原発通信 340号2012/11/19発行
![]() 山下俊一、わびたなんてとんでもない。「…したい」といっているだけです。 東大東洋文化研究所教授の安富歩さんの「東大話法」について何度か本通信で紹介していますが、まさにその典型がでました。毎日新聞によって暴露された福島県健康調査検討委員会「秘密会」を糺されての、山下俊一の発言です。(下記) こうした、ある意味人を食ったような「話法」、さまざまな面で見かけます。先日、原発・放射線障害について話が出た際に耳にした話です。マスコミ批判なのです。その人は、マスコミが流す情報を鵜呑みにするなというのです。これまで、原子力ムラ・原子力マフィアからの広告代金に目がくらみ、そのちょうちん持ちをしてきたのですから当然です。しかし、3.11前後や現在の報道のどこがおかしいのかということを明言せず、マスコミ一般を批判しても何にもならないのです。何がおかしかったのかをいわなければいけないのです。いや、マスコミという存在自身が問題なのだというのなら話は別ですが。 知識人の横暴 そんななか、一部原発推進派は、一部マスコミが危機を煽っているなどといっています。ガレキ焼却問題や放射線汚染作物・食品等々に関しての報道の問題など様々なことが言われています。そのなかにあって、マスコミ報道の何が問題なのかを問うことが大切なのではないかと思います。そのことの検証・吟味をせず、マスコミはケシカランと一般的にいっても意味がないなあと、その話を聞きながら思ったのです。 しかも、ベクレルとシーベルとの意味を知ってから原子力を語れなどと、その方は言うというのです。その話を聞いて、昔、日本医師会の会長を務めていた武見太郎が、医師会批判をしようものなら「無学の輩が何をいうか」と、医師以外のものが口を出すなと圧力をかけたことを思い出さないわけにはいきませんでした。まさに東大話法規則2、11、17を駆使していろいろ言う人だなあと、聞きながら思いました。 東大話法に関心のある方は、本通信177号にまとめておきました。ご参照ください。 3.11後、福島第一原発事故を目の当たりにし、今なお16万人の避難者を生み出し、これからの時代を担う子どもたちに対しての責任や、未来への不安を感じ取った人々が多くおり、原発はもういらないと声を挙げ始めたのです。その声を挙げた人々、その方々はベクレルやシーベルトなんて知らないかもしれません。だから、「知らないのなら言うな」ということは一部、アカデミックなところにいる連中や、一部知識人の横暴といわずしてなんといえばいいのでしょうか。そうした専門家、知識人という連中が、平たく言えば、自分の利益=カネ+名誉(要は、見栄)のためにウソを言い続け、人々をダシにし、だましてきたということが白日の下になったのです。地に堕ちたのです。そのことへの危機感が、こうした言動に現われていると感じます。そもそもベクレルとシーベルトの意味を知ったからといって何がわかるというのでしょうか。世界観が変わるのでしょうか。 目方で測れるのなら苦労はしない そんな計量単位がどうのこうのというより、原子力というものは人間が制御できるものではないということを知ったことだけでも十分ではないかと思います。少なくとも“一般の人々”にとっては。自分たちの生活・未来がかかる切実な問題として目の前に提起されたのです。原発は命の問題だと、本通信でも訴えているところはそこなのです。 渥美清が映画『男はつらいよ』なかで、目方で男が売れるなら苦労はないと歌っています。 http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND41772/index.html “目方(ベクレルやシーベルト)”で原発問題が解決できるなら苦労はありません。 事の本質、何が問題で、何が問われているのかを見誤ってはいけません。 ▶<福島県>健康調査検討委 秘密会問題で山下座長が謝罪 山下俊一・県立医大副学長、「委員の方々には大変ご迷惑をおかけした。心からおわびしたい」 わぁ!出ました「東大話法」です。東大話法規則20『「もし○○○であるとしたら、おわびします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける』 揚げ足取りではありませんが、この話法規則20よりもっとたちが悪いです。「おわびします」とは言っていません。「おわびしたい」です。しかも、自分の責任に関しては、人任せ。人のせいです。 【県民健康管理調査の検討委員会が18日、福島市内で開かれた。秘密裏に事前の準備会(秘密会)を開いて意見調整するなどしていた問題が発覚して以降初めての会議で、座長の山下俊一・県立医大副学長は「委員の方々には大変ご迷惑をおかけした。心からおわびしたい」と陳謝。「きちんと議論を公開して行いたい」と】 【自身の責任を問われると「私の人事は県にお任せしている」と】 ▶甲状腺がん疑い 即時要2次検査は16~18歳の女子 【検査を担当している福島県立医大によると、女子は甲状腺に結節が発見され現在、2次検査を受けている。福島市で18日あった委員会後の記者会見で、医大の鈴木真一教授は「原発事故による被ばく線量は低く因果関係は考えにくい」と話した】 それをどうして証明できるのということになってしまったのです。専門と称するみなさん…。 ▶電力株 「解散後」高騰、自民政権に期待感 強欲どもと、そのおこぼれにあずかろうとしている人々。何をさておいても金。さもしい連中です。 【再稼働に前向きな自民党が政権を奪還するとの見方から、市場で業績改善への期待感が広がった。15、16日の2日間に北海道電力と東北電力の株価上昇率は15%を超えた】 ▶柏崎市長選、現職が3選 原発再稼働に慎重姿勢 【全7基の合計出力が世界最大の東京電力柏崎刈羽原発がある新潟県の柏崎市と刈羽村の首長選が18日、投開票された。柏崎では、全基停止中の同原発の再稼働に慎重な会田洋市長(65)が、原発推進派に推された新顔の西川(さいかわ)孝純・元共同通信社論説委員長(64)を破って3選を決めた。福島第一原発事故を身近に感じつつ、原発頼みの地域経済も気がかり。原発城下町の有権者はジレンマを抱えて一票を投じた】 ジレンマといえば、ジレンマ。現状維持かというところでしょう。そうすれば、とりあえず考えないで済みますから。 ▶柏崎市、刈羽村は現職当選 ともに原発再稼働容認 【ただ原発に関しては西川氏もほぼ同じ考えを示しており、市長選の主要な争点にはならなかった】 「主要な争点にならなかった」というところをどう総括するのかが問題です。 ▶「社員の不安が募るから税金を投入して欲しい」と主張する東京電力のブラックぶり 【広瀬社長は費用の規模が見通せず、いつまで返済を続けるか不透明な状況では「会社がどうなるかわからず社員の不安が募る」と指摘し、「国は法律を(予定通りに)しっかり見直してほしい」と強調。「負担割合などを国と議論する場があれば参加したい」と述べた。 日経新聞11月8日付朝刊1面(タイトルは「東電、新たな支援要請 経営方針発表 賠償・除染で負担増 」)だそうです。 | ||