調査結果が原発ゼロを望んでいるという結果に驚いた政府や原子力マフィアが、何が何でも原発再稼働へ誘導しようとなりふり構わず出てきたということでしょう。 物事には、「自明」というものがあります。以前、「人はなぜ殺してはいけないのですか」などという、若者の「質問」に、よせばいいのに「大真面目で」答えを探そうとしていた識者と呼ばれる人々がいました。それと同じことなのです。これを自明のこととしてきたからこそ、私たちの社会=人間社会は秩序を保ってこられたのです。 同じことです。3.11を経験し、福島第一原発事故・爆発を見たものにとって原発は不要なものとはっきり認識したということです。そうではないと、いまだ思っている人たちは、原爆・核は戦争の抑止力になるだなどといっている核超大国や、イスラエル、インド、パキスタン、そしてイラン、北朝鮮の指導部と同じです。しかし、本質は同じものでありながら、何か原発はわれわれが生活を営んでいくうえで必要なエネルギー供給手段のように思えてしまう。原子力マフィアどもの宣伝・洗脳におかされていることを、今こそはっきりと認識すべきでしょう。原発を容認するのは、原爆も認めること、条件さえあれば使用可能ということと同義です。 だからこそ、広島・長崎を経験した私たちは、核廃絶に力を注いできたのではないでしょうか。原爆の使用について、是か非かなどという問いをすること自体、ヒロシマ・ナガサキを冒涜するものです。原発も、私たち人間にとって不要=害あるものと認識し、それは確信にもなったのです。 ▶電気代倍増、より厳しいCO2削減…エネルギー環境会議で「原発ゼロ」の課題を議論 【政府は4日、エネルギー・環境会議を開き、将来的に原発ゼロを目指す場合の課題を議論した。2030年にゼロにする場合、原発を代替する再生可能エネルギーの普及に約50兆円の投資が必要と試算。電気代を含む家庭の光熱費は22年比でほぼ倍増し、月額3万円を超すとした】 またまた、こうした「恫喝」が出てきました。冗談ではありません。本通信251号で述べたように、東京電力の全販売量に占める家庭用の電力量は40%ですが、なんとこれだけで東電の全利益の90%を賄っているのですから、家庭用に、ほとんど上乗せしているにきまっています。 50兆円の投資が必要だとか言っていますが、これとて信用などできるものではないでしょう。そもそも原発が事故を起こしたら50兆円などでは済まなくなり、その前に、私たちは住んでいるこの土地、国土がなくなってしまうかもしれないのです。命も、住むところさえなくなるかもしれないという問題が突きつけられているというのに、何を言っているんだ。 3.11を経験して私たちが学んだことは、原発にいいも、悪いもないということです。「原発が必要ですか、必要でないか」という問い自体がナンセンスだということです。 ▶<放射性廃棄物>栃木県分の最終処分、矢板の国有地が候補に 【「指定廃棄物」(1キロあたり8000ベクレル超)の最終処分場新設について、横光克彦副環境相は3日午前、同県矢板市塩田字大石久保の国有林野を候補地として福田富一知事に提示した。同省によると、候補地の提示は全国で初めてという。 遠藤忠市長は「寝耳に水だ。風評被害で苦しんでおり、市民感情としてとうてい受け入れられない」などと拒否する考えを伝えたという】 なんでも、事前に情報が漏れると「混乱を招く」だとかで、ぎりぎりまで秘密になっていたとか。どこの局の映像だったか失念しましたが、矢板市を訪ねた横光副大臣、わけがわからず怪訝な顔の遠藤市長に、なんだか「近くに来ましたから寄ってみました」風な感じで、「やや、どうもどうも」と始まったのですが、横光、さっさとソファーに腰かけてしまいます。いや、“普通は”、訪ねた先方のものが、「まあお座りください」と言われてから座るものではありませんか? ましてや、今回、嫌われるだろうなあと想像がつく事案を引っ提げての話です。横光のこの神経もどうかしています。 ところで横光克彦をご存知ではない方に、どういう人かというと。 大分育ちで、元俳優。テレビ朝日の刑事ドラマ『特捜最前線』の紅林刑事役で人気を得たそうな。その後、1993年、社会党より衆院選に立候補し当選。民主党結成ののち、民主党に鞍替え。Wikipediaによると、妻の従姉妹に自由民主党参議院議員佐藤ゆかりがいるそうな。節操があるようには見えない感じです。 ▶もんじゅ試運転経費見送り 来年度予算で文科省 【高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、所管する文部科学省が来年度予算の概算要求で、性能試験(試運転)に必要な経費を計上しない方針を固めたことが3日、分かった】 でも、何か企んでいるのでは…。 ▶大飯原発 必要だったのかなぁ、再稼働 火力発電止め、余裕調整 そんな本末転倒さえも… ▶原発ゼロ社会 電気代高騰は本当か 【省エネ対策を研究する独立行政法人、科学技術振興機構によると、例えば消費電力が多い家電を一九九五年製と〇五年製で比較すると、消費電力はエアコンで43%減、冷蔵庫は実に72%減だった。 こうした省エネ性能の向上や節電の広がり、さらに次世代自動車や省エネ住宅などの普及予測から、年間の総電力消費量は現行の一・一兆キロワット時から〇・八兆キロワット時に約27%下がるとみている(政府予測は一兆キロワット時)。 発電単価が高くなっても家庭の電力消費が大きく減るので、電気代は今より半減も可能と主張する。家電などの買い替えを前提としているが、省エネ技術を無視したり、逆に消費電力の大きい粗鋼生産量をかさ上げするような政府試算よりはよほど信頼できよう。 大阪府市エネルギー戦略会議に提出された自然エネルギー財団の試算も、家庭で約三割節電すれば、電気代は一〇年と変わらないとの結果だった。 こうした試算以外にも、電力会社の地域独占など非効率を改めれば電気代は下げられる】 ▶津波予測:高浜と敦賀原発敷地に浸水の恐れ 福井県発表 【福井県は3日、日本海側で津波が発生した場合のシミュレーション結果を発表した。予測される最大の津波の高さは、高浜町の関西電力高浜原発(敷地の高さ3.5メートル)で3.74メートル、敦賀市の日本原子力発電敦賀原発(同3メートル)で3.48メートルとなり、両原発の敷地に浸水する恐れのあることが判明した。同県は「建屋への浸水はなく、原発への影響はない」と説明】 【高浜、敦賀の両原発敷地内に浸水する可能性について、関電は「ストレステストの結果で、高浜原発は10.8メートルまで燃料損傷を起こさず耐えられる。安全上の問題はない」。原電は「建屋など主要な設備への浸水はなく、影響はない」としている】 津波予測のデータがいかに変更されようと、答えはいつも「ノープロブレム」。これが原子力マフィアの答えです。それ以外にないのです。水につかっても「潜水艦のようにつくってある」などという中部電力もありますから。 ▶最大で8メートル超の津波=高浜、敦賀原発浸水の恐れ―福井県が予測値公表 【関電と原電は「浸水域に安全上重要な設備はなく、浸水防止対策も行っているので影響はない」としている。】 東電も、「万全の対策を施してある」と言っていたのに、福島第一がああなりました。 何も学んでいないし、わかっていないという証拠に、東電の原子力関係のサイト「学ぶ・知る・楽しむ」は閉鎖中です。 *関西電力 暇なとき一度覗いてみてください。悪い冗談が書かれています。 http://www1.kepco.co.jp/pr/elgaia/about/index.html ▶核燃料プール 数年で満杯 6割が運転不可に 【全国の原発五十基のうち約六割の三十三基が、数年間稼働させれば使用済み核燃料プールが満杯になり、動かせなくなることが、各電力会社への取材で分かった】 置いておくところがなくなってしまうので、放っておいたって、近々運転できなくなるのだと以前からいわれています。 ▶福島第1原発:し尿処理足かせ、住民帰還に難題 【住民帰還を前提とした国の避難区域再編に危機感を募らせている。地震と津波で損壊した組合のし尿や下水処理施設は再建の見通しが立たず、肩代わりしているいわき市が来年度以降はできないと通告してきたためだ。組合は「トイレを使えなければ人は戻れない」と悲鳴を上げている。 放射性物質汚染対処特措法の運用で、原発20キロ圏内のし尿処理は再編前までは国の責任範囲という。だが、圏内の処理施設が使えなくなる事態は想定外で「帰還を進める上で致命的」(県一般廃棄物課)といえ、再編作業に反発が広がる恐れがある】 【組合によると、し尿処理施設は富岡町の海岸線に1カ所あり、地震と津波で損傷。周辺は放射線量が高く、再建計画が立てられない状況だ】 【郡内のし尿はこの1年間にほぼ倍増。現在月約250キロリットルに達し、いわき市が9割以上を処理している】 ▶福島第1原発事故 甲状腺等検査の公費負担、2市1村のみ実施へ 母親から不満の声/茨城 【東京電力福島第1原子力発電所事故で放射性物質による健康被害を懸念する小さい子どもを持つ母親らの要望を受け、東海村は1歳から中学3年生までの子どもを対象に甲状腺検査の費用を全額補助する方針を固めた】 【村は11月から13年3月までの5カ月分の検査費など計約500万円を盛り込んだ補正予算案を9月3日開会の定例会に提案する。費用は東電に賠償請求する方針】 【県保健予防課は「科学的に実施の必要性はなく、県としては検査の必要はないと考えている」と話す】 県担当者が言うその「科学的に」ということ自体が揺らいでいるのが、3.11後の原発・原子力問題だということです。 ▶ストロンチウムによる被曝解明をめざし、歯科医師が子どもの乳歯提供を呼びかけ 【子どもの乳歯提供を呼びかけているのは、千葉県松戸市で歯科医院を営む藤野健正・きょうどう歯科新八柱所長(医療法人社団きょうどう理事長=写真)。福島第一原発の事故後、福島県内で歯科医療支援活動にかかわってきた藤野氏は、カルシウムと似た性質を持つストロンチウムが骨や歯などに蓄積しやすい性質に着目。 「内部被曝の実態を明らかにするうえで重要な証拠になる」との考えから、子どもの歯が生え替わる際の「脱落乳歯」の保存および提供を呼びかけ始めた】 【この取り組みは、岡山理科大学の豊田新教授(応用物理学)もバックアップ】 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶<福島第1原発>注水量低下は不純物が原因か 「不純物が混じった冷却水が原因」とすると、先日の浜岡原発5号機で見つかった錆はどうなんでしょう。浜岡原発の錆は「不純物」ではない? 「大丈夫、問題ない」と言っていたのでは。東京電力と中部電力の違い? “会社の違い”で原発の根幹=発電するなどというより、一度核燃料を核分裂させてしまったら、その熱を取り続けなければならないという宿命=にかかわるものに違いが出るんでしょうかね? これもみんなデタラメということの例のひとつです。 【福島第1原発1~3号機への注水量が一時的に保安規定の必要量を下回った問題で、東電は3日、注水ポンプに送り込む前のタンク内の水から不純物が採取されたと発表した。東電は不純物がポンプの流量調整弁を詰まらせたとみて、弁の隙間(すきま)を広げたほか、今後、タンク内を清掃する。各号機の原子炉圧力容器の温度に変化はない】 | ||